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イベルサ神殿はセルセタの町から離れた小高い丘にあるとエクスから聞いた。今は町の大通りを歩いている。その大通りに見知った姿を見つけた。
先日の死闘で勝利したドラームだった。
やはり無事でこの町にまだ滞在していたらしい。
とはいえ敗者に掛ける言葉等無い。何を言っても侮辱になってしまうだろう。
俺は彼を見なかった事にして通りすぎようとした。
しかしドラームはこちらに気付き話しかけてきた。
「剣士殿じゃあないか!この間の闘いは久々に血沸き肉踊る闘いだったな。俺に勝利するとは見事な腕前だった。何度打ち倒しても立ち上がってくるその姿に恐怖したぞ。」
「ドラームさん。その節はどうも。勝てたのは執念が有ったからだ。技術や筋力、そして強烈な加護…どれをとっても俺が勝利できる要素は無かったぜ。ただたった一つの誓いが俺を勝利に導いたんだ。」
「そうか…その誓いを聞くのは野暮と言う物だろう。俺もまだまだ修行が足りないな。勇者としての加護に溺れてしまっているようだ。一から訓練をやり直す事にするよ。次は負けないようにな。また出会える事を期待しているぞ。それではな紫音殿。さらばだ。」
「さらば青き騎士…加護を授かりし勇者…最強の男よ。また闘える事を待ちわびているぞ。」
紫音はドラームと会話を始めた。私達はおいてけぼりだ。でも闘った男にだけ分かる話というのがあるのだろう。まあ正確には聖剣の中でサポートしていた私も闘っていたのだが…それを突っ込むのも憚られた。そもそもドラームは私が聖剣の神霊とは知らないだろうし…どんな風に見えるのかしら?仲間…それともやっぱり恋人?
うーん。すごく気になるけれどとても聞けないわね。
まあ良いか…思考から抜け出すとしましょう。
ボクはつくづく思う。強さは技術や筋力のみでは決まらないと…どんな強敵にも食らいついていくガッツが必要になるんだ。
紫音とドラームの闘いは正にそれを指し示している。
紫音は筋力、技術、精神力全てで圧倒的にドラームに劣っていた。それでも黒仮面の男に勝つまでは負けないという唯一無二の誓いの力によって勝利を掴んだのだ。
今話しているドラームも薄々それは理解しているのだろう。
これから紫音はもっと強くなる。強敵との闘いが彼の技術や精神力を磨きあげていくだろう。筋力はトレーニングが必要かな。
ボクも鍛えないとね。パーティーのお荷物になるのはゴメンだ。
ドラームと別れた俺達はイベルサ神殿まで歩いていった。エクスの念写能力を使った地図を元に歩みを進めていく。
町から離れているとはいえ衛兵の詰所があったりしているため安全な場所ではある。
一時間程歩いてイベルサ神殿についた。
小さい神殿だが荘厳な造りをしている。
俺達は神殿の中に入っていった。中は掃除は行き届いているが人の気配が無かった。中央の神託の間に俺は立った。
すると何処からともなく声が聞こえてきた。
エクスとアンジェリカは硬直している。というか俺も体は動かせない。目線と口が動くだけのようだ。
「フフ…心配か?急に体が動かなくなって心配だろう。恐れる事はない。神との出会いとはそう言った類いのものだ。今はお前を含めて時間が停止しているのだ。さあお前の願いを何でも聞いてやろう。述べて見よ。今年の良い男…紫音よ。」
俺は口をやっとの事で動かす。
「あんたは神なのか?女神教の神といえばアイリス様じゃないのか?」
「それは違うな。アイリスは女神教のメインの神格に据えられているだけだ。この様な些事で姿はまず現さない。それ以外の雑多な神霊がこの様な儀式では相手をするのだ。紫音よ。理解できたかな?」
アイリス様じゃなくて少し不満なのは黙っていよう。俺の願いを言うんだったな。
それならたった一つだ。
「ああ理解したさ。話を戻そう。俺の願いは暗黒教団の壊滅と黒仮面の男の死だ。それを叶えてくれるのか?」
「フム…そうか。それを叶えるのは多少難儀だな。暗黒教団はノースメリカンの何処にあるか不明だし、黒仮面の男も何処にいるのか分からないな。しかし繋がりを示す者も居る。ラドラテックスの町に向かうが良い。ここから歩いて西に一月程の町だ。そこには暗黒教団の繋がりを示す何かがあると分かった。これでお前の願いを叶えたと言う事になるな。」
「少し不満な回答だが、手掛かりを掴めたのは嬉しいさ。了解した。ラドラテックスの町に向かうとする。神様、ありがうございました。さらばだ。」
「アイリスに代わって旅の道行きの安全を祈らせて貰おう。それではさらばだ。女神教の復讐者よ。」
そう謎の神霊が言い終えると再び俺達の時間が動き出した。
エクスもアンジェリカも何事も無かったように澄ましている。
「エクス、アンジェリカ。神託を受けたぞ。暗黒教団との繋がりがある町があるらしい。その名もラドラテックスの町だ。そこにこれから向かうぞ。」
「えっボク達は何も聞いてないんだけど…ラドラテックスの町かぁ…初めて聞く名前だね。まあボクは旅の目的もないし何処へでも着いていくさ。紫音にお任せするよ。」
「神気の残り香を感じるわ。神霊の神託があったのは間違い無さそうね。良いでしょう。ラドラテックスの町とやらに向かいましょう。セルセタの町も見納めね。」
