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挿話
挿話③
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屋敷へ戻る馬車の中で、ルイーズは、エドワードにたずねていた。
今、自分たちの部屋の中に、息子のライアンとルイーズの弟のアランがいる。
どうして、従者だけに任せず、子どものアランに頼んだのか疑問だったのだ。
「ねえ、どうしてアランを呼んだの?」
「あー、どう考えても、あの舞踏会に参加しない者で一番信用のなる人物が、アランしか思いつかなかったからな。何があっても姉の子を守ってくれるだろう」
「でも、まだ子どもなのよ……。心配だわ」
部屋に着くと、ライアンを寝せたゆりかごを横に置き、勉強しているアランが待っていた。
「アラン、ライアンを見てくれて、ありがとう。偉い偉い」
ルイーズは、無駄足を運ばせた弟の苦労を労い頭をなでた。
至って落ち着ている弟は、真顔でルイーズの礼を受け入れる。
ルイーズは、何事もなく過ぎたとばかり思い、安心してライアンの顔をのぞき込んでいる。
……するとアランが淡々と話し始めた。
「初めは、どうして僕が呼ばれたのか分からなかったけど、流石、エドワード様の子ですね……」
まさかと、青ざめるルイーズは、アランにゆっくりと首を向けた。
「アラン……、もっ、もしかして」
「剣術の練習で出来ていた傷が治ったので、すぐに分かりました。この部屋に子どもしかいないと思って、従者がひっきりなしにライアンの顔を見にきていたけど、誰にも触れさせていないので安心してください。ルイーズ夫人の弟は随分とわがままだと思ったでしょうけど、子どもの言うことですからね」
「こっ、このことだけど……」
「ああ、大丈夫です、ライアンのことは父にも誰にも言いませんから」
そう言って、ぺこりと礼をして弟のアランは帰っていった。
エドワードと顔を見合わせたルイーズは、泣きそうな顔で自分の顔を指さす。
「わたしアランに負けていない? ずっと一緒にいた母親のわたしが、2か月近くライアンのことに気付かなかったのに、会ってすぐに分かったですって……」
頬をピクピクと動かすエドワードは、屋敷の従者に不信感しかない。
その上、目の前には、顔にあほと書いている騙されやすいルイーズだ。
「以前アランが来たときは、ライアンに会わせなかったのか?」
「ライアンは寝ていたし、アランはわたしに会いに来たって言っていたから」
「どうして、あほのルイーズの弟が、あんなにしっかりしているんだろうな……。ルイーズも、アランを見習うべきだな」
「はぁぁーっ、わたしより、もっと可笑しい家族もいるわよ。だけど、エドワードだって、ライアンのことに気が付かなかったんだから、お互い様でしょう」
「はぁぁーっ、俺は傷もなければ、リンゴも触われないから仕方ないだろう。気付かなくて当然だ」
「ねぇ、わたしたち、こんなにムキになって、11歳のアランより子どもみたいだわ……」
「……そうだな。俺、ルイーズが描いてくれた、くまの刺繍のガウンが1番気に入っているからな」
「ふふっ、わたしも、うれしそうにしそうにアレを着ているエドワードを見るのが大好きよ。……だから、自分の体に戻れて、本当に良かった」
「……俺も、ルイーズの顔を見られる自分の体に戻って良かった。……ライアンも寝ているし……」
適当に立ち去ってきた舞踏会のツケは、どんな風に巡って来るのか?
そんなことは気にしないルイーズとエドワード。
王宮の大広間で貴族たちから責め立てられて、青くなって冷や汗をかく陛下とは裏腹なふたりは、互いの体を温め合い、頬を紅潮させている……。
ルイーズに届けられたミトンが、役に立つ日も、意外なほどに近いかも知れない。
🧤FIN
*******
最後までお読みいただきありがとうございました。
投稿中も何度か読み直し、所々修正をしております。
Rを付けなかったことに後悔と、どこかでRを付けて投稿しようか悩み中。
挿話を投稿する前に、始めから確認をしたため、自分の思っていた投稿時間より遅くなってしまいました。ペースが崩れて申し訳ありません。
是非、最初から最後までとおして読んでいただきたい作品です。
いつか、読み直していただけると幸いです。
長すぎる序章。本当は1章はなかったのですが、深みを持たせたくて結局書いてしまいました。
華のない序章から期待して読み進めて頂いた読者様には感謝しかありません。
ルイーズがいつまでもエドワードに出会わないって、……どうかしている。
あらすじに「全てのはじまりはここから」的なことを書いた自分に笑ってしまいました。
1年間で書き上げた全5作品。恋愛小説大賞に応募しております。
皆様の温かい応援を頂けると、大変うれしいところです。
感想もよければ気軽に送ってください。
読者の皆様へ、心からの感謝の気持ちを込めて、完結。
今、自分たちの部屋の中に、息子のライアンとルイーズの弟のアランがいる。
どうして、従者だけに任せず、子どものアランに頼んだのか疑問だったのだ。
「ねえ、どうしてアランを呼んだの?」
「あー、どう考えても、あの舞踏会に参加しない者で一番信用のなる人物が、アランしか思いつかなかったからな。何があっても姉の子を守ってくれるだろう」
