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罫線に相合傘
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「ちょっとアキ、聞いてるん?」
怒りと呆れが混ざった声色に、立浪晶たつなみあきらはハッと顔を上げた。眼前には唇を尖らせて晶を睨む、同級生で幼なじみで恋人の早見圭一はやみけいいちの姿。帰宅部で中肉中背、身長も低めの晶に対して、陸上部に所属し、ワックスで軽く整えられた黒い短髪に日焼けのあとが眩しい圭一。眉をひそめて睨む圭一の姿に、晶はまた見とれてしまう。
「アキ?」
「……あ、ごめん」
「アキが数式わからん言うからわざわざ部活休んで来たんやろ。なにのんびり寝とんねん」
「ごめんて、ケイくん」
ガラス製ローテーブルの上の教科書は、今日の授業で習ったページが開かれている。計算式の説明文には蛍光ペンで線が引いてあるが、教師に言われた通りに引いただけで晶は理解出来ていなかった。その証拠に、隣にあるルーズリーフは真っ白だ。
「明日、小テストあるんやろ?」
「うん」
「せやったら早よやろうや」
そう言われて、晶は再び教科書を眺めた。xとx²が、数字と記号に挟まれて並んでいる。中学校の数学を適当に流していたツケが今更回ってきて、晶は数学Ⅰの初期ですらつまづいていた。
「だから、そのx²は消したらあかんて。方程式やないんやから」
「2xの2はどないするん?」
「こっちが2の倍数やから、全部2で割ったら消えるやろ」
ルーズリーフの罫線に、数式が並んでいく。xとx²と消された2と、3にされた6、イコール。
「因数分解からやり直しとか、よく高校行けたなお前」
「うっさい」
「つか先週もここ、やったんちゃうん?」
「もう忘れた」
「ほんまもんのアホや……」
ニヤニヤ笑う圭一に、晶は眉を寄せて睨みつけた。圭一は逃げるように窓を見遣り、あ、と声を漏らした。
「雨や」
「……は? 嘘やろ」
「ほんまやって。カーテン閉まってて気付かんかった……うーわ、最悪」
圭一は勢いよく立ち上がると窓際に寄りカーテンを開けた。思ったより大きい音を立てて、雨粒のシャワーが窓ガラスに降る。
「ケイくん、傘は?」
「あるわけないやん。朝の天気予報は晴れやったし」
「じゃあ通り雨やなー。帰る頃には止むんちゃう?」
「なら、いいねんけど……今日チャリやから濡れてるかも。門の前に置きっぱやわ」
「帰り乗れんかったら、うちの駐車場の奥空いてるから置いてったらいいやん」
「俺に二駅分歩けってか? アキ、鬼やで」
「ケイくんなら歩けるやろ」
「アホか。てか駐車場空いてたんやったら最初から置かせろや」
「えーめんどい」
シャープペンシルをクルクル回しながら、晶はクツクツと笑った。外は通り雨にしては大粒で強く叩きつける酷さで、圭一でなくとも憂鬱になる。
「ねーケイくん」
「ん?」
机上の勉強道具一式を放り出して、晶は窓際の圭一に近寄る。圭一の首に腕を回しながら、身体を乗せた。
「……したくなっちゃった」
「はぁ!? おま、勉強はっ?」
「もういいや」
「いいって、あのなぁアキ――っんん、」
晶は圭一にのしかかると唇を重ねた。舌をねじ込み、口内を掃除するように絡めねぶった。仕掛けた晶の方が先に息を切らし、離した唇を唾液の糸が繋ぐ。
「おれ、得意科目は保健体育だけでいいわ」
晶は舌なめずりをしながら、着ていたTシャツを脱いだ。ゴクリ、と圭一の喉が鳴った。
「アキ、お前、ちょっと待てって……っ」
「嫌や」
「アホかっ、こっちはその気ないって言うてるやろ」
