【完結】突然の変わり身「俺に惚れるな」と、言っていたのは誰ですか⁉ ~脱走令嬢は、素性を隠した俺様令息に捕獲される~

瑞貴◆後悔してる/手違いの妻2巻発売!

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第3章 入れ替わりのふたり

3-14 騒がしいふたりのディナー

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 ルイーズ姿の彼の買い物に、散々付き合わされたエドワード姿のルイーズ。
 すっかりクタクタにもかかかわらず、ふたりで笑い顔を見せながら、スペンサー侯爵家御用達のレストランに入店していた。

 個室で向かい合って話している2人。
 料理が書かれたメニュー表を渡されたが、チンプンカンプンのルイーズエドワードの体は、目玉の飛び出しそうな料金しか見ていない。汗がたらりと、こめかみ辺りを流れている。

「お前、勝手に注文するなよ。俺が決める」
「令嬢とのデートは、エドワードが選んであげているの? なんだかモテる人って大変なのね」
「はぁぁーっ、違うって。どうせお前、分からないだろう」
「ふふっ、なんだ、バレていたか」
 そう言って、ルイーズエドワードの顔は、ぺろりと舌を出して笑う。

「そうだ、お前のことを仮病だと言って悪かったな。弟が、お前を心配していたぞ」
「そうなの? アランは、いい子でしょう」
「あの家で、唯一まともなやつだな。どうやったら、ああなるんだ?」
「なんでだろうね。ミラベルお姉様が、自分よりチヤホヤとされていた、幼いアランが、嫌いだったお陰かしら」
 それを聞いて、エドワードルイーズの顔はハッとした。
 ルイーズが言った、姉、と言う言葉を聞き、エドワードは気になっていたことを思い出している。
「――お前、もし俺と体が戻ったら、元婚約者には気を付けろよ。姉が何かたくらんでいるぞ」

 それを聞いたルイーズエドワードの体は、うつむいて暗い顔をしていた。

(うまくいけば、エドワードに知られることなく、元に戻れると思ったのにな……。
 何だろう、この気持ち、……わたしの存在がすごく恥ずかしい。
 今日だけで、我が家とスペンサー侯爵家では、住む世界が全く違うと思い知らされたのに……、姉とモーガンのことまで聞いてしまったのか。
 もしかして、わたしの他の話も聞いたのかしら……)

 唇をかんだルイーズは、気を取り直して、何とか作った笑顔を見せる。
 
「あはは、大丈夫よ。もう色々と慣れているもの」
「何かあれば俺に言え。助けてやるから」

「まあ珍しい、エドワードでも、そんなことを言えるのね。ふふっ。ねえ、そういえばエドワードもチョコレートが好きだったの?」
「いや別に。前にお前が食べたがっていただろう」
「うわー覚えていてくれたの! 実は、チョコレートって初めて食べるのよね。しかも、ケーキに乗っているなんて贅沢ぜいたく過ぎるわね」
 ルイーズエドワードの体は、大喜びで大きく1口パクッ!
 口に頬張ったときは満面の笑み。
 けれど、見る見る真顔に戻り、それをゴクッ飲み込んだ後の表情はさえない。

「あれ、思ったよりも……」
「くくっ。俺、甘いものもが嫌いだから残念だったな。今食べても体が受け付けないだろう」
 彼は、自分のケーキを食べ終わり、ルイーズエドワードの体が食べるのを躊躇ためらっているケーキをひょいっと奪う。悪い顔をするエドワードは、舌を出して笑っている。

「えー、ひどいわー」
「食べるのはお前の体だから、いいだろう。仕立屋の女店主が、胸がないからもっと太れだってさ。このままだと、ドレスが合わないって言っていたな」
「はぁぁーっ、なんて会話をしているのよ。どうせエドワードから言い出したんでしょう」
「くくっ、そういうことにしたいなら、そうしておいてやるよ。お前はお茶でも飲んで待っていろ。だけど、お前のために、こうして俺の分のケーキも食べているんだから、感謝しろよ」

「はぁぁーっ、エドワードがわたしの分まで、おいしく食べているだけでしょう。あれっ、この紅茶おいしいわね」

 口の中に残る甘さが気になって仕方ないルイーズエドワードの体は、ひたすら紅茶を飲んでいる。

 ルイーズは、その紅茶が、以前のお茶会でパトリシアがルイーズに勧めてくれたものと同じだと気付き、エドワードルイーズの体がお茶を飲む姿を凝視している。
 ルイーズにじーっと見られているとも気付かずに、エドワードルイーズの体は至って平然にアールグレイの紅茶を口に含んでいる。
 それを見て、ルイーズエドワードの顔は不思議そうな顔をする。

「ねえ、エドワードは、その紅茶を飲んでも気持ち悪くないの?」
「ん? 別に。嫌いだったのか?」
「う~ん、どうなんだろう。茶葉を買うときの試飲はおいしかったんだけど、その後にパトリシア様のお茶会で勧められたときは、喉を通らなくて」
「お前でも、貴族の間で流行はやっている茶葉を買うこともあるんだな。……誰かに贈ったのか?」
「それが、せっかく買ったのに、落として全部ぶちまけちゃったのよね」
「お前って……、本当にあほだな。奮発したのに、落としたのがトラウマだったんだろう、どうせ」
「ふふっ、なんだ。そうだったのね」

 ルイーズは気取らずに過ごせるエドワードとの時間が、心地よくてたまらない。笑っているのはエドワードの顔で、笑い声もエドワードだけど。

 優雅に会話をして、はたからはデート中のカップルにしか見えない2人。
 その2人は、屋敷の中で発狂している姉の存在を知らなかった。

 2人が食事をしている間に、エドワードが、その日のうちに届けて欲しいと言って買った品々が、スペンサー侯爵家からルイーズ宛てに大量に届いていた。

 それは、ルイーズの空っぽなクローゼットの中を、びっしりと埋め尽くすほどの量だった。中には、高価な宝石の付いた装飾品もある。

 困っていることを言えずにいたルイーズに、何かをしてあげたかったエドワード。
 恋人や婚約者でもないルイーズへ贈り物をするのは、気がとがめる。けれど、今の彼にとっては、自分のためでもある。
 だから、ルイーズに遠慮されることもなく受け取ってもらえると思っていた。
 その後に彼女から何か言われても、「自分のお金を自分のために、惜しげもなく使っただけ」だと、言い訳ができるのだから。

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