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修行編
第36話 剣聖への道 〜萬寿香(マンジュコウ)〜 その3
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対象を余すこと無く観察し、とことんまで分析する。
それってまさに『千年九剣』の第一層『絶対空間認識』と第三層の『絶対分析』の考え方そのものじゃないか。
もちろん、レイラみたいに修行はしてないから、俺のそれは全くの別物かも知れないけど――今の俺がやろうとしている事ってそう言う事だろ?
だったら後は第二層の『超身体制御』を使ってレイラの動きを寸分違えること無く、そのままコピーするだけだ。
俺は目の前を駆けていくレイラが辿ったその足場をそっくりそのまま俺の足場にした。レイラが足場を踏みしめる際の重心の移動も全く同じになるように心掛けた。
するとどう言うわけか、俺の身体がぐんぐん妹に追いついて行くじゃないか。それどころか、急な斜面だと言うのに足が軽い。それにバランスも崩さない。さっきまで俺が選んでいた道よりも断然登りやすい。
気を少しでも抜けば、瞬く間に遠ざかって行く妹の背中に、俺も一時はどうなることかと思ったが、集中力を切らさなければ大丈夫だ。行ける!
でも『見たありのままを実行する。』なんて言葉で言うのは簡単だけど。もしそれが出来るんなら俺は今ごろは世界チャンピオンにでもなっている。
だからそんな事が簡単に出来るはずは無いんだけど、それでも必死にしがみつく気持ちが、俺と妹の動きを次第にリンクさせて行った。
すると何故だろ――
何となくだけど、俺にも妹が今何をしているのかが理解できるようになってきた。
不思議な感覚だ。
見ているだけでは理解できなかったことが、身体を通して理解出来るっていうのかな――
斜面を駆け上がる妹の視線がある一定のリズム一瞬だけ固定されているのが分かる。そしてその一瞬の後、妹はまるで池に浮かんだ飛び石を渡るように斜面を一気に駆け上がっている。
実際に妹の動きを真似して初めて分かった。つまり妹は視点を固定した瞬間、最も登りやすいルートと、そこを駆け上がる際に最も適切な身体の使い方を一瞬で見極めているんだ。
もちろんそんな事が一朝一夕で出来るはずが無い。
当然だけど、この神業とも思える所業《しょぎょう》も、今まで妹が真剣に取り組んできた『千年九剣』の修行のたまものなのだろう。
そして今の俺は、妹に追いついたとは言え、ただ単に妹が導き出したルートをそのまま辿っているに過ぎないのだ。
あれほど遠くに見えた頂《いただき》の立枯れ杉にほんの十数分もかからずに到着した俺達兄妹。
妹は少し息を弾ませ、そして俺は大きく息を弾ませて、次に目指すは今日の目的地、今目の前に見える三つ目の山だ。
結局――
今回も偉そうにに修行とか言ったわりには、またしても妹のヤバさを見せつけられてしまったわけだけど――なんだかんだ言って俺なりの収穫はあった。
ん?
妹の背中を追いかけてみて、自分も『千年九剣』の修行をしてみたくなったかって?いやいやまさか。漫画やアニメじゃあるまいし。妹には悪いけどさ、俺があんなデタラメな修行なんかやるわけ無いじゃん。
そんなことより俺。今のでなんとなく掴めちゃったんだよね――
「これから始まる第四層の修行のヒントがさ」
つまりだよ。
人ってのは見てるだけや、何もせずに考えているだけじゃ、物事の本質を完全には理解出来ないんだ。もしそれを知りたいなら実際に身体を動かして必死に考えて――経験ってのを積まなくちゃいけない。
「それじゃぁ俺が今まで妹に教えてきた事と矛盾しているじゃないか!」
一応自分で突っ込んでみたけど、ちょっと待ってくれ。話は最後まで聞くものだよ。俺は今までの修行が無駄だったとは言っていないだろ。それどころか、その基礎が出来たうえで俺はもう一度この剣技を再構築するつもりなんだ。
例えば、芋虫が蛹《サナギ》を経て美しい蝶になるように――妹もここで大きく変わる。期待しててくれ、次の第四層に入った妹は恐ろしく強くなるぞ(たぶん……)
って事でさ。俺はこの第四層で一般的な剣技の十倍、いや百倍、千倍の経験積ませようと思っているんだ。
もちろん俺が直接剣の指導するわけじゃ無いけど、そこは『この異世界の理《ことわり》』に期待って事で――
それってまさに『千年九剣』の第一層『絶対空間認識』と第三層の『絶対分析』の考え方そのものじゃないか。
もちろん、レイラみたいに修行はしてないから、俺のそれは全くの別物かも知れないけど――今の俺がやろうとしている事ってそう言う事だろ?
