【完結】投げる男〜異世界転移して石を投げ続けたら最強になってた話〜

心太

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62、魔王が現れた

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 アリスさんの用意してくれた部屋で、優雅に座る鉄仮面。

「久しぶりだな」

 聞き覚えのある澄んだ声。
 ‥‥‥魔王だ。

「‥‥‥何考えてんですか。魔王が勇者を訪ねて来ちゃ駄目でしょ」

 ストーリーが台無しだ。

「せっかく来てやったのに失礼な奴だな」

 鉄仮面をしてるので分からないが、ムッとしてる気がした。


「‥‥‥どうぞ」

「どうも」

 お茶を出すアリスさんに、お辞儀する鉄仮面。
 傾く鉄仮面はかなりシュールで、笑いそうになったのは内緒だ。
 アリスさんはお茶を出すと、そそくさと退出していった。
 俺も部屋から出たい。


「レベルは上がったか?」

「‥‥‥ぼちぼちです」

 こいつと普通に話して良いのか?
 なんなら、こいつを倒す為にレベルを上げてんですけど。

「最近攻めて来ないから暇だ。たまには顔を出せ」

「強いから嫌だ」

「‥‥‥じゃあ遊びに来い」

 ‥‥‥何、怖い。
 何して遊ぶの。
 殺人遊戯とか?

「何でここに居るとわかった?」

 居場所がバレてるのは辛いものがある。
 プリングの街も危険でしかない。

「魔王軍の情報網を舐めるな。お前らがどこで何をしてるかくらい、全てお見通しだ」

 詰んでます。

「‥‥‥今日は何しに来たんだ?」

「急に逃げやがったからな、顔を見に来た」

 わかります。
 砂をかけて逃げたから、怒ってらっしゃるんですね。

「俺たちに魔王軍と戦う気はなかった。戦争を止めに行っただけなのに、そちらから攻撃してきたんだ。勝手に攻撃してきて、こっちが少し反撃したら怒るとか大人気ないぞ!」

「‥‥‥別に俺は怒ってなどいないが?」

 鉄仮面が少し傾いた。
 これは首をかしげているのか?
 動きがいちいち面白い。
 しかし表情もそうだが、こいつの行動理由がまるでわかんない。

「そうだ、あの時の事はお互い水に流して忘れましょう! 俺たちはまだ戦ってない体で。時期がきたらちゃんと戦いに行きますから」

「忘れる事は無理だな」

 やっぱり、相当根に持ってらっしゃる。

「だからって、魔王が攻めて来るのは反則だ! そんな事してたら勇者が育たないだろ。ルールはちゃんと守ろう!」

「お前はさっきから何を言ってるんだ? 俺は顔を見に来たと、さっきから言ってるだろ」

「‥‥‥じゃあ、少しお話したらお帰り頂けると?」

「すぐ帰って欲しそうな雰囲気だな。俺の顔を見て鼻血まで出したのに、冷たい奴だ」

 今すぐにでもお帰り願いたいです。
 ‥‥‥怖いです。

「‥‥‥ニア様、鼻血とは?」

 俺の後ろにいたレイラ。

「鼻血は‥‥‥鼻からの出血だな」

 言えない。
 あまりにも情けなくて言えない。

「鼻血を出すくらいだ、俺の顔は嫌いじゃないんだろ?」

「顔は綺麗でした」

「そうか、安心した」

「‥‥‥安心?」

「好きな奴に嫌われていたら悲しいだろ?」

「はい?」

「さっきから言ってるだろ。俺はお前が好きだから遊びに来たんだ。少しは優しくしろ」

 ‥‥‥。




 一人称が『俺』の魔王(♀)は堕ちてました。
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