81 / 103
81、トシゾウの鳴き声
しおりを挟む「そこを退くでござる!」
「だから外は危ないですって‥‥‥」
数時間の睡眠をとったトシゾウが急に起き上がり外に出ようとしたので、扉の前に立っている俺。
「拙者の事は、ほっといてくれでござる!」
「‥‥‥死んじゃいますよ?」
「お主は、あまり拙者を舐めない方がいいでござる!」
声を荒げるトシゾウの口から、唾が飛んできてかなり不快。
「トシゾウさんは、モンスターと戦えるの?」
どう見てもパジャマを着た、小太り最弱キャラ。
「拙者にかかれば、その辺のモブなどどうという事はないでござる」
モブ?
久しぶりに聞く単語。
──まさかな?
「トシゾウさんって変わった名前ですけど、本名です?」
「名前はアリス殿に教えたのであって、お主には教えておらんのだ、馴れ馴れしく名前を呼ばないでもらいたいでござる! 拙者男は大嫌いでござる。特にお主のような顔の良い男を見ると虫唾が走るでござる!」
‥‥‥凄い嫌われてる。
「拙者の嫌いな下等生物よ、お主に高貴な拙者を止める権利などないでござる! そこを退くでござる!」
そう言いながら小太りトシゾウは、勢いよく俺の前に詰め寄ってくる。
トシゾウは俺より背が高いため、上空から唾が降り注ぐ。
──不快の極み!
「あんた、いい加減にしなよ!」
部屋の隅で様子を見ていたアリスさん。
「‥‥‥アリス殿?」
驚いた顔で、アリスさんの方を振り向くトシゾウ。
「あんたね、どんだけ偉い人か知らないけど、言って良いことと悪いことがあるでしょ」
アリスさんも少し怒っておられます。
「違いますぞアリス殿、拙者はアリス殿に言っているのではなく、この下等生物に言っておるのであって‥‥‥。アリス殿は拙者に認められた、高貴な人種でござる」
下等生物とは俺のこと。
「人を下等とか高貴とか言うあんたが一番下等。見た目もそうだけど、あんた性格も最悪だね」
「待ってくだされ。見た目はパジャマのせいでござる! 拙者はこの世で一番高貴な存在、ちゃんとわかればアリス殿も見直すでござる!」
トシゾウは確かにパジャマ姿だ。
そしてそのパジャマが物凄くダサい。
お洒落な服を着れば或いは‥‥‥ないか。
「服のせいじゃないって。あんた、どうせ金持ちの子供なんでしょ? なにもせずにゴロゴロしてるから、そんな情けない体型になるのよ」
「違う! 拙者は部屋から出られないのでござる! 故に少し太ってしまったかもしれないが、そんなこと些細なことでござる! アリス殿は拙者のお嫁さんになるべき人でござる!」
‥‥‥凄い、なんで急にプロポーズしたの?!
「‥‥‥はっ? あんた何言ってんの?」
物凄く冷たい顔のアリスさん。
こんな顔できるんだ‥‥‥怖っ。
「だから、アリス殿を拙者のお嫁さんに迎えるでござる。こんな下等生物とは今後関わるのはやめて、拙者の元に来るでござる!」
もう一度言うが下等生物とは俺。
「‥‥‥行くわけないでしょ」
「どうしてでござる?! 」
「キモいから」
‥‥‥言っちゃった。
アリスさんの横に立つイレイザが、ニヤニヤと様子を見ている。
尻尾がピンと立ち、フリフリされている。
‥‥‥楽しんでるな。
「‥‥‥キモいとは‥‥‥まさか、拙者のことでござるか?」
目を見開き驚いた顔のトシゾウ。
「他に誰がいるんだい?」
「‥‥‥待ってくだされ。拙者、そんなこと言われたことないでござる‥‥‥。え? ほんとに?」
「よほど甘やかされて育ったんだね。もう一度言ってあげようか、あんたブクブク太ってて気持ち悪いし、性格も私が今まで見た中で最悪だね」
「‥‥‥拙者と結婚は?」
「するわけないでしょ! そのたるんだ腹をなんとかしてから出直してきな!」
「‥‥‥ぐぬっ。ぐぬぬっ。ぐぬぬぬぬっ!」
トシゾウから変な音が聞こえる。
怒った?!
「うぉ~~ん!」
ドン!
急に走り出したトシゾウに弾き飛ばされ、尻餅をつく俺。
トシゾウは魔法陣の描かれた部屋に入り、扉を勢いよくドンと閉めた。
「‥‥‥逃げた」
「逃げたね」
「ダーリン、アイツ物凄く泣いてたよ。キモいわ~」
ニヤニヤしながらイレイザ。
「‥‥‥これどうすんの?」
「私は悪くないよ!」
ムスッとしてるアリスさん。
「フラれたトシゾウを、色欲のイレイザが慰めるなんてのはどう?」
「‥‥‥ダーリン、私は別に誰にでもちょっかい出す訳じゃないからね‥‥‥」
「そうなんだ」
「ねえねえ、もう追い出しちゃお! モンスターに食べられても、誰も悲しまないよきっと」
ニヤニヤとイレイザ。
尻尾はピンピンだ。
「‥‥‥それは流石に駄目だろ」
「‥‥‥うぉ~~ん。うぉ~~ん」
魔法陣の部屋に近づくと、トシゾウの泣き声が聞こえた。
‥‥‥何という鳴き声!
「うぉ~~ん、うぉ~~‥‥‥グゴォーーー! グゴゴゴォーー!」
「ダーリン、寝たわ!」
隣に居た尻尾ピンピンのイレイザ。
「‥‥‥寝たな」
やっぱり、ベッドじゃなくても寝れるじゃないか!
10
あなたにおすすめの小説
チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~
ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆
ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。
※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる