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番外編2 【ラウンジ色欲の怪】
しおりを挟む「ダーリン、2号店も大繁盛よ」
「そうみたいね」
プリングの街に颯爽と現れた、男達の秘密の花園『ラウンジ色欲』。
俺は今、その2店舗目の視察に来ていた。
バックルームのソファーに座り、収支報告書を見せてもらってます。
なんかもう、売り上げの額がとんでもない。
「人間のオスは総じて欲望にだらしがないから、物凄く楽に騙せるわ」
豊満な胸を揺らしながら、艶っぽく笑うイレイザ。
「‥‥‥同じ人間のオスとして、なんか複雑な心境」
元魔王軍四天王の魔族『色欲のイレイザ』にとって、人間のオスなど取るに足らない存在なのだろう。
「ダーリンは大丈夫よ」
何が大丈夫なのだろうか‥‥‥。
「それで、ニア、俺はいつまでここを手伝えばいいんだ? そろそろ宿屋の仕事に戻りたいんだが‥‥‥」
俺の横に腰掛けていた、胸元の大きく開いた煌びやかな服を身に纏う元魔王ことウメちゃん。
──そう、これがよくなかった‥‥‥。
開店と同時に予想より繁盛した2号店。
とにかく人手が足りなかった。
そこで白羽の矢がたったのがウメちゃん。
キャストとして少しの間、手伝ってもらう事になったのだが‥‥‥。
「ウメちゃん駄目よ! ウメちゃん目当ての客が毎日、長蛇の列を作ってるのよ? 今辞められたら、とんでもない量のクレームがママである私に来ちゃうわ!」
元魔王を使う元魔王軍四天王のイレイザ。
「‥‥‥ウメちゃん、もう少しイレイザの指示に従っててあげて」
もはや上下関係はあべこべです。
「ニアがそう言うなら別にいいんだが‥‥‥このまま続けると、もっと酷い事にならないか?」
人が足りないからと言う理由で、ウメちゃんをヘルプで入れたのが完全に失敗だった。
むしろ客足が増えてしまい、2号店は入れない客で店の周りがごった返す事態に。
──少し考えればわかったろうに‥‥‥。
顔を直視すると魅了されて崩れ落ちてしまう。
かと言って視線を下に落とすと、露わになっな胸元や、ミニスカートから飛び出す太腿に魅了され崩れ落ちる。
もはやどこを見たらいいのかわからない怪物がここにいるのだ。
「しかし、ウメちゃんが綺麗なのはわかるんだけど‥‥‥客はいった何を求めて来てるんだろうか‥‥‥」
崩れ落ちて失神するのがそんなに楽しいのか?
自由に動くことすら困難になるというのに‥‥‥。
「ダーリンはやっぱりお子ちゃまね。大人の男には色々な愉悦の方法があるのよ」
ニヤニヤしながら俺を見るイレイザ。
「‥‥‥子供扱いして失敬な」
「悔しかったら、ダーリンもその硬く閉ざした扉を開くことね」
‥‥‥なんの扉だよ。
そして開くとどうなるの?
「ウメさんに指名入りました」
「ガーラン、今日の指名客は誰?」
バックルームに入ってきた、ガーランと呼ばれたボーイのムキムキ男に答えるイレイザ。
キャストの安全の為、出来るだけ力の強い人間を雇っているようだ。
はて、どこかで見たことがあるような? ないような?
‥‥‥うん、思い出せないのでほっとこう。
「いつものキング様とお付きの方です」
キングってまた変な名前だな‥‥‥。
偽名なのだろうが、王様にでもなったつもりか?
