ある勇士の話

火吹き石

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 次の日も、ヒツルギは遅くに目覚めました。すでに起きている人が十数はいました。みなは勇者に食事を与えると、近くの小川につれていき、体を洗ってやりました。あまりに汚れていて、ひどい匂いを放っていたからです。

 そして身ぎれいにすると、一同は勇者に自分たちの一物を見せました。どれも半ば芯を持ちはじめていました。勇者は、体の奥が熱く疼くのを感じました。しばしその感覚に抗いましたが、けっきょくは股を広げました。もう、情欲に抵抗することができなくなっていました。

 一同は朝の内に、勇者を回しました。夜よりも人が少なかったので、急ぐ必要もなく、余裕を持って楽しみました。ゆっくりと尻を犯しながら、逞しい筋肉を揉みしだき、弄びました。ひとりで楽しむ者もいれば、ふたりや三人で遊ぶ者もいました。

 横になった勇者を抱くだけでなく、体位もいくつか変えました。勇者を立たせ、木の幹に手をつかせ、後ろから突きまくりました。あるいは、自分は横になって、勇者に陰茎の上に腰掛けさせ、自ら腰を振らせたりもしました。ふたりでいっぺんに穴を犯す者もいましたし、口で奉仕させる者もいました。

 そうやって昼前まで遊ぶと、勇者に休息を与えました。そして昼過ぎになると、やはり魔物が現れました。勇者は剣を手にしますが、もはや戦いの真似事ですらありませんでした。戦いがはじまる前から勇者は腰の一物を勃起させていましたし、尻穴から精液を滴らせていました。戦いがはじまれば、早々に剣を奪われ、ただただ蹴り飛ばされ、なぶられるだけでした。ほどなくして勇者は屈服し、また荒々しい交尾がはじまるのでした。

 そして、宵闇が降りる頃まで勇者を抱いて魔物が去ると、今度は人々が勇者を味わっていくのでした。

 それから数日の間、ヒツルギはこのような日々を続けました。朝は人に犯され、昼に魔物になぶられて犯され、夜にもまた人に犯されました。勇者は、口ではなお、魔物を倒すのだと意気込んでいました。ですが、それはもはや淫行に耽るための口実としか、人々には思われませんでした。

 勇者が淫らに弄ばれているという噂は、町々に広がりました。名高い勇者、しかも、禁欲の誓いを立てていた若者を味わいたいと思う者は、大勢いました。来る日も来る日も、新しい顔が勇者の前に現れました。そして勇者を抱くと、その話を土産に持って帰り、また別の者を勇者の下へと導くのでした。そうやってやってくる中には、勇者の同僚である戦士たちも多く含まれていました。

 はじめに魔物によって抱かれたときから、多くの日が流れました。ヒツルギは人々と魔物の慰み者でした。しかし、どれだけ抱かれ、どれだけ甘い声で喘ごうとも、最後の最後まで、いずれ魔物を倒すのだと意気込んでいました。ですがその意気も、ひと月が経つ頃には、なくなってしまいました。

 最後に魔物によって打ち負かされ、なぶられ、犯された後で、ヒツルギは魔物に向け、そしてまた、居並ぶ人々に向けて、敗北を認めました。

「おれは、この魔物に負けました。力で負けただけではなく、たくさん抱かれて、めちゃくちゃにされて、感じまくってしまいました。腕にもちんぽにも敵いません。」

 そのように言ってから、ヒツルギは魔物の足にすがりました。

「おれを連れて行ってください。おれはあんたに仕えます。何だってします。あんたに抱かれたくて、しかたがないんです。」

 そう懇願する勇者を、魔物はすげなく蹴り飛ばしました。

「おれは慰み者など必要としない。もう戦うつもりがないなら、これで終わりだ。また別の町に行くとしよう。」

 そう言って、狼の頭の魔物は、どこかへと去っていきました。

 残されたヒツルギは、茫然としました。あの乱暴な殴打と、それよりいっそう乱暴な交尾とが、なくなってしまったのです。そして、自分がそれらに喪失を感じているということにも、若者を打ちひしがれました。それほどに淫らな喜びを体に教え込まれ、すでに戦意すらもなくなってしまったのでした。

 魔物に見捨てられ、悄然しょうぜんとして倒れたままの勇者に、人々は笑いかけました。

「あいつがいなくても、おれたちが可愛がってやる。なあ、勇者よ。お前の欲しいものは、ここにたくさんあるんだ。」

 人々は勃起した性器を、勇者に見せつけました。勇者は恥ずかしく、悔しく思いながらも、それを欲して股を広げることが止められませんでした。

 さて、その夜、勇者はまた人々に回されました。何度も何度も尻を犯され、口を犯され、精液を注ぎ込まれました。そして夜が深まる頃に、ようやく情事が終わり、くったりと眠りにつきました。

 しかし、いつもならそのまま森の空き地に残されるところを、勇者は町へと連れて行かれました。すでに魔物も去ったので、わざわざ森に残しておく必要もなかったからです。人々は勇者を、ある宿屋の一室に運び込むと、寝かせておきました。

 それからというもの、町の人々は、勇者を手軽な遊び相手と定めました。少し仕事の手が空くと、宿屋に行き、手早く性欲を満たすのでした。勇者は、ときおり体を洗うためを除けば、ずっと寝台の上にいました。朝から晩まで、人々は勇者を訪問し、手荒に抱くのでした。

 さて、数日にわたって、ヒツルギは人々の慰み者になりました。しかし、その日々も、やがて終わりました。ひとつには、また戦士としての名を上げようと、胸に決めたからです。もうひとつには、町の人々の相手に飽きてしまったからです。勇者は、魔物との暴力的な情事の快感を体に刻み込まれていました。人々は、どれだけ手荒に扱おうと、物足りなかったのです。

 ヒツルギは、やがて戦士としての力量を示すまで旅を続け、見知った土地には戻らないと、新たな誓いを立てました。また、けっして自ら人に体をゆだねたりはしないと、禁欲の誓いを改めました。

 そして、これまでに貯めてきた給金を使って、新しい剣と旅の道具を買い集め、ひとり旅に出ました。

 しかし、この旅から勇者が帰ったという話は、いままで伝わってはいません。
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