【完結】投げる男〜異世界転移して石を投げ続けたら最強になってた話〜

心太

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89、初めての告白ってドキドキするよね

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 祠の中。
 女神像の前に転移した俺とトシゾウ。

「アリス殿を連れて帰るでござる!」

「なんて自分勝手な! 全然分かってないじゃないですか?!」

「‥‥‥そういう意気込みでござる」

「‥‥‥なるほど」

「本当は緊張で足のガクガクが止まらないでござる‥‥‥。オシッコ漏らしそうでござるぅ」

 初めての告白に緊張して、青い顔でガクブルしてるトシゾウ。
 いつ自分が消えてしまってもおかしくない状況に、内心は不安でいっぱいなためガクブルしてる俺。
 
「あれ? あんたら帰ってたの?」

 そこに現れたのはアリスさん。
 
「ただいま」

「‥‥‥ただいまでござる」

「ご飯もう少し待ってね。今日は2人が大好きな、アリスちゃん特製シチューだからね~」

 鍋の中身をグルグルとかき混ぜながらアリスさん。
 自らを『ちゃん』付けで呼ぶとは!

「可愛いでござる。愛おしいでござる」

 しかし、トシゾウの目はハートだ。
 アリスさんは料理中だがやるか?

「席を外しましょうか?」

 トシゾウにだけ聞こえるように、耳打ちする俺。

「拙者、勇気を振り絞るでござる!」

 足を震わせながら叫ぶトシゾウ。
 大声を出すから、アリスさんの肩がビクッとしたよ‥‥‥。

「何? どうしたの?」

「あ、アリスさん、トシゾウさんがアリスさんにお話があるそうです‥‥‥」

「トシゾウが話‥‥‥なんだい?」

 アリスさんは鍋をかき混ぜる手を止め、此方を向いた。

「あ、俺はちょっと、あっちの部屋に行っときますんで」

「‥‥‥そう」

 何かを悟ったようなアリスさんが、トシゾウをテーブルの椅子に座らせ、向かい合うように自分も反対の椅子に座るのを確認してから、俺はそっと魔法陣の部屋に移動した。

 ──トシゾウ、頑張れ!





「‥‥‥ダーリンどうしたの?」

 魔法陣の部屋に入ると、床に転がっていたイレイザが立ち上がり近づいてきた。

「むしろこんな何もない部屋で、イレイザこそ何してんの?」

「私は美貌を保つために、ストレッチ中よ」

「なるほど」

「‥‥‥そんな事より、ダーリン大丈夫?」

 俺の顔をじっと見つめてくるイレイザ。

「‥‥‥ん? 何か変な顔してる?」

 マスクをしてるので、表情はよみにくいと思うのだが‥‥‥。

「ダーリンにしては珍しく‥‥‥ううん、初めてかな、もの凄い不安定な感情のオーラが見える」

「何それ、占い師?!」

「ダーリン、私がなんて呼ばれてたかちゃんと覚えてる?」

「淫乱なイレイザ」

「‥‥‥色欲ね。私はダーリン以外に飢えてないから」

「はい」

「私の特技は相手のオーラを見れることなの。この人は今心が弱ってるから騙しやすいなとか、逆に自信満々だから騙せないなとか」

 もはや天性の詐欺師。

「‥‥‥そんな事出来たんだ」

「ダーリンはいつも、とんでもない自信のオーラに溢れてたんだけど‥‥‥今のダーリンは簡単に堕とせそう」

「‥‥‥何それ、怖い」

「‥‥‥ダーリン大丈夫?」

 イレイザは俺の頬にそっと手をあててきた。
 温かい手。
 なんだが安心する。
 イレイザはそのまま俺のマスクを取り、自分の顔を近づけてきた。

 ──‥‥‥はっ!!

「コラ! 騙してるな!」

「‥‥‥だって簡単なんだもの」

 ベロを可愛く出して笑うイレイザ。

「恐ろしい特技だな」

 腐っても、魔王軍の四天王。

「で、ダーリン本当にどうしたの? かなり参ってるでしょ?」

「‥‥‥そんなに酷い?」

「うん」

 思い当たる事はもちろんある。
 忘れていたが、俺はいつ死んでもおかしくない状況にいるのだ。
 これで精神が安定してる人間がいたら、教えて欲しいものだ。

「まあ、生きてたら色々あるよ」

「ダーリン、本当に私でよかったら抱っこしてあげようか?」

「‥‥‥いや、やめとく。ありがとう」

「残念‥‥‥今のも惜しかったわね」

 舌打ちする、尻尾がピンピンなイレイザ。
 ‥‥‥色欲、恐ろしい娘。





「うぉ~~~ん!」

 祠に響き渡る鳴き声。

「‥‥‥何?!」

 床に転がって、艶かしいストレッチをしていたイレイザが飛び起きた。
 尻尾がゾワゾワと逆立っている。

「‥‥‥トシゾウさん」

「あいつフラれたね」

 ニヤニヤとイレイザ。

「イレイザ、トシゾウが告白してるの知ってたの?!」

「人の色恋沙汰は大好きよ」

 流石です。

「どうしよう。まだ行かない方が良いかな‥‥‥」

「フラれて逆上した男が女を襲うなんて、日常茶飯事よダーリン」

「‥‥‥そんな日常嫌だ」

 トシゾウは大人になったんだ、流石に大丈夫だろ?


 ガタンッ!!!


 隣の部屋から大きな物音。

「え? やばい?」

「ダーリン、早く行こう行こう」

 不謹慎にニヤニヤ笑うピンピンイレイザ。
 
「トシゾウさん! アリスさん! ごめんなさい、開けますよ!」

 一応断りを入れてから、女神像の部屋に入ると、テーブルの椅子に一人でちょこんと座るアリスさんの姿が見えた。
 
「‥‥‥あれ? トシゾウさんは?」

「‥‥‥出て行ったよ」

 アリスさんが指さした方を見ると、外への扉が開いていた。

「‥‥‥アリスさん、大丈夫です?」

「さっきのはトシゾウが、泣きながら立ち上がった時に椅子が倒れた音」

 見るとトシゾウが座っていた椅子が転がっていた。

「そうですか」

「トシゾウはちゃんと紳士的だったよ」

「‥‥‥そうですか。ちょっと俺、行ってきます」

 俺はアリスさんが頷くのを確認してから、祠の外へ。
 そんなに遠くには行ってないはず。
 小走りでトシゾウを探す。
 ‥‥‥どうやって慰めようか。


 ──‥‥‥ん? いや待てよ。

 そういえば、告白の結果を聞いてない気がした。
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