「頑張ってむしり取るのよウメちゃん!」
「またアイツか‥‥‥」
冷たい表情で眉間に皺を寄せるウメちゃん。
「よく来る客なの?」
「ダーリン、キング様達は1号店のデブに負けないくらいの太客よ。金遣いがとんでもないの」
1号店のデブとはトシゾウの事。
「‥‥‥トシゾウと張り合える金持ちって凄いな」
創造主権限でトシゾウの金は無尽蔵だ。
いくらでも創り出せるので尽きる事がない。
「仕方ない、行くか‥‥‥。ニア、俺はお前以外にあまり肌を晒したくない。早く代わりを見つけてくれよ」
ウメちゃんは立ち上がり接客に向かう準備を始めた。
貴方の代わりを見つけるのは、不可能だと思われるのですが‥‥‥。
「すいませんウメちゃん。何か身の危険を感じたら、すぐ助けを呼んでくださいね」
「お前は、そこらの人間に俺が負けると思うのか?」
「‥‥‥思いません」
ウメちゃんは元魔王。
恐ろしく強い。
「だったらその心配は不要だ。この身体はニアのモノだからな、俺が責任を持って守るから安心しろ。‥‥‥ただな、今来てるキングって客、俺を見ると悶えながら『バブーバブー』って赤子のように泣きやがる‥‥‥それが気持ち悪いんだ‥‥‥」
そう言い残しウメちゃんはバックルームから出て行った。
「‥‥‥イレイザ、このプレイはまさか?!」
あっちの世界にいた時に、噂で聞いた事がある。
──赤ちゃんプレイ‥‥‥。
「ダーリンも扉を開いて、ウメちゃんとヤッテみたら良さがわかるかもよ?」
「‥‥‥やりません!」
ウメちゃんを見送った俺は、外の空気でも吸いに行こうかと、バックルームから出て店の通路を歩いていた。
ドンッ!
「おっと失礼」
考え事をしていた為、客の男とすれ違う時に肩があたってしまった。
「こちらこそ、失礼した」
ぶつかったのは、客であろうヒゲのおじさん。
こちらに礼儀よく頭を下げて‥‥‥ん?
「‥‥‥バルカンさん‥‥‥こんなとこで何してんですか?」
「‥‥‥え? ニア殿?!」
やはり王国親衛隊長のバルカンさん。
「バルカンさん、こんな店に来てるのがバレたら、嫁が泣きますよ?」
安月給のくせに。
「ニア殿、誤解です! 違いますぞ! わしは護衛で‥‥‥って、ニア殿こそ、こんなところに居ては勇者レイラ殿が悲しまれるのでは?」
「ここは俺の店です」
「なんと?! まさか、若く顔の良いオーナーとはニア殿の事であったか! まずいな‥‥‥ニア殿、わしとここで会った事を内密にしてはくれぬだろうか?」
「別に客の事を外でペラペラ話しませんけど‥‥‥もしかしてですけど、バルカンさんの護衛の相手って‥‥‥」
「‥‥‥お察しくだされ、お忍びで羽根を伸ばしておられるのだ‥‥‥」
‥‥‥おいおい、王様何やってんだよ。
娘が泣くぞ?
「まあ、言いませんけど‥‥‥」
「ニア殿とレイラ殿のおかげで、この国を恐怖に陥れた前魔王がどこかに居なくなり、王も肩の荷が降りたのだろう。今の魔王は人間と友好的だと聞くしな」
そう言えば、ヴィラルは人間と平和条約を結ぼうと躍起になってたな。
「‥‥‥まあ、身分がバレないように、ほどほどに楽しんでください」
「心遣い感謝いたす」
まあ、王族だって少しはハメを外したい時があるのだろう。
「席まで送ります。どこですか?」
「奥のVIPルームです」
──あれ? VIPルームって確か‥‥‥。
「ニア殿、こんな時になんなのだが、あの冷酷な前魔王はどこに行ったのです? やはりニア殿達が葬ってしまわれたのですかな?」
「‥‥‥え? あぁ、まあ、そんな感じですかね‥‥‥」
奥にある太客専用ルームに向かいながら、俺は背中に冷や汗がつたうのを感じていた。
「やはりそうであったか、さすがですな! あの魔王がどこかにまだ存在してると思うと、我々人間は生きた心地がしませんからな!」
「‥‥‥そんなもんですかね」
「バブー、バブー! ママーー!」
「‥‥‥お前は本当に気持ち悪い奴だな。俺に触れたら命はないと思えよ」
「ママー!」
VIPルームから聞こえる怪奇音。
「‥‥‥王がこういった遊びに興じれるのも、ニア殿達が魔王を倒してくれたおかげ。‥‥‥その、後は色々と御内密に‥‥‥」
そのママが魔王です‥‥‥。
「‥‥‥大丈夫です。俺にはもう、絶対に誰にも何も言えませんから。絶対に‥‥‥」
俺の言葉にニコニコと笑い、深くお辞儀するバルカンさんであった。
バルカンさんを見送った俺は、今日でウメちゃんの『ラウンジ色欲』への出勤を最後にしようと心に決めた事は言うまでもない。
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