100歳になりました

ミムラカズミ

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100歳になりました

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「なぁミヨ、、好きだ。でも、僕はもう死ぬ。どうしても治らない病を抱えてる。これだけ好きでたまらなくて。君以外のことは考えれない。君を悲しませたくない。この気持ちは墓場まで持っていくつもりだった。でも我慢できなかった。」

1949年夏。
高野ミヨに告白した。
3ヶ月も経たず僕は死ぬのに。

「......タカフミさん。私もずっとずっと好きだった。小さい時から。タカフミさんだけを見て。タカフミさんと一緒にいろんなところに行きたい。いろんなものを見たい。隣にいたい。ずっとそう思ってた。。」

言葉に詰まる。
ミヨが僕のことをずっと思ってくれてた。
嬉しい。嬉しいさそりゃ。
こんなこと思っちゃいけないのに。幸福感に満ちている。

「3ヶ月後の世界に僕はいない。伝えたかっただけなんだ。もしかしたらミヨに苦しい思いをさせてしまうかもしれない。分かっていながら、、どうしても。」

「.......タカフミさん。最後の3ヶ月を私にくれませんか。」

時が止まる。ように感じる。
これからの3ヶ月。僕と一緒に作った思い出が、まだ先の長いミヨの人生のとてつもない足枷になるかもしれない。
でも、、ミヨの頭の隅にでも、、僕が生き続けるなら、、

それから僕たちは3ヶ月間、"恋人"として出来る限りのことをした。

川に釣りに行き。買い物に行き。ごはんを一緒に食べ。愛を確かめ合って、、
子供が生まれたら「ミズちゃん」だね。なんて話もして。

そんな時間もやはり長くは続かなかった

「ミヨ、、、ありがとう。とても幸せだった。思い残すことは何もないよ。君が僕の人生に意味を与えてくれた。だからこそ、君には幸せになってほしい。僕のことは忘れてくれ、、とは言わない。ただ、心の片隅に置いて、、自分の幸せを探してほしい。」

「いやだ、、、私にはタカフミさんしかいないわ。。貴方だけを思って、、絶対に。絶対に。また来世でも。別の世界でも。絶対に私にはタカフミさんしかいない!」

そんなことを言わないでくれ、、、
そうなることを望んだんじゃない。。

ミヨの泣きじゃくる顔を見ながら、、目の前は暗くなり、、

起きると朝だった

「なんだぁ。変な夢だったな。会社行かないと。」

僕はエリート銀行マン。小沢隆。今日は1人で目覚めたが、僕には妻がいる。出産予定日が近づいているため入院しているのだ。
 
仕事が終わり妻の病院に向かおうとしているところ、妻のケータイから電話がかかってきた。

「小沢隆さん!奥様の陣痛が始まりました!」

妻の心配ともう生まれてくる嬉しさが入り混じり、病院に急いだ。

激闘の5時間を乗り越え、僕たち夫婦の初めての子供が生まれた。

出産後、案内された部屋は以前とは違う部屋だった。

「かわいかったね。私達の子。どんな名前がいいかなぁ。」

「そうだね。ずっと色々考えてたけどまだこれっていうのがなぁ、、」

.....ミズ、、

夢でそんな名前が出た気がする

何故かずっと頭から離れない。

「ミズ、、なんてどうかな」

「ミズちゃん。小沢ミズちゃんかぁ。。うん。私は好きだよ。」

「ミズちゃん。。ふふっ。私も賛成だよ。」

突然、隣のベッドのお婆さんが話しかけてきた。

顔を見合わせると何故かお婆さんは一瞬驚いた顔をしたけど、直ぐに嬉しそうな顔をして

「とても良い名前だと思うわ。ミズちゃん。」

そう言うと、お婆さんは向こうを向いた。泣いているように見えた。

1ヶ月後、退院した妻の検診に来ていた。

待合室で妻を待っていると、看護師さんが僕の元に来て封筒を一つ手渡された。

タカフミさんへ
と書かれていた。

「実は奥様の隣で入院されていた高野様が先日亡くなられまして。生前にその手紙を小沢さんのご主人様に渡して欲しいと。。あれ、でも確かご主人様のお名前はタカシ様でしたよね?」

僕も不思議に思いつつ、それでも封筒を開けたくなる気持ちを抑えきれず封を開けた。

そこには手紙と、一枚の写真が入っていた。

見るからに分かるとてつもなく昔の色褪せた写真。そこに映る2人の男女。

僕は衝撃のあまり開いた口が塞がらなかった。

男は僕と瓜二つだった。

同時に脳内に流れ込む記憶。

あるはずのない記憶。でも確かな記憶。タカフミとして生きた25年間の記憶を鮮明に思い出した。

「タカフミさんへ。この手紙を読んでいる貴方は何も覚えていないかもしれません。それでもこうして想いを綴らせていただくこと、どうぞお許しください。貴方がいなくなってもう75年の月日が経ちました。貴方と過ごした3ヶ月、貴方の思った通りに私の心から離れることはありませんでした。私に幸せになってほしい、タカフミさんのその言葉はとても嬉しく、忘れることもありませんでしたが、必ずもう一度会える、そう思えてならずに他の誰とも結ばれることなくこの歳になってしまいました。思ったよりも遅かったけれど、またこうして出会えたこと、とてもとても感謝しております。この75年間、貴方といた3ヶ月のおかげでちっとも寂しくありませんでしたよ。私の人生に意味を与えてくれてありがとう。どうかお幸せに。」

自然と涙が溢れ出た。
高野ミヨは間違いなく僕の大切な人だ。
ミヨを心の中で想いながら僕は生きていく。

妻とミズ、最愛の家族と一緒に。




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