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45、ランドの城
しおりを挟む「あれが魔王城ですね!」
小高い丘の上から魔王城を見下ろす女勇者。
石に片足をかけ悠然と立つ姿はとても美しい。
その美しさは世界を救った伝説の勇者が魔王との壮絶な戦いに向かう、まさにその直前の姿を描いた絵画のよう。
「レイラ、足で踏んでるその石貰って良い?」
そしてその脇に立つのは、伝説の武器『石』集めに余念のない魔法使いの男。
「はい、ニア様。この石良い形してますね! 踏んじゃってごめんなさい」
「ただの石だから気にしないで」
魔王との壮絶な戦いなんて始まりません。
今回は戦争を止めに来ただけです。
恐らく人間では魔王に勝てない。
少なくとも多くの犠牲が出るのは間違いないだろう。
それは避けたい。
「魔王城の向こうにいる兵隊さん達が、魔法王国の人達ですかね?」
「やっぱりそうだろうな」
小高い丘の上から見下ろす俺たちから見て手前に魔王城。
その向こう側に陣取る大軍が、魔法王国アルフォードの軍勢だろう。
「魔王城ってもっと怖い感じだと思ってました。なんかメルヘンチックで可愛いですね」
レイラが言うように、魔王城は某アミューズメントパークの城のよう。
これじゃない感が半端ないです。
魔王の威厳がまるでない。
「なんで、その城の周りに城壁と外堀作っちゃうかな。雰囲気が台無しだ」
急ごしらえの物々しい城壁は、物凄い異物感である。
「ニア様、兵隊さん達の動きが‥‥‥。急いだ方が良いかもしれないです」
「まさか始まっちゃう? レイラ、兵法とか知ってるの?」
「いえ、なんとなく人の動きで‥‥‥あ!」
レイラの視線の先を見ると、アルフォード王国の軍隊が魔王城に向けて動き出していた。
レイラの予言的中。
「タイミング悪いな!」
「‥‥‥もう、止められないかもしれないです」
「レイラ‥‥‥それも予言?」
「なんとなく、はい」
嫌な事言わないで下さい。
レイラの予言はよく当たる。
‥‥‥かと言って見過ごすわけにはいかない。
「とりあえず突っ込む!」
「はい!」
アルフォード王国軍の前線へ。
最短距離を選択。
魔王城、城壁の中を突っ切る俺とレイラ。
中には魔族とおぼしき人影や、モンスターがウヨウヨしています。
「レイラ、基本は無視だ! 邪魔な奴は俺が蹴散らす!」
「はい!」
先に走る俺が、進路的に邪魔なモンスターを倒しながら全速力で進む。
魔族達もまさか中に敵が居るとは思っていないようで反応が遅い。
──いける!
「ニア様! 門が!」
後ろでレイラの声。
「もう、面倒くさいな!」
城を突破するまで後少し。
目の前の城門が開こうとしていた。
魔王軍も打って出るつもりなのだろう、門の前で数千はいるであろうモンスターが待機しているではありませんか。
すぐそこにアルフォード王国軍がいるはずだ。
──どうする?!
乱戦が始まると止められない、衝突する前になんとかしないと。
城門に向かって走りながら、持てる限りの石を用意して力を込めた。
「道を開けろーー!!!」
門の前にいるモンスターに向かってメテオ。
後ろから攻撃されるとは思ってなかった魔王軍は、無防備に石を食らってかなりの数が消滅してくれた。
「レイラ! 門を突っ切って外に出るぞ!」
「はい!」
今なら抜けられる。
「な、な、なんであんたらが城の中にいるのよ!」
走りながらすれ違った色っぽい魔族。
見覚えがあります。
色欲のイレイザさん。
「イレイザ覚悟!」
「ひい!」
‥‥‥後ろを走るレイラが、剣をイレイザに向かって構えちゃってます。
「レイラ、今は我慢! 走るぞ!」
「はい。‥‥‥後で、覚悟してなさい!」
青い顔のイレイザさん。
凄い恨まれようである。
なんかかわいそう。
「抜けた!」
開きかけの城門を突破して外へ。
なんとも無謀な進軍だったが上手くいったようだ。
後はアルフォード王国軍に合流して素早く説得を────
「出てきたぞ、魔族だ! 構えっ!」
「‥‥‥え?」
外に居たアルフォード王国軍、前線の兵士達。
想像より魔王城に接近していたようで、もろに門から出てくる所を見られました。
「打てー!!」
やばい、やっぱりそうなります?!
俺に向かって無数の魔法が飛んできました。
待てコラ、敵じゃない!
ドッガッーーーン!!!
「いてててててっ! ふざけんな!」
「くそ! まだ生きてるぞ、打ちまくれ!」
次の攻撃に備え、構えるアルフォードの兵士達。
誰の為にこんな無茶したと思ってんだ。
ちょっとイライラしてきましたけど?
魔王城で受けた初ダメージは、人間からの魔法でした。
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