この婚約破棄は運命です

朝比奈

文字の大きさ
25 / 26
二度目の人生

どうして

しおりを挟む


   あの日から、フィンセント様とアリシアさんが一緒にいる所を度々見るようになった。周りのみんなも、「お似合いだわ」と二人のことを噂する。

   そんな中、私だけが浮いた存在になっていった。

   そんなある日。
   私は先生に呼び出された。

「クリスティーナさん、あんまり、こういう事は言いたくないんだけど·····」

   先生に呼ばれた時から、何となく嫌な予感はしていた。けれど、当たって欲しくなかった。

「最近、アリシアさんの元気が無いの。何か、知ってることはない?」

「何も、知りません」

「そう·····、最近、アリシアさん、ハンカチが盗まれたり、机の中を汚されたり、ちょっとした嫌がらせにあっているみたいなの」

「そう·····なんですか」

   ええ、その事なら知っているわ。だって、皆して噂してるもの。私がやっているんじゃないかって。でも、違う。私じゃない。

「クリスティーナさん、本当の事を教えて貰える?」


   この後、結局わたしは「分かりません」「私は、知りません」と、同じようなことを答え続けた。

   でも、先生は私が犯人だと思っているためなのか、中々、納得してくれなかった。


   結局最後は先生も疲れたのか、「今日はもう帰っていいわ」と、何やら明日も呼び出されそうな言葉でお別れした。



「はぁぁぁー」

   やっと帰ってきた部屋で、だらしなくもベットに寝転がる。もう、疲れた。


   フィンセント様とは、なんだか気まづくて最近あっていないし、先生には、恋敵を虐めてるのでは?と疑われるし·····。

   私は、本当に何もやっていないのに·····


   そんなことを考えていると、ふと、フィンセント様はこの件についてどう考えているのか気になった。

   もし、これがきっかけで嫌われたら·····

   また、言いようのない不安に襲われる。
   フィンセント様に嫌われるのが怖い。
   呆れられるのが、捨てられるのが怖い。

   どうしてこんな気持ちになるのか、私はもう自分で気がついていた。

「好きにならないようにしてたんだけどなぁ」

   誰もいない部屋でポツリと漏れた声は、自分でも呆れるくらい弱々しかった。

   そもそも私はこのまま、クリスティーナとして生きていけるのだろうか。また、ある日いきなり、記憶がなくなったりするのだろうか。
   ぐちゃぐちゃな頭に、次第に全て放り投げたくなってきた。

   そう。難しいことは考えず、クリスティーナとして、自分の生きたいように生きる。やりたいようにやる。
   でも本当にそれでいいのかと、自問自答する。他人の人生を奪っているようで、どうにも居心地が悪い。

   そもそもフィンセント様の婚約者はクリスティーナなのだから、アリシアさんに遠慮する必要も無いはずだ。なのに、何故、私は動けないで居るのだろう。


   どうして私も、フィンセント様とアリシアさんがまるで恋人になるのが決められていた様に、美しくお似合いだと思ってしまうだろう。

   クリスティーナの心に少しずつ、影が出来る。


   そもそも、アリシアさんを虐めている人は誰なのだろうか。

   何故いじめているのか、少し、話を聞いてみるのもいいかもしれない。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

男装の騎士に心を奪われる予定の婚約者がいる私の憂鬱

恋愛
私は10歳の時にファンタジー小説のライバル令嬢だと気付いた。 婚約者の王太子殿下は男装の騎士に心を奪われ私との婚約を解消する予定だ。 前世も辛い失恋経験のある私は自信が無いから王太子から逃げたい。 だって、二人のラブラブなんて想像するのも辛いもの。 私は今世も勉強を頑張ります。だって知識は裏切らないから。 傷付くのが怖くて臆病なヒロインが、傷付く前にヒーローを避けようと頑張る物語です。 王道ありがちストーリー。ご都合主義満載。 ハッピーエンドは確実です。 ※ヒーローはヒロインを振り向かせようと一生懸命なのですが、悲しいことに避けられてしまいます。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

婚約破棄された際もらった慰謝料で田舎の土地を買い農家になった元貴族令嬢、野菜を買いにきたベジタリアン第三王子に求婚される

さくら
恋愛
婚約破棄された元伯爵令嬢クラリス。 慰謝料代わりに受け取った金で田舎の小さな土地を買い、農業を始めることに。泥にまみれて種を撒き、水をやり、必死に生きる日々。貴族の煌びやかな日々は失ったけれど、土と共に過ごす穏やかな時間が、彼女に新しい幸せをくれる――はずだった。 だがある日、畑に現れたのは野菜好きで有名な第三王子レオニール。 「この野菜は……他とは違う。僕は、あなたが欲しい」 そう言って真剣な瞳で求婚してきて!? 王妃も兄王子たちも立ちはだかる。 「身分違いの恋」なんて笑われても、二人の気持ちは揺るがない。荒れ地を畑に変えるように、愛もまた努力で実を結ぶのか――。

婚約者が番を見つけました

梨花
恋愛
 婚約者とのピクニックに出かけた主人公。でも、そこで婚約者が番を見つけて…………  2019年07月24日恋愛で38位になりました(*´▽`*)

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...