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皇宮からの帰りの馬車はロベール家ではなくパルマ公爵邸に向かっていた。
皇宮からさほど離れていないところにあるパルマ公爵邸にはすぐ着いた。
馬車の扉を門番が開けロベール侯爵が降り話をすると屋敷から執事が出てきてまた何か話をしていた。
「降りていいよ」
父親に手を引かれ馬車を降りると入口からまっすぐ走ってくるカールが見えた。
「カール様!どうして学園は?」
「ディアンヌが休みと聞いて、なんだか嫌な予感がして…とりあえず飛び出して…」
ディアンヌの手を取って説明するもしどろもどろになってしまった。
執事がとりあえず中へと案内して全員屋敷の中に入る為歩き出した。
「カール、この前はミアが申し訳なかった」
「いえ、侯爵様に頭を下げてもらうことではないですから」
「いやさすがに…普通にびっくりする提案だっただろ?」
「まあ…はいそうですが…」
笑い話になってしまうほど、ミアの暴言はありえなかったとロベール侯爵は再度謝罪をした。
屋敷の中に入り応接間に通され待っているとパルマ公爵が入ってきた。
「上手くいきましたか?」
「とりあえず陛下は1度考えると即決は避けられた」
そうかと頷きながらパルマ公爵はカールの横に座った。執事がお茶を運んで来て全員の前に置いていく。
パルマ公爵が1番先に1口飲んでから
「ディアンヌは安心して我が家に来てくれればいいから」
「はい。ありがとうございます。でも…」
ディアンヌが不安そうに両親を見たので
「ディアンヌ、私たちの事は気にしないで。今まであなたを優先できなかったから今は親らしいことをさせて欲しいの」
「お母様」
「さて、今後のことをもう少し詰めて話しておこうか。カールとディアンヌは庭でも行っておいで」
「分かりました。ディアンヌ行こうか」
「はい」
カールが手を引いて応接間を出た。
パルマ公爵邸の庭はかなり広かったが手入れの行き届いた花壇は素晴らしかった。花を見ながら歩いてベンチに座り今日あったことをカールに伝える。
「私が皇宮仕えとしてアルベルト様のお側に行けば良かったのだと思うのですが…あまりにも出来が悪いので…」
「それは違うぞディアンヌ」
「お父様とお母様に全てを任せて私だけ今までと同じように過ごしていいのでしょうか?」
カールをまっすぐ見つめディアンヌは続けて話す。
「私だけ何もせず…このまま…」
下を向いてしまったディアンヌを横から肩を抱いて自分の方に引き寄せる。
「…カール様!」
「ディアンヌがアルベルトの側に行って幸せになるのは…アルベルトだけだ。でも侯爵の案だとしあわせになれる人が多いよね」
ディアンヌはそのまま考えているがカールは一気に話を進める。
「侯爵はゆっくりしたいと仰っていて、ミア様も周りから詮索されることもない。私の両親もディアンヌがきてくれることを望んでいる。何より私がディアンヌと一緒になれて嬉しい」
1度ディアンヌを離し両肩を持って自分の方に上半身を向かせる。
「もちろんディアンヌもだよね?」
にっこり微笑んで聞かれたので、首を縦に振った。
「ではより幸せな人が多い案を選ぶ方がいいよね」
──いいのかしら…私がその道を選んでも…
「いいよ。ディアンヌが幸せになる為にみんなが動いているのだから甘えてしまおう」
今日何度目だろうか、人の優しさに触れ涙があるれてくるのは…
ポロポロ流れる涙を止めることもできずただ、はいと答えるしかできなかった。
カールはハンカチをだしディアンヌの涙をふく。
「親たちも話まとまったみたいだよ」
ベンチに向かって歩いて来ている執事を見つけカールは親たちの意見もまとまっただろうと思った。
「戻ろう」
すっと手を出しディアンヌをエスコートして屋敷の中に戻って行った。
応接間に戻ると親たちはにこやかに歓談しており2人に気がつくと
「カールもディアンヌは学園に戻りなさい。後はこちらに任せなさい」
「お任せします」
「お父様お母様、よろしいのですか?」
「大丈夫だよ。こちらの段取りも確認できたし、後は皇帝陛下の出方次第だ」
「悪いようにはならないよ」
パルマ公爵は紅茶を飲みながら笑う。
