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 エドワードからの手紙を見て口に手をあて耳まで真っ赤にして、手紙を持ったまま部屋の中で右往左往するソフィア。

「ソフィアお嬢様どうされました?大丈夫ですか!!」

 マギーに代わり今日側に仕えてるダリアがソフィアの行動にびっくりして慌てる。

「ダリアどうしましょう!!」



「殿下が…殿下から…」


「お茶会以外で…しかも城下のお買い物にお誘いいただいたのーーー!!」

 普段大声など出さないソフィアが興奮して倒れそうになるのをダリアが咄嗟に支える。
とりあえず椅子に座って、ふーと息を整える。
お茶を入れてきますとダリアが一旦部屋を出ると、もう一度手紙を読み直す。


──間違いなく殿下のお手紙よね?他の誰かからでも困るけど…


 さらにもう一度見直す。ボンと音がでそうなほどまた顔が赤くなって1人照れるソフィア。

──間違いないわ!こんな事はじめて!!嬉しいけどどうしましょう!!




 しばらくしてダリアが戻ってきて、お茶を入れる。どうぞと置いてくれたカップを持ち上げ1口ゆっくりと飲む。ソフィアの好きなお茶で飲むと少し落ち着いてきた。


「お返事…すぐ出さないとダメよね?ダリア準備お願い」



 そこからのやり取りはとても早かった。
学園が長期冬季休暇中なので予定は合わせやすく2度ほどのやり取りで日程は決まった。
 当日はエドワードが馬車で迎えに来ることになっている。



──買い物と言っても1日中ではないでしょうし、何か持って行こうかしら…

「マギー。私自身が作れる物でお渡しして喜ばれる物ってあるかしら?あっ今まで殿下にお渡ししてない物がいいんだけど…」

「ソフィア様ご自身で作られるのですか?んー今までお渡ししてない物……」

何があるかなと2人で考える。


「……お料理とかは無謀かしら?」

「お食事は殿下がご用意していただけると思うので…クッキーとかはいかがですか?」

「クッキー!!持っていくのに邪魔にもならないし、いいかもしれないわね」


 では早速!と料理長のところに行って相談する。
全て自分ですると言うソフィアに、はじめは反対していた料理長も、お願い!!とソフィアに頼まれると断れず了承した。
  約束の日までの短い間だったが、何度か試作を繰り返しなんとか合格点をもらうことができたのは前日だった。
 自分で作ったクッキーを、自分で選んだ布に包み、自分でリボンをつけ形にする。


──これは喜んでいただけるかな




◇◆◇

 約束の日、少し気温は低いが雲ひとつない晴天。朝からソフィアはドキドキしながら待っている。今日は歩くことも多くなるからといつものドレスよりはボリュームを押さえシンプルなデザインだが気品は損なわないもので、もちろんこの前エドワードから贈られたネックレスとピアスに合わせた色あいのドレスだ。


──大丈夫かしら…いつも以上に緊張するわ…



「ソフィア様。殿下がいらっしゃいました」


「い…今行きます」


 鼓動とリンクするようにいつもより速くなる足取りに気をつけながら階段を降りて行くとホールにエドワードとシモンが見えた。
 少し上に顔をあげたエドワードと目が合った瞬間完璧な笑顔で呼ばれる。 

「ソフィア」

「お…お待たせいたしました」

流れるような所作でソフィアの手を取りエスコートするエドワード。

「さあ、行こうか」

「はい…」



──今日の殿下は…いつもよりさらに完璧・・だわ。


 馬車にはシモンとマギーも同席する。
何人かの護衛もすぐ動ける位置に控えているようだ。今日はなるべく目立つなとシモンから言われているからだ。


「ソフィアは行きたいところはあるか?」

「いえ!特には…」


向かい合って座っているとお茶会での距離より近くドキドキが止まらない。 
エドワードも普段の装いからは少し落ち着いてはいるが、どんな服を着てもスタイルの良さや綺麗な顔立ちが目立つ。


「そうか…では店は決めてもいいか?」

「はい。もちろんでございます」


 行先は決まっていたのか何も言わなくても馬車は進み城下の街並みが見えて来た頃、1軒の店の前で止まった。

 シモンとマギーが降りた後エドワードが手を差し出しソフィアを連れ出す。
店の扉も既に開いていてそのまま中に入る。流れはとてもスムーズだ。



「わぁ…綺麗…」

素直な感想がもれる。その店はドレスの仕立て屋で、ひとつひとつ仕上げが丁寧で着た人が幸せになれると今評判のお店だった。
 正面奥にはカウンターと試着室へと続く扉、それとは別に個室の扉もある。2階に続く螺旋階段も見える。それだけでもかなり広いが圧巻は1階ホール左右に別れて綺麗にディスプレイされてるドレスの数々。デザインも色々、装飾も素晴らしい物ばかりだ。

 普段は屋敷へ仕立て屋が来るのでここまでの規模でドレスが並んでるのを見るのははじめてだった。


「ソフィアにドレスを選んでもいいだろうか?」

「殿下が私に選んでくださるんですか?」

「嫌か?」

「いえ!!もったいないことでござます。ありがとうございます」


 奥の1番広い個室へ案内される。その部屋にもたくさんのドレスが並んでいるが事前にエドワードからの要望があったのか店のオーナーが何着かピックアップする。
 そのまま試着室へ案内されあれよこれよと、されるがままドレスを着せられ、エドワードの前に立つ。

「いかがでしょうか…?」

「とても似合ってる」

 眩しい笑顔で見られ照れるソフィア。その様子を見てまた微笑むエドワード。このやり取りを何回か繰り返し最終的に2着ドレスを選んだ。全ての小物も選び全てをスタンリー家へ送るように手配した。


「疲れたか?」

「少し…」

にこっと微笑んだが実際はフラフラだった。ドレス1着着るだけで重労働だ。
店を出た時お昼を少しすぎてしまっていたので急いで用意されてるレストランへ移動する。


「父上と母上もお忍びで来るところなんだ」

とエドワードが馬車の中で教えてくれた。

レストランも素晴らしいところで、出された食事もとても満足できるものだった。
最後のお茶を飲んでる時に

「疲れてないか?まだ大丈夫ならもう1店行ってもいいだろうか?」

「大丈夫です。今たくさん頂いてしまったので少し歩きたいくらいです」

飲み終わってから2人で少し歩くことにした。エドワードが行きたい店はレストランからすぐのところにひっそりと営んでいる本屋だった。

 カランカランっと扉についてる鐘がなり中に入る。見た目乱雑にでも種類はきっちりと分けて陳列されてる棚を見て、古い本だわ…背表紙を見ながらソフィアは思った。どれもいずれ読みたいと思ってた本ばかりで品揃えの良さに驚いている。

 エドワードは店主から袋を受け取っていた。

「欲しい本はあるか?」

袋を受け取った後、ソフィアの側まで来て尋ねる。

「いえ。私が読むには難しい本ばかりですわ。でも眺めてるだけでも楽しいですね」

「では行こうか」

「はい」

エドワードがソフィアの手を取り馬車までエスコートする。
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