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エピローグ
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魔界の気候は、オプストフルクトとそう変わらなかった。魔界の魔物をオプストフルクトに呼んで生活させていたくらいだ、それもそうか。
そしてオプストフルクトにも魔界にも、四季があった。
魔界に来てからその四季が十回ほど巡り、草原に初夏の爽やかな風が吹いている。
「圧巻ですね」
私は、隣に立つギルを見上げた。
草原には、白い百合によく似た花が一面に広がっていた。十年前にギルが作り出した十年花が、初めて開花を迎えたのだ。
元が百年花だけあって、十年花はそれをそのまま小ぶりにした感じがする。でもそれだけでも随分と印象は変わって、だから百年花の開花も今から楽しみになってくる。
「綺麗ね! 父様、母様!」
私と揃いの白いワンピースを着た娘が、花畑に向かって駆け出す。
あの日、宿っていた子は女の子だった。探索蝶ですら雄は触れなかったのだ、絶対にそうだと思っていた。
名前は美鶴。ギルの作ってくれた千羽鶴に因んでいる。安直だけれど、何だか彼女の名前はそれだと思ったのだ。
件の千羽鶴は今はもう消えて、その代わりに、ギルの部屋にある私が折った鶴の横に少し歪な紙の鶴が並んでいる。
それは徐々に綺麗な折り鶴に交換されていっていて、ギルは隠れて練習しているのかもしれない。
「ミアにも見せてやりたかったけど、今はそれどころじゃないだろうしな。まあ、十年花は十年経てば咲くし、次の機会を楽しみにってことで」
「丁度今日が出産予定日ですからね」
三人目ということで多少は落ち着いているシナレフィーさんと、大はしゃぎのイベリスちゃん&アルトくんに囲まれて、ミアさんは今頃奮闘しているはずだ。
「今度はどんな生まれ方だろうな」
「そうですね。まったく予想が付きません」
ミツルのときは卵から人型が生まれるという、イベリスちゃんともアルトくんとも違う、新たなパターンだった。ここまで来たら、へその緒がついた竜型が現れてもおかしくはない。
「ふふっ、どんな子でも、次回は皆で賑やかに来ましょう。こんなにたくさん咲いていると、それだけで楽しい気持ちになって来ますし」
言いながら、私は花畑の一画にしゃがみ込んだ。
「母様も、たくさんの花があると嬉しいのね!」
そこへミツルが戻ってきて、
「じゃあもっといっぱいにしてあげる!」
彼女は高らかに言いながら、両手を空に伸ばした。
途端、
「!? わぷっ」
私は一瞬にして大量の花に埋もれていた。
十年花だけでなく、どこから持ってきたのか色とりどりの花が後から後から降ってくる。
よくよく見ればそのどれもが微妙に発光していて、どうやらこれは本物ではなく複製の魔法のようだ。さすがギルの血を継いでいる……色んな意味で。
ミツルは一仕事終えたとばかりに、またどこかへ駆けて行った。
はらはら
はらはら
花だけが延々、降り続ける。
たくさんの花に埋もれるというのは、実際に気分は上がるし軽いので圧迫感もない。
とはいえ、そろそろ身動きが取れなくなってきた……
「助けて、ギル……」
苦笑いでそう言った私を、ギルが直ぐさま引き上げてくれる。そのままギルが、私を肩の高さまで持ち上げて一回転する。
「勿論、いつだって助けるさ」
ギルが満面の笑みで答える。
私はまだ花冠をしているかのように花にまみれたまま、そんな彼の胸の中に収まった。
-END-
そしてオプストフルクトにも魔界にも、四季があった。
魔界に来てからその四季が十回ほど巡り、草原に初夏の爽やかな風が吹いている。
「圧巻ですね」
私は、隣に立つギルを見上げた。
草原には、白い百合によく似た花が一面に広がっていた。十年前にギルが作り出した十年花が、初めて開花を迎えたのだ。
元が百年花だけあって、十年花はそれをそのまま小ぶりにした感じがする。でもそれだけでも随分と印象は変わって、だから百年花の開花も今から楽しみになってくる。
「綺麗ね! 父様、母様!」
私と揃いの白いワンピースを着た娘が、花畑に向かって駆け出す。
あの日、宿っていた子は女の子だった。探索蝶ですら雄は触れなかったのだ、絶対にそうだと思っていた。
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件の千羽鶴は今はもう消えて、その代わりに、ギルの部屋にある私が折った鶴の横に少し歪な紙の鶴が並んでいる。
それは徐々に綺麗な折り鶴に交換されていっていて、ギルは隠れて練習しているのかもしれない。
「ミアにも見せてやりたかったけど、今はそれどころじゃないだろうしな。まあ、十年花は十年経てば咲くし、次の機会を楽しみにってことで」
「丁度今日が出産予定日ですからね」
三人目ということで多少は落ち着いているシナレフィーさんと、大はしゃぎのイベリスちゃん&アルトくんに囲まれて、ミアさんは今頃奮闘しているはずだ。
「今度はどんな生まれ方だろうな」
「そうですね。まったく予想が付きません」
ミツルのときは卵から人型が生まれるという、イベリスちゃんともアルトくんとも違う、新たなパターンだった。ここまで来たら、へその緒がついた竜型が現れてもおかしくはない。
「ふふっ、どんな子でも、次回は皆で賑やかに来ましょう。こんなにたくさん咲いていると、それだけで楽しい気持ちになって来ますし」
言いながら、私は花畑の一画にしゃがみ込んだ。
「母様も、たくさんの花があると嬉しいのね!」
そこへミツルが戻ってきて、
「じゃあもっといっぱいにしてあげる!」
彼女は高らかに言いながら、両手を空に伸ばした。
途端、
「!? わぷっ」
私は一瞬にして大量の花に埋もれていた。
十年花だけでなく、どこから持ってきたのか色とりどりの花が後から後から降ってくる。
よくよく見ればそのどれもが微妙に発光していて、どうやらこれは本物ではなく複製の魔法のようだ。さすがギルの血を継いでいる……色んな意味で。
ミツルは一仕事終えたとばかりに、またどこかへ駆けて行った。
はらはら
はらはら
花だけが延々、降り続ける。
たくさんの花に埋もれるというのは、実際に気分は上がるし軽いので圧迫感もない。
とはいえ、そろそろ身動きが取れなくなってきた……
「助けて、ギル……」
苦笑いでそう言った私を、ギルが直ぐさま引き上げてくれる。そのままギルが、私を肩の高さまで持ち上げて一回転する。
「勿論、いつだって助けるさ」
ギルが満面の笑みで答える。
私はまだ花冠をしているかのように花にまみれたまま、そんな彼の胸の中に収まった。
-END-
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