性の奴隷

腐ってもバナナ

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保科は次の日も、そのまた次の日も、夜闇の中で唯一眩しく光っている現場事務所へと足を運びました。

決まったカーテンの隙間から天音さんが男たちに抱かれている様を覗き、自身の熱く溜まっている欲求を吐き出すのでした。

保科は罪悪感に苛まれ別の方法で欲を発散しようと試みましたが出来ませんでした。自身も反応を示してくれず、落ち込んだままなのです。
それでも男たちに抱かれている天音さんを思い出すと、痛いくらいに反り勃ち大きく脈を打つのでした。
あの現場事務所が目に入るとそれだけで鼓動が早くなり心が高揚してしまうのです。

(俺はおかしくなってしまったのだろうか…)

保科は罪悪感と嫌悪感に蝕まれ、仕事中でも天音さんを避けるようになっていました。

「んっ、は……」

(これで…これで終わり……今日で終わる……)

天音さんが二本の肉棒を交互に咥えているのを眺めながらそう自分に言い聞かせます。

保科は天を仰ぎ硬くなっている自身を強く擦りました。
すぐに限界を迎えいつものように震える掌に熱を放ちます。

「あっ、あ」

事務所内では肛門と口で肉棒を咥えこんでいる天音さんが甘ったるい嬌声をあげています。

「はぁ、すげぇ眺め……」
「ほら、口動かして」

背面座位で厭らしくて尻を振り、締りの悪いだらしない口でも男を悦ばせている天音さんの瞳がまた保科に向けられたような気がしました。

保科の心臓は大きく跳ね、またその場から逃げ出します。

(もう終わり、これで終わり……)

明日になれば天音さんは現場からいなくなります。
もう日が沈んだ現場事務所に吸い込まれるように立ち寄る夜も終わるでしょう。

保科は言い表せない虚しさに襲われていました。
たった数日の別世界のような夜は保科の中に影を落としていきました。



翌日。

今日が土曜日だという事で仕事終わりに飲み会が開かれることになりました。

保科は全く気が乗りません。仕事中でも天音さんを避け、夜になればあの窓から天音さんの醜態を覗き自身を慰めていたのですから、そんな天音さんのいる飲み会に足を運ぶ気になれないのです。


仕事が終わり、各々が居酒屋へと向かう中、保科は現場事務所から動けずにいました。
もうここで天音さんが男に抱かれることはありません。
そんな天音さんをあの僅かな隙間から覗くことも二度とありません。
毎晩、自身の熱を受け止めてきた掌はまだ震えていました。

天音さんの存在が保科の中で大きく膨れ上がり鉛がついたように重くのしかかってきます。

(もう帰るか…)

保科が立ち上がると現場事務所のドアが開きました。

「お疲れ様です。」
「あ……」

涼しい顔をした天音さんが入ってきて、事務所内には保科と天音さんの二人きりとなってしまいました。

保科の心臓の音はあまりにもうるさく、それは天音さんにまで聞こえてしまうのではないかと思うほどでした。

男を咥え込み嬉しそうに体を差し出していた天音さんが手の届く範囲にいる、それだけで保科の欲は昂り気がおかしくなりそうでした。
自身もズボン越しでも誤魔化せないほどに膨張していました。

天音さんは窓を施錠しカーテンを閉めて回りました。

その無言の動作に保科の動悸は激しくなり、気持ちの悪い汗が止まりません。


「保科くん」
「え?」

(初めて名前呼ばれた…名前知ってたのか…)

保科は天音さんが自分の名前を覚えていたことに動揺しました。


「保科くんさ、いつも見てたでしょ。」

そう言って振り返った天音さんは妖艶な笑みを浮かべていました。

「な、何を…」

吃ってうまく誤魔化すこともできない保科に天音さんは目を細めて微笑みます。

「あそこ」

天音さんはいつも保科が覗き見していた窓を指差しました。

「あのカーテンの隙間から俺がヤっているの見てたでしょ。」
「え、あ、」
「保科くんが覗いているのに気づいた次の日からわざと少し開けていたんだ。ほら窓も開いてたでしょ?あれ、俺がわざと開けたんだよね。」

保科の脳みそは理解が追い付かず、うまく言葉を発することもできません。
その代わりに心臓は具合が悪くなるほど激しく動き、昂った自身には血が一気に集まってきました。全身が痺れ、眩暈も止まりません。

「な、なんで……」

保科の問いかけに天音さんは小さく口を開きました。

「保科くんに見て欲しかったから。」

「な、何言って、」

「保科くん、事務所の鍵閉めてこっちに来て。」

保科の体は考えるよりも先に動いていました。天音さんに言われた通り、現場事務所の鍵を施錠します。


「……保科くん、おいで。」


保科は天音さんに飲み込まれてしまいました。


その晩、保科と天音さんが飲み会に顔を出すことはありませんでした。


【性の奴隷  END】
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