「おれは、したいねんもん」
「あのなぁっ」
圭一のシャツをまくりあげ、臍に舌を這わせた。ブルリと圭一が身体を震わせると、晶はニヤリと笑い、自分の指を唾液で濡らしながら圭一のパンツのベルトに手をかけた。
「外は雨やし、オカンもおらんし、数学おもんないし」
「アキ――っ!」
「べつに、したくないんやったらケイくんは動かんでいいよ、勝手にやるから」
「なんでそんな怒り気味なんやアキ。アホって言ったんは、謝るから――」
「怒ってへんよ。アホなんは分かっとるし、おれがケイくんに欲情したから、えっちしたいだけやもん」
パンツと下着を同時に下ろしながら、晶は自分の後孔に指を入れた。現れた圭一のそれは本人の言う通り入れられる状態では無かった。それを晶は口に含み、先端を舌で舐めた。
「っふ……くぅっ」
「あ、今ちょっと反応した……感じた?」
「うるさい、くすぐったいだけやし」
「そ? でも勃ってきたよ?」
顔を赤らめた圭一に晶は気を良くし、竿全体を咥えて舌で舐めまわした。段々と硬く変化していくそれを晶は自分の解した後孔に宛がった。
「ちゃんと見とってや、ケイくん。おれ、一人でも出来るんやから」
「あのなぁアキ、」
「されるばっかちゃうねんで。おれだって、ケイくんのこと、気持ちよく出来るんやもん……っ」
圭一の程よく鍛えられた腹部に両手をつくと、晶は息を吐きながらゆっくり腰を下ろした。解しが足りなかったのか、一瞬、微かな痛みを感じたものの、ほぼひと息で圭一の屹立を全て呑みこみ、晶はへへっと笑った。
「……はいった」
「アキ……」
「ケイくんは動かんでいいからね、ぜんぶ、おれがするから……」
晶はそう言うと、腰を揺らし始めた。ゆっくり浮かせて半分ほど抜いて、また腰を落として奥まで入れる。圭一の顔が少しづつ快感に歪むのを見ると、晶は自分の中も蠢くのを感じた。
「ア、キ……っ」
「な、気持ちいいやろ、ケイくん……」
「くっ、そ……お前、あとで後悔すんなや」
「せーへんよ、おれがしたいって言ったんやもん」
空気が混ざって、グチュグチュと音が漏れた。晶も段々話す余裕が無くなって、甘い吐息を零した。呼吸が荒くなり、連動するように腰を動かすスピードが上がる。
「っあ、は、あん……あぁっ」
「はっ……アキ……っ」
「あぁんっ、あ、ケイ、く……んん」
晶の汗がポタポタと圭一の腹筋に落ちた。晶自身の先端から落ちる先走りと混ざって濁った水滴が、川のように結合部へと流れていく。それを目にしただけで、晶も圭一自身を締め付けた。
「やっば……すっげー眺め」
「っあ、あ、ケイ、くん……っ」
「俺ので勝手にオナって、アキって変態やな」
「っひ!」
圭一が晶の腰を撫でるように触れた。ビクビクと晶の身体が震え、先走りがまた漏れた。
「ケイ、くんは……触ん、なって……っあ」
「あ、また締まった。やらしー」
「うっさ……だまっ……あぁっ!」
「ほんま、アキってば、いつの間にそんなえろくなったん」
「だっ、め……ってば……ぁ」
「……アキのえっち」
「っ、あぁぁああっ!!」
晶は先端から白濁を飛ばし、ガクンっ、と身体から力が抜けた。晶の放ったものに塗まみれた圭一の腹部に身体を倒し、荒く乱れた息を吐いた。
「触んなって、言ったのに……」
「アキが可愛かったからな、つい虐めたなった」
「ひど……」
「アキからしてきたんやんか。と、言うわけで」
「っえ、」
圭一は晶の身体を抱えると、繋がったままベッドに押し倒した。
「ケイ……くん?」
「言ったやろ、後悔すんなやって。責任とって貰うで」
「は? あ、いや、おれもぉ無理……」
「無理ちゃうって、行ける」
