異常者だと自覚のある私のお見合い顛末

黒木メイ

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第三話

 こうして念願叶ったお見合い当日。
 私は浮かれていた。今日、ようやく本物に会えるのだ。カルーゾ伯爵家の姉妹に。病弱な妹の看病に明け暮れる毎日で浮いた話の一つもない長女。そして、生まれつき体が弱く将来子どもを産むことはできないと医者から告げられている、ある意味貴族令嬢としてはすでに価値なしと見られている次女。

 私の本命は長女、ではなく次女だ。
 次女のうわさを聞いた時、『なんて可哀相な女性なのだ』と思った。同時に、そんな彼女を私が面倒みてやりたいと思った。真綿に包むように優しく、甘々に溶かして私なしでは生きられないようにしてやりたい、と。

 一応、うわさが偽の場合も考え、こっそり調査した。その結果わかったのは、本当に彼女が病弱だということ。長女の献身的な介護のおかげで、屋敷の敷地内なら移動できるようになったこと。少々我儘な性格に育ったこと。
 我儘、大いに結構。そんなところも可愛いじゃないか。それに、彼女の理想は本に出てくるような王子様らしい。己の見た目に感謝した。

「初めまして、ダヴィデ・ファルコです」

 イラリア嬢の見合い相手、というていできたが……最初からミルカを見つめる。そうすれば、ミルカは嬉しそうに私を見つめ返してきた。作戦成功。うまくいったようだとほくそ笑む。

「わが家の庭園は素晴らしいのですよ。案内しますから、ぜひご覧ください」
「はい! あっ」
 頬を上気させたミルカがふらついた。さっと支える。
「大丈夫ですか?」
「申し訳ありません。体が弱いせいで……せっかくお庭を案内してくださるのに」
「可哀想に。もし、よろしければ私が抱き上げて庭を案内しても?」
「! ええ、ええ。よろしくお願いいたします」

 おとぎ話に出てくる王子のようにミルカを抱き上げれば、それはもう心底嬉しそうにミルカは目を輝かせた。先程から表情がくるくる変わって面白い。他人がなにを考えているのか読み取るのが苦手な私でもわかる程だ。

 ――ああ。やはり、ミルカしかいない。

 この前殺した男の三分の一くらいの重さしかないミルカ。気をつけないと傷つけてしまいそうだ。この日のために、力加減の練習をしてきた。その成果が今日こうして出ている。

「私またダヴィデ様に、会いたい」
「ミルカ嬢……私も同じ気持ちです」
「本当ですか? 嬉しい。私、次はピクニックに行ってみたいです。今まで行ったことがなくて。お姉様がダメだと」

 寂しそうに視線を逸らすミルカ。正直に言うと、イラリア嬢の判断は正しいと思う。ミルカの体力ではまともにピクニックなど行けないだろう。私のように常に抱きかかえて移動する騎士と、それとは別に数人の護衛。そして、万が一を考えて医者も連れて行かなければならない。普段ミルカの言うことをきく両親が、その時ばかりはイラリア嬢の肩を持ったのもそのため。でも、ミルカの中では『姉の意地悪』ということになっているらしい。場合によっては、イラリア嬢を共通の敵にしてミルカと距離を縮めるのもアリか。

「それは可哀相に。わかりました。次はピクニックに行きましょう。ご両親は私が説得します。そうだ。せっかくだから狩りも一緒にしましょうか」
「え? 狩りですか? でも……」
「狩りは私の趣味の一つなんです。ミルカ嬢にいいところをみせたかったのですが……ミルカ嬢がどうしても嫌だというなら仕方ないですね」

 想像どおりの反応に上がりそうになる口角をなんとか下げながら、悲しそうな表情を作って見つめる。すると、ミルカの顔が真っ赤に染まり、彼女の心が揺れたのがわかった。

「ちょっとだけなら」
「ええ、もちろんです。ミルカ嬢に無理はさせません。実際に狩るのは私とエミリオだけですから、ミルカ嬢はイラリア嬢と二人でピクニックを楽しんでいてください。期待していてくださいね。ミルカ嬢のために立派な獲物を狩ってきますから」
「は、はい!」

 嬉しそうなミルカを見て、今度こそ私の頬も緩む。ミルカに夢中な私は、イラリア嬢が私たちのことをじっと見つめていることには気づかなかった。

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