19 / 44
自称次期王妃闖入(1)
ガゼボに戻り、散策前と同じく左から私、セレナ、オルウッド伯爵令嬢、マルクト伯爵令嬢の順で長椅子に座る。お茶会を再開した私たちの話題は、卒業パーティーへと移っていた。
父がエスコートすることになったと話すと羨ましがられ(ですよね!)、そこですかさず少しスレイン王子への愚痴を漏らすと――まあ釣れる釣れる。伯爵令嬢二人から、彼の悪い評判が次から次へと飛び出した。先のお茶会での様子から行って、予想通りの反応だ。
ピンからキリまである噂(という名の事実)の中でも、特に酷い……というか拙いのが、コール子爵家が貿易をした際に払うべき関税を肩代わりしたというもの。百歩譲って王子の個人資産からそうしたというのなら、せいぜい贔屓だと陰口を叩かれるだけで済んだだろう。が、何を思ったか――いやきっと個人資産が既にすっからかんだったせいだろうが、彼はローク王国の税金から出してしまったらしい。
正確にいえば、こうだ。
辺境伯領の役人が馬車で上納金を運んでいたところを、王子は私兵を使って取り囲みその一部を巻き上げた。そして彼は、田舎領主が訴えたところで父上は信じないと高笑いしたわけだが、国王陛下は役人の方を信じた。それも即時というのだから、王子の日頃の行いの悪さが窺える。ついでに、無知さも。
辺境伯領は確かに田舎ではあるが、国境――つまり防衛の要の土地。そこを任される領主となれば、国王陛下の覚えがめでたいに決まっている。
そのとき王子に巻き上げられた分の辺境伯領の上納金は、免除された。そして陛下の個人資産から補填された。
そんなことをされたなら、普通は自分を恥じて、陛下にも感謝するところ。しかし後日、辺境伯を招いての謝罪の席で王子はあろうことか「自分はこんなにも父上に愛されている」と宣ってしまった。
いやいやいや、おかしいでしょ。どうしてそうなる、まず謝罪しろ。あと金を返せ。もうどこから突っ込んでいいのかわからない。
スレイン王子の評判が悪いことは知っていたが、ここまでとは思っていなかった。きっとこれまでは、婚約者である私の耳になるべく入らないよう配慮されていたのだろう。
夫になるのであれば大問題。しかし、逆ざまぁをするなら好都合。こんな聞けば聞くほど事故物件な結婚相手、改めてコール子爵令嬢に引き取ってもらって正解だったと思う。
と、またフラグを立ててしまったのがいけなかったのか――
「こちらにいらしたのね」
何がどうなった。まさにそのコール子爵令嬢が、私たちの目の前に突如として湧いていた。
「セレナさん、私も今から参加します。席を用意していただけますか?」
しかも、いきなりわけのわからないことを言い出した。
全員がぽかんとして彼女を見る。それはそうだろう。
今日はセレナが招待客を絞った、私のためのお茶会だ。さらに言えば、元々予定していた参加者にしたって伯爵令嬢以上のみ。コール子爵令嬢はそこからして対象外である。
「あ、こちらの端で構いません。空けて下さい」
そして「空けて」と指定したのは、私の隣だった。
ここまで来ると皆の反応がぽかんから、引いた感じに変わる。私も御多分に洩れず。
おかしいでしょ。親しくもない、それも侯爵令嬢であるセレナに対してさん付けとか。「今から参加します」という台詞にしたってそう。無礼講の自由参加パーティーじゃないんだから。
あと平然として私の隣に座ろうとするのも、気が知れない。もうどこから突っ込んでいいのかわからない。
って、あ、これついさっき同じことをどこかの王子に対して思ってたわ。
(これが『割れ鍋に綴じ蓋』……)
彼らの『真実の愛を見つけた』という発言は、あながち嘘でもないのかもしれない。
私は今、そんな妙な悟りを得てしまった。
父がエスコートすることになったと話すと羨ましがられ(ですよね!)、そこですかさず少しスレイン王子への愚痴を漏らすと――まあ釣れる釣れる。伯爵令嬢二人から、彼の悪い評判が次から次へと飛び出した。先のお茶会での様子から行って、予想通りの反応だ。
ピンからキリまである噂(という名の事実)の中でも、特に酷い……というか拙いのが、コール子爵家が貿易をした際に払うべき関税を肩代わりしたというもの。百歩譲って王子の個人資産からそうしたというのなら、せいぜい贔屓だと陰口を叩かれるだけで済んだだろう。が、何を思ったか――いやきっと個人資産が既にすっからかんだったせいだろうが、彼はローク王国の税金から出してしまったらしい。
正確にいえば、こうだ。