「運動部と一緒にせんとって……っあぁ!」
「今日、俺も部活休んでるし、自主トレ必要やろ?」
「そんな……ぁあっ」
晶の言葉を無視し、圭一は腰を揺らし始めた。ヒンヒン泣きじゃくる晶に、圭一は一層興奮して晶の中を穿つ。
「っや、ケイ、く、っも、やぁ……っ」
「や、やないやろ。誘ったんはアキやで」
「でも……ぁあっ」
「ほら、また勃ってきた」
「ひっ!」
「自分だけイって終わりにしようなんて、やっぱ鬼やな、アキ」
「あっ、あ、ごめん、て、なぁ、ケイ――っ!」
「あーあ、またイった。アキのえっち」
涙と汗と精液でグチャグチャの晶に、圭一は嬉しそうに笑った。もう外の天気は分からない。雨の音も雷の音も聞こえない。二人分の体重が乗ったベッドがギシギシと軋む音が、雷みたいにうるさい。
「ふ、ぅ……ケイ、くんっ」
「しゃあないな……俺がイったら、終わるから……」
イヤイヤと首を横に振る晶に圭一は苦笑して、身体を更に密着させる。晶の足が圭一の腰に巻きついた時、二人は唇を合わせた。
「んんっ、ふぅ……っ」
イク時にキスをするのは圭一の癖だ。言い方を変えれば、これで行為を終えると言う意味にもなるから、晶はなるべく顔を近付けるのを嫌がる。それでも正常位で繋がるとキスもしたくなるし、実際トロトロに溶かされている間に唇が重なっていることもしょっちゅうだ。自分の中でビクビクと圭一自身が達したことに気付いた時には、晶も自分の腹に濁った欲をまた飛ばし、そこで意識も飛ばした。
「……さいあくや」
圭一のカバンに入っていた部活のタオルで身体を拭いてもらいながら、晶はベッドから動けぬまま呟いた。意識が戻った時、外はいつの間にか暗くなっていて、雨も止んでいた。
「なにぶーたれとんの。自業自得やろ」
「……俺がやるって言うたのに」
「後悔すんなって言うたやろ」
「そんな――」
「動けなくなるくらい気持ちよかった癖に」
「ケイくんのアホ……」
圭一は勝手に晶のクローゼットからシャツと下着を出して晶に着せる。借りるで、と返事を待たずに自分も適当に引っ張り出したシャツに袖を通した。晶の服の中でも大きめのサイズを選んだが、それでも圭一には小さかった。
「アキ、俺のシャツ何枚か置いてていい?」
「は? なんで?」
「着替え無いの不便やし。うちにもアキの服とか歯ブラシとか置いとったらいいやん」
「えぇー、めんどい」
「つか、おばさんにはさっきOK貰ったし」
「……へ? は!? いや、なんで!?」
圭一の言葉に晶は腰が悲鳴をあげるのも忘れるほど勢いよく起き上がった。その身体を抱きしめながら、真ん丸に見開いたままの晶と額をくっつけて圭一は笑う。
「俺らが付き合ってんの、おばさんにも俺のオカンにも知られてんの知らんかった?」
「……へぁ?」
「流石にセックスしてることは知らないみたいやけど、アキのデレデレした顔でバレてるってさ」
「でっ、デレデレなんてしてへんよ!?」
「だから、バレバレなんやって」
圭一の言葉に、晶の顔が真っ赤に染まった。ワタワタと表情を変えて慌てる晶に、圭一はまた唇を重ねた。
「……チューで誤魔化すなや」
「だから、誤魔化すも何も、もう知られてんの」
子供のようにむくれる晶の頬を摘む。その時、部屋の外から晶の母親の声が掛かった。
「晶ー、ご飯よー! ケイくんも食べるのー?」
「はい! いただきます!」
「なんで返事すんねん!」
「俺も聞かれたやろ、ほら行くで」
「いった! ケイくん、自分で行くから! 米抱っこはやめて……っ」
圭一は晶を米俵を担ぐように抱き上げると、部屋を出て食卓へと向かった。