だったら後は第二層の『超身体制御』を使ってレイラの動きを寸分違えること無く、そのままコピーするだけだ。
俺は目の前を駆けていくレイラが辿ったその足場をそっくりそのまま俺の足場にした。レイラが足場を踏みしめる際の重心の移動も全く同じになるように心掛けた。
するとどう言うわけか、俺の身体がぐんぐん妹に追いついて行くじゃないか。それどころか、急な斜面だと言うのに足が軽い。それにバランスも崩さない。さっきまで俺が選んでいた道よりも断然登りやすい。
気を少しでも抜けば、瞬く間に遠ざかって行く妹の背中に、俺も一時はどうなることかと思ったが、集中力を切らさなければ大丈夫だ。行ける!
でも『見たありのままを実行する。』なんて言葉で言うのは簡単だけど。もしそれが出来るんなら俺は今ごろは世界チャンピオンにでもなっている。
だからそんな事が簡単に出来るはずは無いんだけど、それでも必死にしがみつく気持ちが、俺と妹の動きを次第にリンクさせて行った。
すると何故だろ――
何となくだけど、俺にも妹が今何をしているのかが理解できるようになってきた。
不思議な感覚だ。
見ているだけでは理解できなかったことが、身体を通して理解出来るっていうのかな――
斜面を駆け上がる妹の視線がある一定のリズム一瞬だけ固定されているのが分かる。そしてその一瞬の後、妹はまるで池に浮かんだ飛び石を渡るように斜面を一気に駆け上がっている。
実際に妹の動きを真似して初めて分かった。つまり妹は視点を固定した瞬間、最も登りやすいルートと、そこを駆け上がる際に最も適切な身体の使い方を一瞬で見極めているんだ。
もちろんそんな事が一朝一夕で出来るはずが無い。
当然だけど、この神業とも思える所業《しょぎょう》も、今まで妹が真剣に取り組んできた『千年九剣』の修行のたまものなのだろう。
そして今の俺は、妹に追いついたとは言え、ただ単に妹が導き出したルートをそのまま辿っているに過ぎないのだ。
あれほど遠くに見えた頂《いただき》の立枯れ杉にほんの十数分もかからずに到着した俺達兄妹。
妹は少し息を弾ませ、そして俺は大きく息を弾ませて、次に目指すは今日の目的地、今目の前に見える三つ目の山だ。
結局――
今回も偉そうにに修行とか言ったわりには、またしても妹のヤバさを見せつけられてしまったわけだけど――なんだかんだ言って俺なりの収穫はあった。
ん?
妹の背中を追いかけてみて、自分も『千年九剣』の修行をしてみたくなったかって?いやいやまさか。漫画やアニメじゃあるまいし。妹には悪いけどさ、俺があんなデタラメな修行なんかやるわけ無いじゃん。
そんなことより俺。今のでなんとなく掴めちゃったんだよね――
「これから始まる第四層の修行のヒントがさ」
つまりだよ。
人ってのは見てるだけや、何もせずに考えているだけじゃ、物事の本質を完全には理解出来ないんだ。もしそれを知りたいなら実際に身体を動かして必死に考えて――経験ってのを積まなくちゃいけない。
「それじゃぁ俺が今まで妹に教えてきた事と矛盾しているじゃないか!」
一応自分で突っ込んでみたけど、ちょっと待ってくれ。話は最後まで聞くものだよ。俺は今までの修行が無駄だったとは言っていないだろ。それどころか、その基礎が出来たうえで俺はもう一度この剣技を再構築するつもりなんだ。
例えば、芋虫が蛹《サナギ》を経て美しい蝶になるように――妹もここで大きく変わる。期待しててくれ、次の第四層に入った妹は恐ろしく強くなるぞ(たぶん……)
って事でさ。俺はこの第四層で一般的な剣技の十倍、いや百倍、千倍の経験積ませようと思っているんだ。
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