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魔女の仕事、挑戦してみました。
信じてるって柄じゃないの
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日本人が、魔法を使っている。
私はそれだけで、今まで私自身が魔法を使えることを信じてなかったのが分かった。
いや、信じてなかったとうより、イメージ出来なかったというのが正しいかもしれない。
魔法は、慣れ親しんだ二次元のもので、あくまで幻想だった。
そして、その幻想が現実になり、私の周りはいっきにファンタジーになった。
けど、私はそれでも自分自身に起きたことは理解できても、本や映画の中の主人公たちと同じように、魔法を使えるなんてイメージできなかった。
魔法はあくまで他人事。私事で考えられなかった。
でも、目の前の日本人は、紛れもなく魔法を使っている。同じ、日本人が。
それがトムだと分かっていても、いっきに懐かしく感じる黒髪に、私は自分にも目の前で微笑む彼と同じように魔力を感じることが出来るじゃないかと思った。
そう思った瞬間、そうイメージした瞬間、私は身体から今まで感じたことのない流れが巡っているのを感知した。
血の流れのように、けれどそれよりも、うんとゆっくり。
感じる流れは、強風の中で立っている時と同じくらい耳元で、ゴウゴウと煩い。
あぁ、倒れた時と同じだ。
あの煩いくらいの音は、魔力の流れる音だったんだと気づく。
「注いで」
言われたままに、魔石の瓶に魔力を注ぎ込む。
トムは黙って見たまま。
私も、黙って魔石の瓶に集中する。
風の音は鳴り止まないまま、その大きなうねりを小さな瓶に溢れないように、慎重に注いだ。
少しずつ溜まる魔力そのものは、綺麗なピンク色で、何だか桜の花びらのように見えてくる。
瓶が半分ほど満たされたところで、私は少しだけ眩暈を感じた。同時に、耳元の風の音が小さくなった気がする。
「何かが無くなってるのが、分かりますか?」
「音が・・・・・・」
「音?
あぁ、マスターは音の魔女でしたね」
トムは一人で納得してるみたいだけど、身体の力が抜けてくような感じはしない。
どちらかというと、魔力の流れは分かった今、爆発しそうなくらい込み上げてくる気がした。
「半分まで満たされたので、もう良いでしょう。マスター、止めて下さい」
瓶の様子を見ていたトムが言った。
これも言われた通りに魔力を注ぐのを止めようとしたけれど、大きなうねりが私の身体中を駆け巡ったまま、止まらない。
あ、ヤバイかもしれない。
それは、もはや本能的とも言っていい感覚だった。
意識しなくても、魔力の雫が小瓶に注がれる。
半分ほどだった瓶の中身が、今では蓋ができないほど溢れている。
「マスター!!!」
止まらない魔力の流れに、身体がガタガタと震える。耳元で鳴っていな風の音は殆ど聞こえなくなっていた。
けれど、その代わりに私の手元の瓶に音が集中して、私の袖が大きくはためいている。
私の魔力の塊が、小さな瓶に集中している。まるで、全て吸い込まれそうな感覚に、これこそが魔力を消費しているということなんだろう。
けど、あまりにも大きなこれをコントロールするなんて、ちょっと難しすぎるんじゃない!?
「トムぅぅううう!ちょっと、無理ぃいい!」
「無理じゃないです!こればっかりは、マスターが信じないと!!」
半泣きになりながら、トムに助けを求めたけど、トムにもどうにも出来ないらしい。信じるって言ったって、どうしろと!?