静かになった部屋、ローテーブルの上のルーズリーフには、晶と圭一の名前を相合傘にした落書きが消されずに残っていた。
End
怒りと呆れが混ざった声色に、立浪晶たつなみあきらはハッと顔を上げた。眼前には唇を尖らせて晶を睨む、同級生で幼なじみで恋人の早見圭一はやみけいいちの姿。帰宅部で中肉中背、身長も低めの晶に対して、陸上部に所属し、ワックスで軽く整えられた黒い短髪に日焼けのあとが眩しい圭一。眉をひそめて睨む圭一の姿に、晶はまた見とれてしまう。
「アキ?」
「……あ、ごめん」
「アキが数式わからん言うからわざわざ部活休んで来たんやろ。なにのんびり寝とんねん」
「ごめんて、ケイくん」
ガラス製ローテーブルの上の教科書は、今日の授業で習ったページが開かれている。計算式の説明文には蛍光ペンで線が引いてあるが、教師に言われた通りに引いただけで晶は理解出来ていなかった。その証拠に、隣にあるルーズリーフは真っ白だ。
「明日、小テストあるんやろ?」
「うん」
「せやったら早よやろうや」
そう言われて、晶は再び教科書を眺めた。xとx²が、数字と記号に挟まれて並んでいる。中学校の数学を適当に流していたツケが今更回ってきて、晶は数学Ⅰの初期ですらつまづいていた。
「だから、そのx²は消したらあかんて。方程式やないんやから」
「2xの2はどないするん?」
「こっちが2の倍数やから、全部2で割ったら消えるやろ」
ルーズリーフの罫線に、数式が並んでいく。xとx²と消された2と、3にされた6、イコール。
「因数分解からやり直しとか、よく高校行けたなお前」
「うっさい」
「つか先週もここ、やったんちゃうん?」
「もう忘れた」
「ほんまもんのアホや……」
ニヤニヤ笑う圭一に、晶は眉を寄せて睨みつけた。圭一は逃げるように窓を見遣り、あ、と声を漏らした。
「雨や」
「……は? 嘘やろ」
「ほんまやって。カーテン閉まってて気付かんかった……うーわ、最悪」
圭一は勢いよく立ち上がると窓際に寄りカーテンを開けた。思ったより大きい音を立てて、雨粒のシャワーが窓ガラスに降る。
「ケイくん、傘は?」
「あるわけないやん。朝の天気予報は晴れやったし」
「じゃあ通り雨やなー。帰る頃には止むんちゃう?」
「なら、いいねんけど……今日チャリやから濡れてるかも。門の前に置きっぱやわ」
「帰り乗れんかったら、うちの駐車場の奥空いてるから置いてったらいいやん」
「俺に二駅分歩けってか? アキ、鬼やで」
「ケイくんなら歩けるやろ」
「アホか。てか駐車場空いてたんやったら最初から置かせろや」
「えーめんどい」
シャープペンシルをクルクル回しながら、晶はクツクツと笑った。外は通り雨にしては大粒で強く叩きつける酷さで、圭一でなくとも憂鬱になる。
「ねーケイくん」
「ん?」
机上の勉強道具一式を放り出して、晶は窓際の圭一に近寄る。圭一の首に腕を回しながら、身体を乗せた。
「……したくなっちゃった」
「はぁ!? おま、勉強はっ?」
「もういいや」
「いいって、あのなぁアキ――っんん、」
晶は圭一にのしかかると唇を重ねた。舌をねじ込み、口内を掃除するように絡めねぶった。仕掛けた晶の方が先に息を切らし、離した唇を唾液の糸が繋ぐ。
「おれ、得意科目は保健体育だけでいいわ」
晶は舌なめずりをしながら、着ていたTシャツを脱いだ。ゴクリ、と圭一の喉が鳴った。
「アキ、お前、ちょっと待てって……っ」
「嫌や」
「アホかっ、こっちはその気ないって言うてるやろ」
「おれは、したいねんもん」
「あのなぁっ」
圭一のシャツをまくりあげ、臍に舌を這わせた。ブルリと圭一が身体を震わせると、晶はニヤリと笑い、自分の指を唾液で濡らしながら圭一のパンツのベルトに手をかけた。
