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序章 チンピラ、聖女になる
1.チンピラ、美少女になる
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棚谷竜二はチンピラである。
ごくつぶし、社会のダニ、ギャングスター、ならずもの――どう呼んでも構わない。
昼は安アパートに転がり、夜は盛り場をうろついてカモを探す。
自分では何も生み出さず、他人から金を巻き上げて暮らす。社会の最底辺にいるクズである。
もちろん、世のため人のためなどという思いはない。何もかも自分中心、自分が良ければそれで良し。
暴力で物事を解決し、腕力で言葉を捻じ伏せる。
拳一つで世界をわたってきた。
――そんな男が、何の因果か異世界に転生した。
大陸最大の宗教組織、アジール聖教会の頂点、聖女リュイーゼとして。
彼が生まれ変わるその瞬間から、この物語は始まる。
●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●
「じゃあな、竜二。お前、そんなに悪い奴じゃなかったよ。頭は悪かったけど」
「あんたに言われたくねぇぞ、兄貴! カチコミにあったとき、慌てて拳銃とバナナ間違えて握ったくせに!」
「てめぇ、その話はおれとお前の内緒だって言っただろう、クソが!」
「おい、兄貴! あんたいったい――ごふっ!?」
兄貴分だった――味方だったはずの男が、俺をドラム缶ごと蹴転がした。
ぐりんと一回転した視界に、アスファルトの地面と真っ暗な夜空が映る。
それから、空よりも黒い海面が迫ってきた。
激しい水音が鼓膜を殴る。鼻の奥まで水が入り込んで、ごぽごぽと泡が勢いよく立ち上る。
首まで固められた俺には、もがくことすらできない。身動きの取れないまま沈んでいく。
苦しい、おい、この――苦しいだろうが!
なんだこれ。小学校の遠足でおにぎり一気に食い過ぎて喉を詰まらせたとき以来の苦しさだぞ。あがきたいのに、指一本動きゃしない。
どうせ社会の底辺に生まれ、底辺で死んでいく人生だ。こんな命、惜しむ相手もない。
だが、だからといって、こんな死に方をしたいなんて言った覚えはねえぞ!
視界が暗いのは、海底に近付いているからか?
まさか、あれか――これから走馬灯ってやつが始まるのか!?
やばいやばい、それは困る。まだ俺は、と固められた両手で爪を立てようとした。
まだ俺は――死にたくない!
叫びの形に開いた口から大きな泡がぼこりと溢れ、海上へと浮かんでいく。
その歪な形が、瞳に映った最後の光景だった。
●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●
――だったはず、なんだが。
俺はぐるりと辺りを見回した。
薄暗い森の中、いびつな木々に囲まれて、いつの間にか座り込んでいた。
風で木の葉が揺れて、木漏れ日が落ちてくる。
ちっちっとあちこちで鳥が囀っている。
暖かい風、花の香。平和だ――さっきまで、海底に沈んでいたとは思えないくらいに。
周囲に人の気配はない。
あの状態から何をどうしたのかは思い出せないが、どうやら俺は一命をとりとめたらしい。
胸をなでおろそうと手のひらを当てた瞬間、なんとも言えない違和感があった。
顔を下に向けると、今までなかった脂肪の塊――柔らかな双丘が胸板にくっついている。
肌を覆う洋服も、着ていたはずの古びたジーンズから、白いドレスのようなワンピースのような柔らかな布に変わっていた。
「なんだ、これ?」
服ごと胸を持ち上げると、ぐにゃりと柔らかいながらも確かな弾力があった。
気を失っている間にいたずらでもされたのか?
悩んではみたが、どうも本物らしい感触だ。
両手にあまる肉の余韻をしばらく楽しんでから、俺は、より重要な問題があることに気が付いた。
「……これって、身体全部変わってるってことか?」
つまり、このワンピースの下の身体は……?