全身の震えは止まらない。
魔力の大きなうねりは瓶から私の腕に、私の腕から足にかけて力強く蛇のように纏わり付いてる。自分自身の力に、絞め殺されそうだ。
「こんなの初心者には無理だって!!」
「そうよ。だから、ワタシを身につけてねって言ったのに」
私が叫んだ瞬間、凛とした女の子の声が聞こえた。
この部屋にはトムと私しかいない。
あまりにも似つかわしくない声に、顔を上げると微かに薔薇の香りがする。
そして、その瞬間、私はイバラの蔓に全身を拘束されていた。
「ワタシが助けてあげる」
・・・・・・助けてくれるって言ってるのに、助けて貰える予感がしないってのも、新しい展開かもしれない。
私はそれだけで、今まで私自身が魔法を使えることを信じてなかったのが分かった。
いや、信じてなかったとうより、イメージ出来なかったというのが正しいかもしれない。
魔法は、慣れ親しんだ二次元のもので、あくまで幻想だった。
そして、その幻想が現実になり、私の周りはいっきにファンタジーになった。
けど、私はそれでも自分自身に起きたことは理解できても、本や映画の中の主人公たちと同じように、魔法を使えるなんてイメージできなかった。
魔法はあくまで他人事。私事で考えられなかった。
でも、目の前の日本人は、紛れもなく魔法を使っている。同じ、日本人が。
それがトムだと分かっていても、いっきに懐かしく感じる黒髪に、私は自分にも目の前で微笑む彼と同じように魔力を感じることが出来るじゃないかと思った。
そう思った瞬間、そうイメージした瞬間、私は身体から今まで感じたことのない流れが巡っているのを感知した。
血の流れのように、けれどそれよりも、うんとゆっくり。
感じる流れは、強風の中で立っている時と同じくらい耳元で、ゴウゴウと煩い。
あぁ、倒れた時と同じだ。
あの煩いくらいの音は、魔力の流れる音だったんだと気づく。
「注いで」
言われたままに、魔石の瓶に魔力を注ぎ込む。
トムは黙って見たまま。
私も、黙って魔石の瓶に集中する。
風の音は鳴り止まないまま、その大きなうねりを小さな瓶に溢れないように、慎重に注いだ。
少しずつ溜まる魔力そのものは、綺麗なピンク色で、何だか桜の花びらのように見えてくる。
瓶が半分ほど満たされたところで、私は少しだけ眩暈を感じた。同時に、耳元の風の音が小さくなった気がする。
「何かが無くなってるのが、分かりますか?」
「音が・・・・・・」
「音?
あぁ、マスターは音の魔女でしたね」
トムは一人で納得してるみたいだけど、身体の力が抜けてくような感じはしない。
どちらかというと、魔力の流れは分かった今、爆発しそうなくらい込み上げてくる気がした。
「半分まで満たされたので、もう良いでしょう。マスター、止めて下さい」
瓶の様子を見ていたトムが言った。
これも言われた通りに魔力を注ぐのを止めようとしたけれど、大きなうねりが私の身体中を駆け巡ったまま、止まらない。
あ、ヤバイかもしれない。
それは、もはや本能的とも言っていい感覚だった。
意識しなくても、魔力の雫が小瓶に注がれる。
半分ほどだった瓶の中身が、今では蓋ができないほど溢れている。
「マスター!!!」
止まらない魔力の流れに、身体がガタガタと震える。耳元で鳴っていな風の音は殆ど聞こえなくなっていた。
けれど、その代わりに私の手元の瓶に音が集中して、私の袖が大きくはためいている。
私の魔力の塊が、小さな瓶に集中している。まるで、全て吸い込まれそうな感覚に、これこそが魔力を消費しているということなんだろう。
けど、あまりにも大きなこれをコントロールするなんて、ちょっと難しすぎるんじゃない!?
「トムぅぅううう!ちょっと、無理ぃいい!」
「無理じゃないです!こればっかりは、マスターが信じないと!!」
半泣きになりながら、トムに助けを求めたけど、トムにもどうにも出来ないらしい。信じるって言ったって、どうしろと!?
全身の震えは止まらない。
魔力の大きなうねりは瓶から私の腕に、私の腕から足にかけて力強く蛇のように纏わり付いてる。自分自身の力に、絞め殺されそうだ。
「こんなの初心者には無理だって!!」
「そうよ。だから、ワタシを身につけてねって言ったのに」
私が叫んだ瞬間、凛とした女の子の声が聞こえた。
この部屋にはトムと私しかいない。
あまりにも似つかわしくない声に、顔を上げると微かに薔薇の香りがする。
そして、その瞬間、私はイバラの蔓に全身を拘束されていた。
「ワタシが助けてあげる」
・・・・・・助けてくれるって言ってるのに、助けて貰える予感がしないってのも、新しい展開かもしれない。
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