辺境伯領の役人が馬車で上納金を運んでいたところを、王子は私兵を使って取り囲みその一部を巻き上げた。そして彼は、田舎領主が訴えたところで父上は信じないと高笑いしたわけだが、国王陛下は役人の方を信じた。それも即時というのだから、王子の日頃の行いの悪さが窺える。ついでに、無知さも。
辺境伯領は確かに田舎ではあるが、国境――つまり防衛の要の土地。そこを任される領主となれば、国王陛下の覚えがめでたいに決まっている。
そのとき王子に巻き上げられた分の辺境伯領の上納金は、免除された。そして陛下の個人資産から補填された。
そんなことをされたなら、普通は自分を恥じて、陛下にも感謝するところ。しかし後日、辺境伯を招いての謝罪の席で王子はあろうことか「自分はこんなにも父上に愛されている」と宣ってしまった。
いやいやいや、おかしいでしょ。どうしてそうなる、まず謝罪しろ。あと金を返せ。もうどこから突っ込んでいいのかわからない。
スレイン王子の評判が悪いことは知っていたが、ここまでとは思っていなかった。きっとこれまでは、婚約者である私の耳になるべく入らないよう配慮されていたのだろう。
夫になるのであれば大問題。しかし、逆ざまぁをするなら好都合。こんな聞けば聞くほど事故物件な結婚相手、改めてコール子爵令嬢に引き取ってもらって正解だったと思う。
と、またフラグを立ててしまったのがいけなかったのか――
「こちらにいらしたのね」
何がどうなった。まさにそのコール子爵令嬢が、私たちの目の前に突如として湧いていた。
「セレナさん、私も今から参加します。席を用意していただけますか?」
しかも、いきなりわけのわからないことを言い出した。
全員がぽかんとして彼女を見る。それはそうだろう。
今日はセレナが招待客を絞った、私のためのお茶会だ。さらに言えば、元々予定していた参加者にしたって伯爵令嬢以上のみ。コール子爵令嬢はそこからして対象外である。
「あ、こちらの端で構いません。空けて下さい」
そして「空けて」と指定したのは、私の隣だった。
ここまで来ると皆の反応がぽかんから、引いた感じに変わる。私も御多分に洩れず。
おかしいでしょ。親しくもない、それも侯爵令嬢であるセレナに対してさん付けとか。「今から参加します」という台詞にしたってそう。無礼講の自由参加パーティーじゃないんだから。
あと平然として私の隣に座ろうとするのも、気が知れない。もうどこから突っ込んでいいのかわからない。
って、あ、これついさっき同じことをどこかの王子に対して思ってたわ。
(これが『割れ鍋に綴じ蓋』……)
彼らの『真実の愛を見つけた』という発言は、あながち嘘でもないのかもしれない。
私は今、そんな妙な悟りを得てしまった。
あなたにおすすめの小説
皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
幼い頃から天の声が聞こえるシラク公爵の娘であるミレーヌ。
この天の声にはいろいろと助けられていた。父親の命を救ってくれたのもこの天の声。
そして、進学に向けて騎士科か魔導科を選択しなければならなくなったとき、助言をしてくれたのも天の声。
ミレーヌはこの天の声に従い、騎士科を選ぶことにした。
なぜなら、魔導科を選ぶと、皇子の婚約者という立派な役割がもれなくついてきてしまうからだ。
※完結しました。新年早々、クスっとしていただけたら幸いです。軽くお読みください。
【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ
⚪︎
恋愛
公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。
待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。
ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……
捨てられたなら 〜婚約破棄された私に出来ること〜
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
長年の婚約者だった王太子殿下から婚約破棄を言い渡されたクリスティン。
彼女は婚約破棄を受け入れ、周りも処理に動き出します。
さて、どうなりますでしょうか……
別作品のボツネタ救済です(ヒロインの名前と設定のみ)。
突然のポイント数増加に驚いています。HOTランキングですか?
