魔王の花嫁 ~夫な魔王が魔界に帰りたいそうなので助力します~

月親

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嫁のお取り扱い(3) -ギル視点-

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「そんなわけで、相手の人員配置はサラの能力で筒抜けになる。だから、奪還の際は、交戦を避けて盗む方向で動くつもりだ。残りの触媒が手に入り次第、仕掛ける」
「そうですか。そうなると私は向かないので、陛下の方で対処して下さい」

 シナレフィーが答え、それから彼は「ところで」と続けた。

「随分ご機嫌のようですが、どう――いえ、わかりました。それで話は変わりますが――」
「いやいや、そこはわかっても聞いておけよ」

 聞いて欲しい話題に、触れる直前で通り過ぎようとしたシナレフィーの肩を、ガシッと掴んで引き止める。
 そんな俺に、シナレフィーはあからさまに迷惑そうな顔をした。

「解けた謎には、興味無いのですが」
「お前が昔からどうしてモテるのかが、俺には本当にわからない。いいから、聞け。サラから唇へのキスの許可が下りた。そして、した!」
「予想通りの答ですね。何の面白味もありません」
「お前、普段ミアとどんな話してんだよ。会話になっているのか?」
「ミアには、彼女の提案で一日の会話で予想した内容とどれだけ一致したのか、日の終わりに結果報告することになっています。それはそれで面白いので、自然、彼女の話は聞くことになりますね」
「お前の嫁が一枚上手だった……」

 さすが、この掴み所のない男を掴んだ女である。

「そう言えば、魔界に転移した後は、そこから妃殿下を元の世界に帰すと言っていませんでしたか? そこまで深入りして、帰せるのですか?」

 シナレフィーが言外に、「無理でしょう」とこちらを見てくる。
 同じ竜族として、経験則からの言葉だろう。シナレフィーのミアに対する入れ込み方は激しく、彼は過去にミアを生け贄に差し出した村を半壊させている。
 そしてそういった傾向は、シナレフィーに限らない。多くの竜族に共通する。
 俺も含めて。

「俺はサラに「帰せる」とは言ったが、「帰す」とは言っていない」
「……ああ。陛下も、たまに魔王ですよね」
「たまに!?」
「しかし何故、そんなまどろっこしい真似を?」

 シナレフィーが、さっきとは違い興味有り気に尋ねてくる。まったく答が予測出来ないといった、そんな顔で。

「何でって、そりゃあだって。選びようがないから仕方なく嫁になりました、みたいな顔されたら俺が凹む」
「陛下は大概、臆病ですよね」
「そこは「たまに」にしておいて欲しい!」
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