「でも、まだ子どもなのよ……。心配だわ」
部屋に着くと、ライアンを寝せたゆりかごを横に置き、勉強しているアランが待っていた。
「アラン、ライアンを見てくれて、ありがとう。偉い偉い」
ルイーズは、無駄足を運ばせた弟の苦労を労い頭をなでた。
至って落ち着ている弟は、真顔でルイーズの礼を受け入れる。
ルイーズは、何事もなく過ぎたとばかり思い、安心してライアンの顔をのぞき込んでいる。
……するとアランが淡々と話し始めた。
「初めは、どうして僕が呼ばれたのか分からなかったけど、流石、エドワード様の子ですね……」
まさかと、青ざめるルイーズは、アランにゆっくりと首を向けた。
「アラン……、もっ、もしかして」
「剣術の練習で出来ていた傷が治ったので、すぐに分かりました。この部屋に子どもしかいないと思って、従者がひっきりなしにライアンの顔を見にきていたけど、誰にも触れさせていないので安心してください。ルイーズ夫人の弟は随分とわがままだと思ったでしょうけど、子どもの言うことですからね」
「こっ、このことだけど……」
「ああ、大丈夫です、ライアンのことは父にも誰にも言いませんから」
そう言って、ぺこりと礼をして弟のアランは帰っていった。
エドワードと顔を見合わせたルイーズは、泣きそうな顔で自分の顔を指さす。
「わたしアランに負けていない? ずっと一緒にいた母親のわたしが、2か月近くライアンのことに気付かなかったのに、会ってすぐに分かったですって……」
頬をピクピクと動かすエドワードは、屋敷の従者に不信感しかない。
その上、目の前には、顔にあほと書いている騙されやすいルイーズだ。
「以前アランが来たときは、ライアンに会わせなかったのか?」
「ライアンは寝ていたし、アランはわたしに会いに来たって言っていたから」
「どうして、あほのルイーズの弟が、あんなにしっかりしているんだろうな……。ルイーズも、アランを見習うべきだな」
「はぁぁーっ、わたしより、もっと可笑しい家族もいるわよ。だけど、エドワードだって、ライアンのことに気が付かなかったんだから、お互い様でしょう」
「はぁぁーっ、俺は傷もなければ、リンゴも触われないから仕方ないだろう。気付かなくて当然だ」
「ねぇ、わたしたち、こんなにムキになって、11歳のアランより子どもみたいだわ……」
「……そうだな。俺、ルイーズが描いてくれた、くまの刺繍のガウンが1番気に入っているからな」
「ふふっ、わたしも、うれしそうにしそうにアレを着ているエドワードを見るのが大好きよ。……だから、自分の体に戻れて、本当に良かった」
「……俺も、ルイーズの顔を見られる自分の体に戻って良かった。……ライアンも寝ているし……」
適当に立ち去ってきた舞踏会のツケは、どんな風に巡って来るのか?
そんなことは気にしないルイーズとエドワード。
王宮の大広間で貴族たちから責め立てられて、青くなって冷や汗をかく陛下とは裏腹なふたりは、互いの体を温め合い、頬を紅潮させている……。
ルイーズに届けられたミトンが、役に立つ日も、意外なほどに近いかも知れない。
🧤FIN
*******
最後までお読みいただきありがとうございました。
投稿中も何度か読み直し、所々修正をしております。
Rを付けなかったことに後悔と、どこかでRを付けて投稿しようか悩み中。
挿話を投稿する前に、始めから確認をしたため、自分の思っていた投稿時間より遅くなってしまいました。ペースが崩れて申し訳ありません。
是非、最初から最後までとおして読んでいただきたい作品です。
いつか、読み直していただけると幸いです。
長すぎる序章。本当は1章はなかったのですが、深みを持たせたくて結局書いてしまいました。
華のない序章から期待して読み進めて頂いた読者様には感謝しかありません。
ルイーズがいつまでもエドワードに出会わないって、……どうかしている。
あらすじに「全てのはじまりはここから」的なことを書いた自分に笑ってしまいました。
1年間で書き上げた全5作品。恋愛小説大賞に応募しております。
皆様の温かい応援を頂けると、大変うれしいところです。
感想もよければ気軽に送ってください。
読者の皆様へ、心からの感謝の気持ちを込めて、完結。
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瑞貴
さばこ様
ご感想ありがとうございます。
作品を読み込んでいただきうれしい限りです。
エドワード、発言が子どもっぽいかもですね。
いい男になるように。ですね。
ヒロインへの、応援受け取りました。ありがとうございます。
最後まで引き続き応援宜しくお願いします。
瑞貴
おもしろくて、一気に読ませていただきました。たくさんの更新ありがとうございます。
エドワードのキャラがいいです。かっこいいです。
ケンカばかりの二人の距離が少しずつ縮まって…、これからどうなるのか。楽しみにしています。😊
uio様
「おもしろくて、一気読み!」とても嬉しい感想をありがとうございます。
今、結構大きな文字数になっている作品。
それを一気に読んでいただけたのが、胸にジーンと響き感動しています。
エドワードのキャラを気に入っていただけて、良かったです。
この先も投稿は続きますので、引き続き応援よろしくお願いします。
瑞貴