「外は雨やし、オカンもおらんし、数学おもんないし」
「アキ――っ!」
「べつに、したくないんやったらケイくんは動かんでいいよ、勝手にやるから」
「なんでそんな怒り気味なんやアキ。アホって言ったんは、謝るから――」
「怒ってへんよ。アホなんは分かっとるし、おれがケイくんに欲情したから、えっちしたいだけやもん」
パンツと下着を同時に下ろしながら、晶は自分の後孔に指を入れた。現れた圭一のそれは本人の言う通り入れられる状態では無かった。それを晶は口に含み、先端を舌で舐めた。
「っふ……くぅっ」
「あ、今ちょっと反応した……感じた?」
「うるさい、くすぐったいだけやし」
「そ? でも勃ってきたよ?」
顔を赤らめた圭一に晶は気を良くし、竿全体を咥えて舌で舐めまわした。段々と硬く変化していくそれを晶は自分の解した後孔に宛がった。
「ちゃんと見とってや、ケイくん。おれ、一人でも出来るんやから」
「あのなぁアキ、」
「されるばっかちゃうねんで。おれだって、ケイくんのこと、気持ちよく出来るんやもん……っ」
圭一の程よく鍛えられた腹部に両手をつくと、晶は息を吐きながらゆっくり腰を下ろした。解しが足りなかったのか、一瞬、微かな痛みを感じたものの、ほぼひと息で圭一の屹立を全て呑みこみ、晶はへへっと笑った。
「……はいった」
「アキ……」
「ケイくんは動かんでいいからね、ぜんぶ、おれがするから……」
晶はそう言うと、腰を揺らし始めた。ゆっくり浮かせて半分ほど抜いて、また腰を落として奥まで入れる。圭一の顔が少しづつ快感に歪むのを見ると、晶は自分の中も蠢くのを感じた。
「ア、キ……っ」
「な、気持ちいいやろ、ケイくん……」
「くっ、そ……お前、あとで後悔すんなや」
「せーへんよ、おれがしたいって言ったんやもん」
空気が混ざって、グチュグチュと音が漏れた。晶も段々話す余裕が無くなって、甘い吐息を零した。呼吸が荒くなり、連動するように腰を動かすスピードが上がる。
「っあ、は、あん……あぁっ」
「はっ……アキ……っ」
「あぁんっ、あ、ケイ、く……んん」
晶の汗がポタポタと圭一の腹筋に落ちた。晶自身の先端から落ちる先走りと混ざって濁った水滴が、川のように結合部へと流れていく。それを目にしただけで、晶も圭一自身を締め付けた。
「やっば……すっげー眺め」
「っあ、あ、ケイ、くん……っ」
「俺ので勝手にオナって、アキって変態やな」
「っひ!」
圭一が晶の腰を撫でるように触れた。ビクビクと晶の身体が震え、先走りがまた漏れた。
「ケイ、くんは……触ん、なって……っあ」
「あ、また締まった。やらしー」
「うっさ……だまっ……あぁっ!」
「ほんま、アキってば、いつの間にそんなえろくなったん」
「だっ、め……ってば……ぁ」
「……アキのえっち」
「っ、あぁぁああっ!!」
晶は先端から白濁を飛ばし、ガクンっ、と身体から力が抜けた。晶の放ったものに塗まみれた圭一の腹部に身体を倒し、荒く乱れた息を吐いた。
「触んなって、言ったのに……」
「アキが可愛かったからな、つい虐めたなった」
「ひど……」
「アキからしてきたんやんか。と、言うわけで」
「っえ、」
圭一は晶の身体を抱えると、繋がったままベッドに押し倒した。
「ケイ……くん?」
「言ったやろ、後悔すんなやって。責任とって貰うで」
「は? あ、いや、おれもぉ無理……」
「無理ちゃうって、行ける」
「運動部と一緒にせんとって……っあぁ!」
「今日、俺も部活休んでるし、自主トレ必要やろ?」
「そんな……ぁあっ」
晶の言葉を無視し、圭一は腰を揺らし始めた。ヒンヒン泣きじゃくる晶に、圭一は一層興奮して晶の中を穿つ。
