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村長と勇者
5、覇王になると装飾が変わる
しおりを挟む「‥‥‥遂に完成したか」
村長は玉座に座りながら、ガーゴイルが持ってきたアイテムをニヤリと見た。
「魔族の名工に打たせております、まずこれほどの剣はありますまい」
『魔王の剣』攻撃力だけなら勇者の剣をも上回る最強の剣。刀身は怪しく光り鞘さえも美しい。種族、職業を問わず誰でも装備可能。名前がなんかカッコいい。
「これでとりあえず開始出来そうだな。あとは運営しながら調整しよう」
流離のダンジョンの目玉アイテムの完成である。
「‥‥‥魔王の剣」
キラキラした目で剣を見つめる勇者マルチナ。
「なかなか良い出来であろう?」
「‥‥‥そうだな!」
「奥方様、ご機嫌麗しゅう御座います」
勇者マルチナに跪き挨拶するガーゴイル。
「‥‥‥結婚しておらん」
村長の言葉を無視して、勇者マルチナは赤い顔でガーゴイルの肩をパシパシと叩いていた。
「聞いてる? あとはこれを頼む」
村長はそう言うと一枚の紙をガーゴイルに渡した。
「これは何で御座いますか?」
「宣伝のチラシだ」
【ようこそ、流離のダンジョンへ】
ダンジョンが危険な場所なんて思っているそこの勇者の貴方、その考えはもう古い!
このチラシを手に取った貴方は選ばれた勇者です。
貴方のパーティーがもう辛いダンジョンに挑まなくて良くなったことを、カークス村一同お喜び申し上げます。
流離のダンジョンは貴方の安心安全なダンジョンライフを約束致します。
パーティー全滅後の蘇生、装備や道具の回収など全てカークス村にお任せ下さい。
10階層クリアーごとに貰える豪華商品。
階層踏破ランキング上位パーティーには毎週変わる素敵なプレゼント。
併設された宿で旬の食材を使用した豪華な料理に舌鼓を打ち、ゆっくり風呂に入れるのも流離のダンジョンだけの特権。
ダンジョン最下層で
『魔王の剣』
が貴方をお待ちしております。
このチラシ持参の先着10組のパーティーはなんと初回ダンジョン挑戦料無料!
※最下層アイテムは告知なく変更する場合が御座います。
運営:カークス村 代表:村長
「沢山作ったから世界中の街に、上空からばら撒いといて」
「‥‥‥選ばれた勇者が大量に現れそうですな」
「別に一人しか選ばないなんて書いてない」
「‥‥‥確かに」
「チラシの効果はまだ先になるであろうが、明日から開始する。村の者達も仕事に慣れなければいかんしな」
頷くとガーゴイルは、大量のチラシを部下に運ばせて村長の間から出て行った。
「ようこそ、流離のダンジョンへ」
メイド服を着た美しい受付嬢。
勇者達にダンジョン挑戦のルールを説明するのが彼女の仕事。
「‥‥‥客ではない、余だ」
「見たらわかる!」
ダンジョン運営開始の初日。
まだ挑戦してくる勇者達は多くない。
「‥‥‥其方は何を考えておるのだ」
ランキングボードを指差し、村長が勇者マルチナを見て溜息をついた。
「‥‥‥んん?」
明後日の方に目を逸らす勇者マルチナに、ランキングボードをトントンと叩く村長。
【今週の踏破ランキング】
1位──勇者マルチナ 100階
2位──勇者ゴンズのパーティー 38階
3位──勇者ルークのパーティー 24階
4位──勇者ギデオンのパーティー 22階
5位──勇者ゼシカのパーティー 18階
6位──勇者タケルのパーティー 15階
7位──勇者レオンのパーティー 13階
8位──勇者バルガス 12階
8位──勇者バニラのパーティー 12階
10位──勇者サトシ 10階
「ズルはしていないぞ、ちゃんとクリアーした!」
ニコリと笑い胸を張る勇者マルチナ。
「‥‥‥偉そうに言うな。返しなさい」
村長は勇者マルチナが腰に下げた魔王の剣を指差した。
「やだ」
「ランキングボードも消すぞ、関係者の受付嬢が一位では怪しすぎるであろう。しかもソロでクリアーしおって‥‥‥」
ランキングを書き直す村長。
「ランキングはどうでも良いが、剣は私のだ!」
「我儘を言うでない」
「やだ!」
「‥‥‥どうしたのだ、其方は物に執着するような人間ではなかろう?」
「貴方の名前が付いた剣を、他の人が使うのは許せない! これは私のだ!」
「‥‥‥そんな理由?」
「私には大事なことだ!」
頬を膨らます勇者マルチナ。
「‥‥‥わかった、剣の名前を『覇王の剣』に変えよう」
「えええぇ!」
床に崩れる勇者マルチナ。
「はい、返しなさい」
「やだ。これは貴方の名前が付いた『魔王の剣』、私の大事な宝物だ!」
「‥‥‥今回はしぶといな」
頬を膨らませ上目遣いで村長を見る勇者マルチナ。
「‥‥‥わかったわかった、その『魔王の剣』は其方にやる。だが、いないとは思うが次の『覇王の剣』が出来上がるまでに、100階制覇する者が現れたらその剣を一時返すのだぞ」
溜息をつきやれやれといった顔の村長。
「‥‥‥本当に貰っていいのか?」
ジト目の勇者マルチナ。
「余に二言はない」
「ありがとう! いつも優しい貴方がやっぱり私は大好きだ!」
そう言うと勇者マルチナは、ピョンと飛び村長に抱きついた。
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