入厨 ‐いりくりや‐

天野 帝釈

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くたびれ損の暇つぶし

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その家を出てから次の日。

町外れをぐるりと洗ってみたが、少しの銭しか盗めず、
男は不機嫌なまま、やはり盗みは人の多い町でやるに限ると町に向かって歩いて行った。

まだ日は高い。

この調子で歩きゃぁ夕暮れまでに着いて、相部屋になるかもしれんが、安宿にでも泊まれるだろう。

しかし、どうにも昨日寄った老婆の家が気になる。

もうくたばっているかもしれんが、生きていても水が持つのは数日だ。

一口二口しか残っていない水は、盗みにしても死にかけから命の半分以上ごっそり盗んだようなもんだ。



ふむ。と男は一人考えると、あまり良い思い出のない、あの海沿いの家まで歩いて行った。

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