「っや、ケイ、く、っも、やぁ……っ」
「や、やないやろ。誘ったんはアキやで」
「でも……ぁあっ」
「ほら、また勃ってきた」
「ひっ!」
「自分だけイって終わりにしようなんて、やっぱ鬼やな、アキ」
「あっ、あ、ごめん、て、なぁ、ケイ――っ!」
「あーあ、またイった。アキのえっち」
涙と汗と精液でグチャグチャの晶に、圭一は嬉しそうに笑った。もう外の天気は分からない。雨の音も雷の音も聞こえない。二人分の体重が乗ったベッドがギシギシと軋む音が、雷みたいにうるさい。
「ふ、ぅ……ケイ、くんっ」
「しゃあないな……俺がイったら、終わるから……」
イヤイヤと首を横に振る晶に圭一は苦笑して、身体を更に密着させる。晶の足が圭一の腰に巻きついた時、二人は唇を合わせた。
「んんっ、ふぅ……っ」
イク時にキスをするのは圭一の癖だ。言い方を変えれば、これで行為を終えると言う意味にもなるから、晶はなるべく顔を近付けるのを嫌がる。それでも正常位で繋がるとキスもしたくなるし、実際トロトロに溶かされている間に唇が重なっていることもしょっちゅうだ。自分の中でビクビクと圭一自身が達したことに気付いた時には、晶も自分の腹に濁った欲をまた飛ばし、そこで意識も飛ばした。
「……さいあくや」
圭一のカバンに入っていた部活のタオルで身体を拭いてもらいながら、晶はベッドから動けぬまま呟いた。意識が戻った時、外はいつの間にか暗くなっていて、雨も止んでいた。
「なにぶーたれとんの。自業自得やろ」
「……俺がやるって言うたのに」
「後悔すんなって言うたやろ」
「そんな――」
「動けなくなるくらい気持ちよかった癖に」
「ケイくんのアホ……」
圭一は勝手に晶のクローゼットからシャツと下着を出して晶に着せる。借りるで、と返事を待たずに自分も適当に引っ張り出したシャツに袖を通した。晶の服の中でも大きめのサイズを選んだが、それでも圭一には小さかった。
「アキ、俺のシャツ何枚か置いてていい?」
「は? なんで?」
「着替え無いの不便やし。うちにもアキの服とか歯ブラシとか置いとったらいいやん」
「えぇー、めんどい」
「つか、おばさんにはさっきOK貰ったし」
「……へ? は!? いや、なんで!?」
圭一の言葉に晶は腰が悲鳴をあげるのも忘れるほど勢いよく起き上がった。その身体を抱きしめながら、真ん丸に見開いたままの晶と額をくっつけて圭一は笑う。
「俺らが付き合ってんの、おばさんにも俺のオカンにも知られてんの知らんかった?」
「……へぁ?」
「流石にセックスしてることは知らないみたいやけど、アキのデレデレした顔でバレてるってさ」
「でっ、デレデレなんてしてへんよ!?」
「だから、バレバレなんやって」
圭一の言葉に、晶の顔が真っ赤に染まった。ワタワタと表情を変えて慌てる晶に、圭一はまた唇を重ねた。
「……チューで誤魔化すなや」
「だから、誤魔化すも何も、もう知られてんの」
子供のようにむくれる晶の頬を摘む。その時、部屋の外から晶の母親の声が掛かった。
「晶ー、ご飯よー! ケイくんも食べるのー?」
「はい! いただきます!」
「なんで返事すんねん!」
「俺も聞かれたやろ、ほら行くで」
「いった! ケイくん、自分で行くから! 米抱っこはやめて……っ」
圭一は晶を米俵を担ぐように抱き上げると、部屋を出て食卓へと向かった。
静かになった部屋、ローテーブルの上のルーズリーフには、晶と圭一の名前を相合傘にした落書きが消されずに残っていた。
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