自分には縁のないものだと思っていたのでびっくりしました。
私の拙い作品をたくさんの方に読んでいただけて嬉しいです。
それに伴い、たくさんの方から感想をいただくようになりました。
ありがとうございます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただけたらと思いますので、中にはいただいたコメントを非公開とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきますし、削除はいたしません。
7/16 最終部がわかりにくいとのご指摘をいただき、訂正しました。
※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。
行動あるのみです!
棗
恋愛
※一部タイトル修正しました。
シェリ・オーンジュ公爵令嬢は、長年の婚約者レーヴが想いを寄せる名高い【聖女】と結ばれる為に身を引く決意をする。
自身の我儘のせいで好きでもない相手と婚約させられていたレーヴの為と思った行動。
これが実は勘違いだと、シェリは知らない。
婚約破棄された令嬢は、“神の寵愛”で皇帝に溺愛される 〜私を笑った全員、ひざまずけ〜
夜桜
恋愛
「お前のような女と結婚するくらいなら、平民の娘を選ぶ!」
婚約者である第一王子・レオンに公衆の面前で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢セレナ。
彼女は涙を見せず、静かに笑った。
──なぜなら、彼女の中には“神の声”が響いていたから。
「そなたに、我が祝福を授けよう」
神より授かった“聖なる加護”によって、セレナは瞬く間に癒しと浄化の力を得る。
だがその力を恐れた王国は、彼女を「魔女」と呼び追放した。
──そして半年後。
隣国の皇帝・ユリウスが病に倒れ、どんな祈りも届かぬ中、
ただ一人セレナの手だけが彼の命を繋ぎ止めた。
「……この命、お前に捧げよう」
「私を嘲った者たちが、どうなるか見ていなさい」
かつて彼女を追放した王国が、今や彼女に跪く。
──これは、“神に選ばれた令嬢”の華麗なるざまぁと、
“氷の皇帝”の甘すぎる寵愛の物語。
婚約破棄ですか?勿論お受けします。
アズやっこ
恋愛
私は婚約者が嫌い。
そんな婚約者が女性と一緒に待ち合わせ場所に来た。
婚約破棄するとようやく言ってくれたわ!
慰謝料?そんなのいらないわよ。
それより早く婚約破棄しましょう。
❈ 作者独自の世界観です。
ループ7回目の公爵令嬢は、もう恋愛も復讐も面倒なので、前世の知識で「魔導カフェ」を開き、異世界初のバリスタになります
希羽
恋愛
公爵令嬢アリスは、婚約破棄されて処刑される人生を6回繰り返してきた。7回目の人生が始まった瞬間、彼女は悟る。「もう何もかも面倒くさい」。 復讐も、破滅回避のための奔走も、王子への媚びもすべて放棄。彼女は早々に家を出奔し、市井の片隅で、前世(現代日本)の知識を活かした「魔導カフェ」を開店する。彼女が淹れる「魔力を込めたコーヒー」と、現代風の軽食(ふわふわパンケーキ、サンドイッチ)は、疲れた王都の人々の心を掴み、店は繁盛する。 すると、本来なら敵対するはずの王子や、ゲームの隠しキャラである暗殺者、堅物の騎士団長などが、「癒やし」を求めてカフェに入り浸るように。「君の淹れるコーヒーだけが私の安らぎだ」と勝手に好感度を上げてくる彼らを、アリスは「ただの客」としてドライにあしらうが、その媚びない態度と居心地の良さが、逆に彼らの執着を煽ってしまう。恋愛を捨てたはずが、過去最高のモテ期が到来していた。
※本作は「小説家になろう」でも投稿しています。