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二度目の人生
どうして
しおりを挟むあの日から、フィンセント様とアリシアさんが一緒にいる所を度々見るようになった。周りのみんなも、「お似合いだわ」と二人のことを噂する。
そんな中、私だけが浮いた存在になっていった。
そんなある日。
私は先生に呼び出された。
「クリスティーナさん、あんまり、こういう事は言いたくないんだけど·····」
先生に呼ばれた時から、何となく嫌な予感はしていた。けれど、当たって欲しくなかった。
「最近、アリシアさんの元気が無いの。何か、知ってることはない?」
「何も、知りません」
「そう·····、最近、アリシアさん、ハンカチが盗まれたり、机の中を汚されたり、ちょっとした嫌がらせにあっているみたいなの」
「そう·····なんですか」
ええ、その事なら知っているわ。だって、皆して噂してるもの。私がやっているんじゃないかって。でも、違う。私じゃない。
「クリスティーナさん、本当の事を教えて貰える?」
この後、結局わたしは「分かりません」「私は、知りません」と、同じようなことを答え続けた。
でも、先生は私が犯人だと思っているためなのか、中々、納得してくれなかった。
結局最後は先生も疲れたのか、「今日はもう帰っていいわ」と、何やら明日も呼び出されそうな言葉でお別れした。
「はぁぁぁー」
やっと帰ってきた部屋で、だらしなくもベットに寝転がる。もう、疲れた。
フィンセント様とは、なんだか気まづくて最近あっていないし、先生には、恋敵を虐めてるのでは?と疑われるし·····。
私は、本当に何もやっていないのに·····
そんなことを考えていると、ふと、フィンセント様はこの件についてどう考えているのか気になった。
もし、これがきっかけで嫌われたら·····
また、言いようのない不安に襲われる。
フィンセント様に嫌われるのが怖い。
呆れられるのが、捨てられるのが怖い。
どうしてこんな気持ちになるのか、私はもう自分で気がついていた。
「好きにならないようにしてたんだけどなぁ」
誰もいない部屋でポツリと漏れた声は、自分でも呆れるくらい弱々しかった。
そもそも私はこのまま、クリスティーナとして生きていけるのだろうか。また、ある日いきなり、記憶がなくなったりするのだろうか。
ぐちゃぐちゃな頭に、次第に全て放り投げたくなってきた。
そう。難しいことは考えず、クリスティーナとして、自分の生きたいように生きる。やりたいようにやる。
でも本当にそれでいいのかと、自問自答する。他人の人生を奪っているようで、どうにも居心地が悪い。
そもそもフィンセント様の婚約者はクリスティーナなのだから、アリシアさんに遠慮する必要も無いはずだ。なのに、何故、私は動けないで居るのだろう。
どうして私も、フィンセント様とアリシアさんがまるで恋人になるのが決められていた様に、美しくお似合いだと思ってしまうだろう。
クリスティーナの心に少しずつ、影が出来る。
そもそも、アリシアさんを虐めている人は誰なのだろうか。
何故いじめているのか、少し、話を聞いてみるのもいいかもしれない。
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