豪運少女と不運少女

紫雲くろの

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第1章

私の豪運は妹様を届ける。

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私はマルクルで亡き両親が残してくれた宝石店を営むレノ=アルバートと申します。
経営もギリギリでこの先どうしようと言うところに最近妹ができました。

リモートではありません。妹、妹です!
私自身、何を言ってるかわからないですが・・・とにかくそうなんです。
その妹様に店ごと養うと言われて、こうして初体験を手伝っているのですが・・・。

「い、妹様、ダメです!そんな太くて大きいのはダメですよ」

「やってみないとわからないじゃん!」

「そ、そんなの入らないですって!!ああっ!」

パキン!

「うぅ・・・せっかく形成したのに割れてしまいました・・。」

「ご主人様、もっと銃は繊細に扱わないとダメですよ。」

私のお慕(した)いしている方はもう一人居まして、それがこのレアお姉さまです。
ドラゴンのような翼や尻尾が生えておりますが、そのお姿は凛々しく美しい貴族令嬢そのものでした。
レアお姉さまは銃の弾倉内部で砕けたスフィアブレットを丁寧に掃除なさっています。

「ごめんごめん。この銃傷つかないから大丈夫かなーって。」

「まぁ銃全体が金喰鉱ゴールドイーターみたいなもんだからにゃ。」
このお方は、おそらく妹様のご親友でしょうか。
レアお姉さまと同じくしっかりしていらっしゃいます。

金喰鉱ゴールドイーターを使ってるんですか!?それも全体に?」

「まぁそういうリアクションになるにゃね。」

「はい、この大きさですと・・・何百年。それに加工費だけで居城が買えますよ!」

「まぁ作ったのはかなりヤバそうなドワーフだったけど、大分サービスしてもらったのかな?」

そうです、妹様はレアお姉さまを慕えるほどの財力をお持ちのようなのです。
そんな方の姉になるなんて思いもしませんでした。

そして時折、別の小さな妹様からは変な視線を向けられます。
どうやら最強の魔法使いの子孫で、学園を飛び級で卒業した天才らしいのですが少し変わったお方のようで。
私よりも小さな女の子は何故か股に手を当てて興奮しているのです。

「はぁ・・はぁ・・・。おねーちゃ・・・。」

乙女・・・いや、姉の危機を感じます。

「あぁ、あの天才変態魔法少女は無視していいから、手を出すと大変だから触らないようにね。」

「は、はい。妹様。」

再度原石を砕き、それからスフィアの原料となる部分を集めて特殊な魔法で溶かしていきます。
妹様は強力なのが欲しいとおっしゃっていたましたので、先程の大きなスフィアブレットを作成したのですがどうやら大きさの限界があるようです。

失敗しましたが、そこは諦めずに挑戦です。

私は再度作成した金型にそれを流し込みます。
時間が経ち冷えたそれを金型から取り出し目視で異常がないかを確認した後、机に置きました。
「ふぅ。で、できました。」

「おー」

妹様は弾倉にそれを込めてボルトを引き、銃を構えます。
お姿は私に似ているのですが、何かときめくものがそこにはありました。
再度ボルトを引きスフィアブレットを取り出すと笑顔でこちらを見てきます。

「んー、いい感じ。ありがとう!」

「いえ、これぐらいしか・・・。」

「何言ってんの!レノちゃんだからこそだよ!」

「ありがとうございます。妹様。」


スフィアブレットを作成した私達は姉の方のレノ、もといここの店主からお茶をもらっていた。
コーヒーを一口飲み、クッキーを頬張ると少量の欠片と共に香ばしい音が響き渡る。
「ふー疲れた・・・。うまっ!」
「美味しいですね。ご主人様」

「あ、ありがとうございます。」

「ところでレノ、どうするんだにゃ。」

その言葉を聞いた私と店主はクッションの方向を振り向いた。
「にゃ・・・。ガキの方にゃ・・・」

「す、すいません。」

「ガキってひどくない?」

「普段の行いにゃ。」

「ちっ。」

「そんなところにゃ。で?レノ・ショッピング・カンパニーはいつ作るんだにゃ?」

「調査が先だから、そんなスーパーマーケットのような名前の会社はすぐには作らないけど・・・。」

「そうかにゃ。」

「そろそろ夕暮れですし、ホテルに戻りませんか?」

時間の止まったような店内を見渡すと一枚しか無い窓から、夕暮れの光が差し込んでいた。
「だね。」
「やー」

「あ、あの!よかったら、ご飯食べてきませんか?」

「いいの?」

「はい、これからお世話になるのでそれぐらいはしないと、バチが当たりそうです。」

「お姉ちゃんにバチを当てる輩が居たら逆に当て返すけどね・・・。」

レノお姉ちゃんは微妙そうな顔でをする。
「は、はぁ・・・・」

「ご主人様は運が良いんです。」
「良すぎて周りは不幸になるけどにゃ。」

リロはなぜか銃を取り出して威張る。
「そうね!」

「お墨付きも得たわけだし、困ったことがあったら何でも相談してよ。」

レノちゃんは下をうつむきながら一生懸命に涙を堪えていた。
「あ、ありがとうございます。でも・・・ここまでされると・・・返せません・・・。」

「いいよいいよ。」

「うぅ。・・・なんだか苦労が報われた気がします。」

「私が言うのもあれだけどさ。人の運命って最終的にはバランスが取れるようになってるって思ってる。」

「はい・・・・。」

「だからレノお姉ちゃんが今まで苦労した分、幸せになってよ。」

「い、妹様・・・・私・・・。」

レノお姉ちゃんの頭を優しく撫でる。
「良いんだよ。甘えても。」

今までの感情が決壊した様にレノお姉ちゃんは抱きついてくる。
「うぅ・・・。」

周りの人物は不満そうにこちらを見つめてくる。
「ご主人様、私もバランスが大事だと思います!」
「本当にそういう所だと思うよ。お姉ちゃん」

「何が?」

「天然ジゴロだにゃ。」

「私は女だっつーの!」

「ふふっ。では用意してきますね。」

先程の涙を忘れさせるかのように店の奥へと向かっていった。
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