転生幼女はミリしら世界を前世の妹とリスナーを頼りに乗り切ります

ゆきどけ

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第一章 王国

クルミは美味しいのです

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 私の祖父が治める公爵領の領都ラクストは、人口10万人程の辺境としては立派と言える規模の都市で帝国との貿易拠点にもなっているので、交易の為に行き交う人も多く人口の割には栄えていると言っていいだろう。

 祖父が封じられてからは、領内で村などが勝手気儘に関を作り自由に取られていた税も統一され、それにより反対が予想された村などにも魔物対策の兵や塀を築く等の対策をしつつ、交易の旅籠に使えるよう整備する等の対策をすることで領内の支持を広げて来たそうだ。

 そんな訳で祖父の前には没落していた元辺境領はかつてない程の繁栄を遂げ、歴史的な建造物がないことから貴族街の荘厳さ等には見劣りしてしまうが、この世界の中でも近代的な建物が多い為に王都と比較しても街並みはモダンで整然としており例えていうならば、高層ビルのないオフィス街と言った感じだ。



 「やすいよーやすいよー」


 「可愛いリス族の嬢ちゃん達、こっちの肉は細かくしたクルミをまぶしているから食べてみな」


 「くるみ!くるみ!」



 モダンで整然としているオフィス街もどきの一階は、大通りに面して部分をいくつも区切ってスペースにしている建物もありそこに入っている屋台から客寄せの声が響いている。

 雰囲気が…とも思ってしまうが、これは屋台街と呼ばれる大通りでも街門付近のみであり、その中にもオープンカフェ等もあり雑多と言うよりは、活気があるって感じだね。

 特性のクルミパウダーをかけて焼いてくれたお肉に夢中なレーアちゃんを尻目に、私はこの素晴らしい街並みを観察中である。



 「アン、可愛いお顔の周りにタレが付いておるぞ」


 「むむ…じーじありがとう!」


 「おいちいね!」



 お肉は前世の牛や豚に比べて野性味あふれるワイルドな噛み心地だけど、味は噛めば噛むほどに肉の旨味が溢れ香りもクルミがローストされていてリス族の本能に訴える魔性の串焼きとなっています。

 屋台のオジサンは氏族に合わせて焼いてくれているみたいで、じーじにおねだりして私達用とガルルンさん達ようにもいっぱい焼いてもらったよ。

 

 焼いたものは【次元保管庫】に入れていれば、状態を保存してくれているみたいで焼き立て状態を維持してくれてロックをしておけば【次元転送陣】を起動しても間違えて神音が引き出しちゃうこともない。

 とっても凄い能力なんだよ、ふふんと胸を張って自慢出来てしまうよね。



 「そろそろ使者の人達帰ったかなー?」


 「にゃにゃ!」


 「そろそろ昼も過ぎるし帰る頃とは思うんじゃがのう、こちらは晩餐を用意する気もないのじゃが日に日に時間が延びよって…さっさと帰ってくれんと帝国からの使者も待たせておるしの」



 そう、私達がこうして視察と称して領都で遊び歩いているのは聖国の連中が性懲りもなくこちらに使者を送ってくるからだ。

 男爵か子爵か知らんけど、すでにお話は終わっているんだけども何をとち狂っているのか…『儂がお前達を妾として迎えてやってもいいぞ』とか『王太子殿下が白い毛皮の獣は珍しいと欲しがっている。毛皮にして送れ』とか『オコーメは聖国のものだから寄こせ』等々とおっしゃって、無事に紅天のガルルンさんやおにぎりを食べて進化した蒼天のシリウスさんを怒らせていました。

 双天の波動と言われるものが伝説やお伽噺になっているらしいのだけど、史実通りどころか随分と控えめに伝わっていた様で私とガルルンにシリウスさん以外、領都丸ごと気絶しちゃって後の対応が大変だったんだけど、聖なる波動の為か敵意を持って放たれた聖国の連中以外は身体が健康になったよとみんな喜んでくれてたみたいだよ。



 「いい加減我が領も帝国も聖国に愛想を尽かしていることに気付かないものか…ノルビスト達もすでに味方とは言い難い状況なのにのぉ」


 「王太子の叔父が私の剥製を求める時点でなしよ」


 「にゃ!」


 「レーアたちはどうぶつじゃないの!」



 叔父が姪の皮とか剥製を求めるって異常過ぎて本気で笑えないんですよね。

 聖国は現在、祖父である聖皇が治めておりその双子の娘である母の姉である叔母が聖女として祀られているらしいんだよ。

 政教分離と言うかそんな感じでーと適当に伝えられた体制で、王や貴族が法を定めてそれを聖女が承認するという神輿が軽ければと考えたようで、実際に聖女の力を持つ母ではなく髪の色だけを受け継ぎ言い成りになる叔母が選ばれ、幼い頃から承認の印をロボットのように押していくだけと言う…聖女の名を借りた腐敗国家が生まれたそうだ。



 もちろん周辺国はそんなことはとっくに知っていたみたいで、特に帝国は他種族国家と言うこともあり、聖国の最近の風潮である聖女様はフューメルだったというフューメル第一主義に苦い顔をしていたのだが、シリウスさんの報告で「もう聖国いらないんじゃね?」と帝王が会議中らしい。

 ノルビストさん達もそうなんだけど、帝国も聖女様達に感謝はしているんだけどさすがに自国の不利益が過ぎると言うことで、近年は目の上のたんこぶ状態だ。

 聖国がこんな状況なのに強気なのはたった一つ。



 「聖女様が定めた法ね…」



 推定魅音が定めたとされる法は1000年経った今でも各国で尊重されているのだが、聖国に関してはそうは思わない。

 彼らは直系の子孫と言うことで増長し、法を拡大解釈しているに過ぎないと思っている。

 前にガルルンさんが言っていた自由農についてもなんだけど、ガルルンさんの「領主にとっては…」の続きを考えると、世代が変わるごとに土地代を払わせ更に収穫量に合わせて税を取れるという領主に優しいシステムになっている。



 俺達が三音であった頃は、俺達の中でも魅音は誰よりも怠惰で調子乗りでおバカだったけど天才だったんだよ。

 彼女が考えた政治システムが愚者たちに利用され、周囲に欠陥だったと思われている現状に…はらわたが煮えくり返っている。

 聖女教の聖皇を自称する愚かな祖父から背信者と認定されたと聞かされることになる本日、私はじーじとガルルンさん達に頼み事をしラストフェリア王国をようやく脱出することになるのであった。

 

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