皇宮からさほど離れていないところにあるパルマ公爵邸にはすぐ着いた。
馬車の扉を門番が開けロベール侯爵が降り話をすると屋敷から執事が出てきてまた何か話をしていた。
「降りていいよ」
父親に手を引かれ馬車を降りると入口からまっすぐ走ってくるカールが見えた。
「カール様!どうして学園は?」
「ディアンヌが休みと聞いて、なんだか嫌な予感がして…とりあえず飛び出して…」
ディアンヌの手を取って説明するもしどろもどろになってしまった。
執事がとりあえず中へと案内して全員屋敷の中に入る為歩き出した。
「カール、この前はミアが申し訳なかった」
「いえ、侯爵様に頭を下げてもらうことではないですから」
「いやさすがに…普通にびっくりする提案だっただろ?」
「まあ…はいそうですが…」
笑い話になってしまうほど、ミアの暴言はありえなかったとロベール侯爵は再度謝罪をした。
屋敷の中に入り応接間に通され待っているとパルマ公爵が入ってきた。
「上手くいきましたか?」
「とりあえず陛下は1度考えると即決は避けられた」
そうかと頷きながらパルマ公爵はカールの横に座った。執事がお茶を運んで来て全員の前に置いていく。
パルマ公爵が1番先に1口飲んでから
「ディアンヌは安心して我が家に来てくれればいいから」
「はい。ありがとうございます。でも…」
ディアンヌが不安そうに両親を見たので
「ディアンヌ、私たちの事は気にしないで。今まであなたを優先できなかったから今は親らしいことをさせて欲しいの」
「お母様」
「さて、今後のことをもう少し詰めて話しておこうか。カールとディアンヌは庭でも行っておいで」
「分かりました。ディアンヌ行こうか」
「はい」
カールが手を引いて応接間を出た。
パルマ公爵邸の庭はかなり広かったが手入れの行き届いた花壇は素晴らしかった。花を見ながら歩いてベンチに座り今日あったことをカールに伝える。
「私が皇宮仕えとしてアルベルト様のお側に行けば良かったのだと思うのですが…あまりにも出来が悪いので…」
「それは違うぞディアンヌ」
「お父様とお母様に全てを任せて私だけ今までと同じように過ごしていいのでしょうか?」
カールをまっすぐ見つめディアンヌは続けて話す。
「私だけ何もせず…このまま…」
下を向いてしまったディアンヌを横から肩を抱いて自分の方に引き寄せる。
「…カール様!」
「ディアンヌがアルベルトの側に行って幸せになるのは…アルベルトだけだ。でも侯爵の案だとしあわせになれる人が多いよね」
ディアンヌはそのまま考えているがカールは一気に話を進める。
「侯爵はゆっくりしたいと仰っていて、ミア様も周りから詮索されることもない。私の両親もディアンヌがきてくれることを望んでいる。何より私がディアンヌと一緒になれて嬉しい」
1度ディアンヌを離し両肩を持って自分の方に上半身を向かせる。
「もちろんディアンヌもだよね?」
にっこり微笑んで聞かれたので、首を縦に振った。
「ではより幸せな人が多い案を選ぶ方がいいよね」
──いいのかしら…私がその道を選んでも…
「いいよ。ディアンヌが幸せになる為にみんなが動いているのだから甘えてしまおう」
今日何度目だろうか、人の優しさに触れ涙があるれてくるのは…
ポロポロ流れる涙を止めることもできずただ、はいと答えるしかできなかった。
カールはハンカチをだしディアンヌの涙をふく。
「親たちも話まとまったみたいだよ」
ベンチに向かって歩いて来ている執事を見つけカールは親たちの意見もまとまっただろうと思った。
「戻ろう」
すっと手を出しディアンヌをエスコートして屋敷の中に戻って行った。
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「カールもディアンヌは学園に戻りなさい。後はこちらに任せなさい」
「お任せします」
「お父様お母様、よろしいのですか?」
「大丈夫だよ。こちらの段取りも確認できたし、後は皇帝陛下の出方次第だ」
「悪いようにはならないよ」
パルマ公爵は紅茶を飲みながら笑う。
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