入厨 ‐いりくりや‐

天野 帝釈

文字の大きさ
上 下
3 / 27

とんでもねぇめっけもの

しおりを挟む
朝ぼろぼろの戸から零れる光で目が覚めた男は、ごっほごっほと大きく咳をした。

喉はがらがらで、おまけに家中にある埃が更に男の喉に刺さるようだ。

昨日は疲れてとっとと寝ちまったので気付かなかったが、雨漏りもひどく所々に水溜まりが出来ている。

家がある癖に俺の暮らしよりひでぇじゃねぇかと思いながら、男は男の近くに垂れた、
一番綺麗そうな水を一掬い口に含んだ。

ここらは海水ばかりで井戸が少ねぇ。

生ぐせぇ雨水だって無いよりはましである。

喉が少し潤うと、何だか無性に腹が減った気がする。

ゴロリと横に頭を転がすと、老婆が目を瞑ったまま荒い息を立てて布団に寝転がっている。

目も開けられねぇくらい目ヤニが溜まっていて、今生きているのでさえやっとだろう。
しおりを挟む

処理中です...