異世界・魔法薬の魔女

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魔女の仕事、挑戦してみました。

生活魔法って難しい

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 まだ引き篭もり生活が続くことが決まったので、私は大人しく鍋をひたすら洗っていた。
鍋の汚れは魔法薬のせいで、なかなか取れない。
 ゴシゴシと力一杯洗っていると、呆れたようにトムがフヨフヨとやってきた。
「そろそろ、生活魔法の練習をした方が良いのではないでしょうか?」
 トムに言われて、私は今まさに洗っている鍋を見つめた。
「生活魔法ねぇ」
 思わず溜息をついた私に、さらにトムは呆れたようだ。
 この世界の魔法は、まぁ、多種多様で、色々な魔法があるそうです。
 魔力の高い魔法使いにしか使えない高位魔法。
 魔法使いや、魔女とか名乗れるくらい魔力が強い人に使える召喚魔法。
 どんなに魔力が低くても、誰でも使える生活魔法。
 魔法は個人のイマジネーションなので、どう使うかによって効果は様々なので細かな分類をしてくと、膨大な数になるらしい。
  その中の誰でも使える生活魔法は、本当に日常に密着した魔法で、物を浮かせたり、綺麗にしたり、濡れたものを乾かしたりと、つまり掃除や洗濯などの家事全般をオートマチックで出来る優れた魔法だ。
 ラノベでもよくある魔法で、主人公達が一番最初に覚えたりして感動するやつ。まさにそれだ。
 私だって、それくらい知ってるし、そんな便利な物があるなら是非とも利用したい。
 けど、初日の晩に、物は試しと思い、魔法薬を作る時に汚れたハンカチに、クリーン的な魔法をかけてみた。
 この世界には呪文はない。だからと言って、意気揚々とクリーン!とか叫びたくないので、綺麗になって、と小声で言ってみる。
 そしたら、何故かハンカチが弾け飛んだ。
「ま、マスター?」
 トムがドン引きした声で私に呼びかけてくるけど、私だってドン引きだ。
 弾けて散り散りになったハンカチは何故かビショビショだけど、確かに綺麗になっていた。
 次に、夕食で使ったばかりの、汚れてしまった皿にも同じように魔法をかけてみる。
 物の見事に粉々になった。破片は汚れ一つなく、新品のように輝いてる。
 次に・・・・・・。
「いや、もうやめて下さいマスター!」
 濡れたコップにも魔法をかけようとしたところで、トムからストップかかった。
 散り散りになったハンカチも、粉々になった皿も確かに綺麗にはなっていた。
「これ、酷くない?」
 あまりの惨状に、ちょっと泣きそうだ。
 だって、トム曰く、生活魔法は誰でも使える簡単な魔法って聞いていたんだから。
「これじゃあ、生活魔法っていうより、破壊魔法じゃん!」
 物を浮かすのは上手くいったのに、幾ら何でもこれは。
「いったい、何をイメージしたらこんなことになるのか理解致しかねます」
 トムが元ハンカチや元皿を一つに纏めて掃除してくれいる。魔法の塊であるトムは、生活魔法くらいは本の姿でも難無く熟すらしい。
「魔法はイメージでしょ?汚れが吹き飛ぶイメージして何が悪いのよ」
「それですよ!」
 割とガチで怒られて、正直落ち込んだ。
 ただ、綺麗になるイメージと言われても、日本国民の私には汚れは水洗いとか水圧とか風圧とかで吹き飛ぶ物だし、意識しなくてもついイメージしてしまうのだから仕方ない。
 お馴染みというか何というか、綺麗にする魔法は人間の身体にも使える。
 日々の汚れを魔法一つで落とせるなら便利だけど、身体が吹っ飛びそうなので今のところ試していない。
 トムに怒られて以来、私は生活魔法は使ってない。
 別に魔法がなくても、掃除も、洗濯も、洗い物だって出来る。だから私自身はそんなに困ってないのだけど、効率厨のトムが見ててヤキモキするみたいだ。
 まぁ、魔法が便利なのは分かるけどね。
 あと、いい加減に苦手でも練習しろってことなんだと思う。
 改めて、目の前の鍋をみる。
 洗えば落ちる汚れを、魔法で一瞬で消す。
 吹き飛ぶイメージじゃなく、消すイメージ。
 消す、か。
「綺麗に」
 そう言った瞬間、鍋は跡形もなく消えた。
 汚れと共に、跡形もなく。
 トムが、後ろで震えている。
 私は何故だか、どうだと言わんばかりにドヤ顔をした。
「ほらね」
  トムに怒られるまで、あと三秒。
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