こうして俺達は暗黒教団の手掛かりがあるというラドラテックスの町に旅をする事になった。
先日の死闘で勝利したドラームだった。
やはり無事でこの町にまだ滞在していたらしい。
とはいえ敗者に掛ける言葉等無い。何を言っても侮辱になってしまうだろう。
俺は彼を見なかった事にして通りすぎようとした。
しかしドラームはこちらに気付き話しかけてきた。
「剣士殿じゃあないか!この間の闘いは久々に血沸き肉踊る闘いだったな。俺に勝利するとは見事な腕前だった。何度打ち倒しても立ち上がってくるその姿に恐怖したぞ。」
「ドラームさん。その節はどうも。勝てたのは執念が有ったからだ。技術や筋力、そして強烈な加護…どれをとっても俺が勝利できる要素は無かったぜ。ただたった一つの誓いが俺を勝利に導いたんだ。」
「そうか…その誓いを聞くのは野暮と言う物だろう。俺もまだまだ修行が足りないな。勇者としての加護に溺れてしまっているようだ。一から訓練をやり直す事にするよ。次は負けないようにな。また出会える事を期待しているぞ。それではな紫音殿。さらばだ。」
「さらば青き騎士…加護を授かりし勇者…最強の男よ。また闘える事を待ちわびているぞ。」
紫音はドラームと会話を始めた。私達はおいてけぼりだ。でも闘った男にだけ分かる話というのがあるのだろう。まあ正確には聖剣の中でサポートしていた私も闘っていたのだが…それを突っ込むのも憚られた。そもそもドラームは私が聖剣の神霊とは知らないだろうし…どんな風に見えるのかしら?仲間…それともやっぱり恋人?
うーん。すごく気になるけれどとても聞けないわね。
まあ良いか…思考から抜け出すとしましょう。
ボクはつくづく思う。強さは技術や筋力のみでは決まらないと…どんな強敵にも食らいついていくガッツが必要になるんだ。
紫音とドラームの闘いは正にそれを指し示している。
紫音は筋力、技術、精神力全てで圧倒的にドラームに劣っていた。それでも黒仮面の男に勝つまでは負けないという唯一無二の誓いの力によって勝利を掴んだのだ。
今話しているドラームも薄々それは理解しているのだろう。
これから紫音はもっと強くなる。強敵との闘いが彼の技術や精神力を磨きあげていくだろう。筋力はトレーニングが必要かな。
ボクも鍛えないとね。パーティーのお荷物になるのはゴメンだ。
ドラームと別れた俺達はイベルサ神殿まで歩いていった。エクスの念写能力を使った地図を元に歩みを進めていく。
町から離れているとはいえ衛兵の詰所があったりしているため安全な場所ではある。
一時間程歩いてイベルサ神殿についた。
小さい神殿だが荘厳な造りをしている。
俺達は神殿の中に入っていった。中は掃除は行き届いているが人の気配が無かった。中央の神託の間に俺は立った。
すると何処からともなく声が聞こえてきた。
エクスとアンジェリカは硬直している。というか俺も体は動かせない。目線と口が動くだけのようだ。
「フフ…心配か?急に体が動かなくなって心配だろう。恐れる事はない。神との出会いとはそう言った類いのものだ。今はお前を含めて時間が停止しているのだ。さあお前の願いを何でも聞いてやろう。述べて見よ。今年の良い男…紫音よ。」
俺は口をやっとの事で動かす。
「あんたは神なのか?女神教の神といえばアイリス様じゃないのか?」
「それは違うな。アイリスは女神教のメインの神格に据えられているだけだ。この様な些事で姿はまず現さない。それ以外の雑多な神霊がこの様な儀式では相手をするのだ。紫音よ。理解できたかな?」
アイリス様じゃなくて少し不満なのは黙っていよう。俺の願いを言うんだったな。
それならたった一つだ。
「ああ理解したさ。話を戻そう。俺の願いは暗黒教団の壊滅と黒仮面の男の死だ。それを叶えてくれるのか?」
「フム…そうか。それを叶えるのは多少難儀だな。暗黒教団はノースメリカンの何処にあるか不明だし、黒仮面の男も何処にいるのか分からないな。しかし繋がりを示す者も居る。ラドラテックスの町に向かうが良い。ここから歩いて西に一月程の町だ。そこには暗黒教団の繋がりを示す何かがあると分かった。これでお前の願いを叶えたと言う事になるな。」
「少し不満な回答だが、手掛かりを掴めたのは嬉しいさ。了解した。ラドラテックスの町に向かうとする。神様、ありがうございました。さらばだ。」
「アイリスに代わって旅の道行きの安全を祈らせて貰おう。それではさらばだ。女神教の復讐者よ。」
そう謎の神霊が言い終えると再び俺達の時間が動き出した。
エクスもアンジェリカも何事も無かったように澄ましている。
「エクス、アンジェリカ。神託を受けたぞ。暗黒教団との繋がりがある町があるらしい。その名もラドラテックスの町だ。そこにこれから向かうぞ。」
「えっボク達は何も聞いてないんだけど…ラドラテックスの町かぁ…初めて聞く名前だね。まあボクは旅の目的もないし何処へでも着いていくさ。紫音にお任せするよ。」
「神気の残り香を感じるわ。神霊の神託があったのは間違い無さそうね。良いでしょう。ラドラテックスの町とやらに向かいましょう。セルセタの町も見納めね。」
こうして俺達は暗黒教団の手掛かりがあるというラドラテックスの町に旅をする事になった。
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