少年時代の初体験の時より性急に、俺は慌てて服を脱ぎ捨てた。
●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●
小一時間ほど身体を探ったのち、裸のまま、俺はようやく自覚した。
――自分がなぜか、金髪碧眼なやばいくらいの美少女になってしまっているということを。
ごくつぶし、社会のダニ、ギャングスター、ならずもの――どう呼んでも構わない。
昼は安アパートに転がり、夜は盛り場をうろついてカモを探す。
自分では何も生み出さず、他人から金を巻き上げて暮らす。社会の最底辺にいるクズである。
もちろん、世のため人のためなどという思いはない。何もかも自分中心、自分が良ければそれで良し。
暴力で物事を解決し、腕力で言葉を捻じ伏せる。
拳一つで世界をわたってきた。
――そんな男が、何の因果か異世界に転生した。
大陸最大の宗教組織、アジール聖教会の頂点、聖女リュイーゼとして。
彼が生まれ変わるその瞬間から、この物語は始まる。
●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●
「じゃあな、竜二。お前、そんなに悪い奴じゃなかったよ。頭は悪かったけど」
「あんたに言われたくねぇぞ、兄貴! カチコミにあったとき、慌てて拳銃とバナナ間違えて握ったくせに!」
「てめぇ、その話はおれとお前の内緒だって言っただろう、クソが!」
「おい、兄貴! あんたいったい――ごふっ!?」
兄貴分だった――味方だったはずの男が、俺をドラム缶ごと蹴転がした。
ぐりんと一回転した視界に、アスファルトの地面と真っ暗な夜空が映る。
それから、空よりも黒い海面が迫ってきた。
激しい水音が鼓膜を殴る。鼻の奥まで水が入り込んで、ごぽごぽと泡が勢いよく立ち上る。
首まで固められた俺には、もがくことすらできない。身動きの取れないまま沈んでいく。
苦しい、おい、この――苦しいだろうが!
なんだこれ。小学校の遠足でおにぎり一気に食い過ぎて喉を詰まらせたとき以来の苦しさだぞ。あがきたいのに、指一本動きゃしない。
どうせ社会の底辺に生まれ、底辺で死んでいく人生だ。こんな命、惜しむ相手もない。
だが、だからといって、こんな死に方をしたいなんて言った覚えはねえぞ!
視界が暗いのは、海底に近付いているからか?
まさか、あれか――これから走馬灯ってやつが始まるのか!?
やばいやばい、それは困る。まだ俺は、と固められた両手で爪を立てようとした。
まだ俺は――死にたくない!
叫びの形に開いた口から大きな泡がぼこりと溢れ、海上へと浮かんでいく。
その歪な形が、瞳に映った最後の光景だった。
●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●
――だったはず、なんだが。
俺はぐるりと辺りを見回した。
薄暗い森の中、いびつな木々に囲まれて、いつの間にか座り込んでいた。
風で木の葉が揺れて、木漏れ日が落ちてくる。
ちっちっとあちこちで鳥が囀っている。
暖かい風、花の香。平和だ――さっきまで、海底に沈んでいたとは思えないくらいに。
周囲に人の気配はない。
あの状態から何をどうしたのかは思い出せないが、どうやら俺は一命をとりとめたらしい。
胸をなでおろそうと手のひらを当てた瞬間、なんとも言えない違和感があった。
顔を下に向けると、今までなかった脂肪の塊――柔らかな双丘が胸板にくっついている。
肌を覆う洋服も、着ていたはずの古びたジーンズから、白いドレスのようなワンピースのような柔らかな布に変わっていた。
「なんだ、これ?」
服ごと胸を持ち上げると、ぐにゃりと柔らかいながらも確かな弾力があった。
気を失っている間にいたずらでもされたのか?
悩んではみたが、どうも本物らしい感触だ。
両手にあまる肉の余韻をしばらく楽しんでから、俺は、より重要な問題があることに気が付いた。
「……これって、身体全部変わってるってことか?」
つまり、このワンピースの下の身体は……?
少年時代の初体験の時より性急に、俺は慌てて服を脱ぎ捨てた。
●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●
小一時間ほど身体を探ったのち、裸のまま、俺はようやく自覚した。
――自分がなぜか、金髪碧眼なやばいくらいの美少女になってしまっているということを。
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