新米神様、世界を創る

黒蓬

文字の大きさ
6 / 51

6.夢見る者たち

しおりを挟む
セイルはリーネと星の精霊ルミナスと共に、次の課題に向き合っていた。夜空に輝く星々は素晴らしいが、それだけでは生き物たちにとってはただの背景に過ぎない。セイルは、星がもたらす何か特別な意味をもっと強調したいと考えていた。

「星をただ見るだけじゃなくて、夢や希望を感じられる生き物がいれば、もっと夜が面白くなると思うんだ。」

リーネは腕を組んでセイルを見つめた。

「いいと思うわよ。ただ、その生き物がどうやって夢を感じるか、ちゃんと考えなさい。それが世界の運命にも影響するのだから。」

「うーん……夢ってのは、何だろうな?」

セイルはしばらく考え込んだ。人間だった頃の自分の記憶を手繰り寄せる。夜空を見上げながら、自分の未来を想像したあの感覚。セイルはその時の心の高揚を思い出し、球に手を当てた。

「じゃあ、夢を司る生き物を作ってみよう。名前は“ドリームウィーバー”だ!」

セイルがイメージを膨らませると、球の中で新たな生物が形を取っていった。それは半透明の体を持ち、星の光を吸収して輝く不思議な生物だった。翼のようなヒレを持ち、夜空を泳ぐように漂う姿は、まるで幻想そのものだった。

「これが、ドリームウィーバー。夜空に漂いながら、生き物たちに夢を届ける役目を持ってるんだ。」

リーネはその姿を興味深げに見つめた。

「いい発想ね。でも、どうやって夢を届けるの?」

「それは、このドリームウィーバーが集めた星の光が鍵だよ。星の光を織り込んで、生き物たちに直接触れることで、彼らの心に夢を映し出すんだ。」

「なるほど。夢を通じて希望やインスピレーションを与えるのね。それは、この世界の発展にも大きな影響を与えそうだわ。」

ドリームウィーバーたちが生まれ、夜空を漂い始めると、地上の生き物たちは少しずつ変化を見せ始めた。夜、眠りについた生き物たちはそれぞれの心の中に映し出された夢を見るようになった。

ある動物は広大な草原を駆け抜ける夢を見て、新たな冒険を始める勇気を得た。ある鳥は果てしない空を自由に飛ぶ夢を見て、高い山々を越える旅に出た。

「夢って、ただの幻じゃなくて、生き物たちが明日を生きるための原動力になるんだな。」

セイルは球の中で起こる変化を見守りながら、満足そうに頷いた。しかし、その時、リーネが真剣な表情で口を開いた。

「セイル、夢には希望だけでなく、恐れや不安も含まれるわ。それをどう扱うかが次の課題よ。」

「え?夢って良いことばかりじゃダメなのか?」

「現実もそうでしょう?恐れを知ることで勇気を学ぶこともあるわ。ただ、バランスを間違えると、生き物たちは夢に飲み込まれてしまうかもしれない。」

その言葉に、セイルは再び悩み始めた。

セイルは解決策を考えるため、ルミナスと再び話し合った。星々を巡る精霊として、ルミナスは夢と現実のつながりを理解していた。

「セイル、夢は夜の世界の大切な一部だけど、昼とのバランスも考えるべきです。生き物たちが夢を見た後、その夢をどう現実に活かすか。それを導く役割が必要かもしれません。」

「なるほど……それなら、夢の調律者を作ってみるか!」

セイルは再び球に手を当て、ドリームウィーバーたちの中に一つの特別な存在を生み出した。その調律者は、生き物たちが見る夢を見守り、時には優しく導く役目を担う存在だった。

「この調律者がいれば、夢が暴走することはないはずだ。そして、生き物たちは夢を見た後に前に進める。」

夜空に調律者が加わり、星々の巡りはさらに滑らかになった。地上の生き物たちは、夢から新たな力を得て、それぞれの生を充実させていく。

「これで、夜の世界にも意味ができたな。」

リーネは微笑みながら頷いた。

「ええ、あなたの世界はまた一歩、完成に近づいたわね。」

セイルはその言葉に安堵しながら、次の課題に思いを巡らせた。

「次は……昼と夜の境界にある“黄昏”を作ってみるか。それが、世界のさらなる広がりに繋がる気がするんだ。」

こうして、新米神様セイルはまた新たな創造の旅へと一歩を踏み出した。夢見る者たちが夜空の下で輝くように、彼の創造もまた希望と挑戦に満ちていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝
ファンタジー
毒舌を売りにして芸能界で活躍できる様になった。 元々はアイドルとしてデビューしたが、ヒラヒラの衣装や可愛い仕草も得意じゃ無かった。 バラエティーの仕事を貰って、毒舌でキャラを作ったらこれがハマり役で世間からのウケも良くとんとん拍子で有名人になれた。 だが、自宅に帰ると玄関に見知らぬ男性が立っていて私に近づくと静かにナイフで私を刺した。 アイドル時代のファンかも知れない。 突然の事で、怖くて動けない私は何度も刺されて意識を失った。 主人公の時田香澄は殺されてしまう。 気がつくとダンジョンの最下層にポイズンキラーとい魔物に転生する。 自分の現象を知りショックを受けるが、その部屋の主であるリトラの助言により地上を目指す。 ダンジョンの中で進化を繰り返して強くなり、人間の冒険者達が襲われている所に出くわす。 魔物でありながら、擬態を使って人間としても生きる姿や魔王種への進化を試みたり、数え切れないほどの激動の魔物人生が始まる。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

『三度目の滅びを阻止せよ ―サラリーマン係長の異世界再建記―』

KAORUwithAI
ファンタジー
45歳、胃薬が手放せない大手総合商社営業部係長・佐藤悠真。 ある日、横断歩道で子供を助け、トラックに轢かれて死んでしまう。 目を覚ますと、目の前に現れたのは“おじさんっぽい神”。 「この世界を何とかしてほしい」と頼まれるが、悠真は「ただのサラリーマンに何ができる」と拒否。 しかし神は、「ならこの世界は三度目の滅びで終わりだな」と冷徹に突き放す。 結局、悠真は渋々承諾。 与えられたのは“現実知識”と“ワールドサーチ”――地球の知識すら検索できる探索魔法。 さらに肉体は20歳に若返り、滅びかけの異世界に送り込まれた。 衛生観念もなく、食糧も乏しく、二度の滅びで人々は絶望の淵にある。 だが、係長として培った経験と知識を武器に、悠真は人々をまとめ、再び世界を立て直そうと奮闘する。 ――これは、“三度目の滅び”を阻止するために挑む、ひとりの中年係長の異世界再建記である。

スキル素潜り ~はずれスキルで成りあがる

葉月ゆな
ファンタジー
伯爵家の次男坊ダニエル・エインズワース。この世界では女神様より他人より優れたスキルが1人につき1つ与えられるが、ダニエルが与えられたスキルは「素潜り」。貴族としては、はずれスキルである。家族もバラバラ、仲の悪い長男は伯爵家の恥だと騒ぎたてることに嫌気をさし、伯爵家が保有する無人島へ行くことにした。はずれスキルで活躍していくダニエルの話を聞きつけた、はずれもしくは意味不明なスキルを持つ面々が集まり無人島の開拓生活がはじまる。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
【毎週火木土更新】 自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。 その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ! 約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。 ――― 当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。 なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

処理中です...