新米神様、世界を創る

黒蓬

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34.争いの道、共存の道

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特殊な地域や幻想種などの誕生によって、セイルの世界は一層豊かさを増し、そこに生きる生物たちも緩やかに進化の道を歩んでいた。
ある日、水晶球を覗いていたセイルは、平穏に見えた世界の中で起きている新たな変化を発見した。彼の視線の先では、二つの異なる種族が対立していた。

一方は「アースハウンド」という大地を駆ける四足の獣たち。彼らは群れを作り、森を縄張りとし、豊富な果実や獣を狩りながら暮らしている。もう一方は「スカイフレイム」と呼ばれる翼を持つ小型の鳥類で、彼らは森の樹上や空間を利用して暮らしていた。

争いの原因は単純なものだった。アースハウンドが自分達の縄張りを広げようとした際に、その森に住んでいたスカイフレイムたちの巣を破壊してしまったのだ。これに怒ったスカイフレイムたちはアースハウンドの食料を襲撃し、双方の間で激しい衝突が繰り広げられるようになった。

「リーネ、この争い、放っておいていいと思うか?」

セイルは水晶球を見つめながら、眉を寄せた。
問われたリーネは隣で腕を組みながら冷静に答える。

「争いが起こるのは、ある意味で自然なことよ。それぞれが生きるためにぶつかるのは避けられないもの。けれど、以前設置した調和の灯火があるでしょう?世界に影響を与えるような問題になることはないと思うわ。」

「あぁ、そうだったな。でも……」

「気になるのなら見守ってあげれば良いわ。その争いがこの地域にどんな変化を及ぼすか。それを見極めて必要なら対処するのもあなたの役目だもの。」

セイルは深く息を吐いた。自分の創った世界に生きている彼らに争って欲しくはない。しかし、互いの生活や利益が脅かされるとなれば争いが起きるのは必然ということも理解はしていた。争いの状況を見守るべきか、それとも介入すべきか、彼にはまだ判断がつかなかった。

そんな中、フィエナがセイルに提案を持ちかけてきた。

「セイル様、試しに彼らに“きっかけ”を与えてみるのはどうでしょうか?」

「きっかけ?」

「えぇ。争いを解決するための手段を彼ら自身で見つけられるよう、少しだけ手助けをするのです。」

「具体的には、どうするんだ?」

フィエナは微笑みながら、地図を広げた。

「例えば、この森の近くには特殊な水源があって、そこには生えている植物も特別な性質を持っています。具体的に言えば、アースハウンドの食料にもなり、スカイフレイムが巣を作る材料にも適しているんです。」

「つまり、そこに彼らを導けば、争いを止めるきっかけになるかもしれないってことか。」

「恐らくは、ですが。ただし、単に導くだけではなく、その植物がどれだけ貴重で大切かを彼ら自身が理解する必要があると思います。」

フィエナの提案を聞いたセイルは少し考えた後、頷いた。

「やってみる価値はありそうだ。」

セイルはエアレットに協力して貰い、植物の香りに魔力を乗せた導きの風をアースハウンドとスカイフレイムそれぞれの種族に送った。彼らはその導きに従い、ほぼ同じタイミングで水源にたどり着いた。しかし、最初の出会いは予想通りスムーズではなかった。

アースハウンドのリーダーは低く唸り、スカイフレイムの頭領も警戒を強めた。どちらも自分たちの縄張りを主張し、協力するという発想には至らなかった。

「やっぱり、これだけじゃだめかぁ……」

予想はしていたが、上手くいかない状況にセイルは肩を落とした。

しかしリーネは静かな微笑みを浮かべて、セイルに様子を見るように促した。

「焦らないで、セイル。彼らが気づくまでには時間が必要よ。」

セイルはリーネの言葉に励まされ、再び水晶球に目を向けた。

数日後、ある出来事がきっかけで状況が変わり始めた。水源近くに生息していた巨大な捕食者が、スカイフレイムの一羽を襲ったのだ。そこに偶々居合わせたアースハウンドの一頭が、とっさの判断でその捕食者を追い払った。

仲間を助けられたスカイフレイムたちはぎこちないながらもアースハウンドへの感謝を示し始めた。そこからアースハウンドたちもまた、和解の道を探るうちにスカイフレイムが樹上から警戒することで、自分たちが安心して水を飲めることに気づいた。水源の地を共有して守り、利用するうちに徐々に、両者の間に信頼が芽生えていった。

そうして、水源周辺はアースハウンドとスカイフレイムが共同で管理する区域となり、争いは終わりを迎えた。セイルはその様子を見守りながら、胸に熱い感情が込み上げてくるのを感じた。

「きっかけは捕食者から助けたことだろうけど、彼らは共存を選ぶことができた。これで良かったんだよな?」

リーネはセイルの問いに頷きつつも、諭すように一言付け加えた。

「そうね。彼らは自分たちで未来を選んだわ。けれど、種の存続、繁栄のためには争いもまた選択肢の一つよ。」

「分かってるよ。いつもこんなに都合良くはいかないだろうしな。それでも、今回は無事に解決してよかった。」

「セイル様はお優しいのですね。」

フィエナはそう言って柔らかい笑みを浮かべた。
セイルは照れ臭そうに笑ってそれを否定した。

「そんなんじゃない。単に俺の我が儘みたいなものだよ。」

争いの道を越え、共存の道を歩み始めた彼らの姿は、セイルの創造主としての思いを新たにするものだった。水晶球の中の世界は、今日もゆっくりと成長を続けていた。
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