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肝試し
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小学5年の時に、私の小学校では合宿がありました。
県内にある、山奥の青少年の家にて、一泊二日で、川釣りや、飯盒炊爨やら、様々な事をします。
そのうちの一つに、夜20時頃だったでしょうか、肝試しがありました。
三人1組で、決められたコースを回る。それだけの事だったのですが、矢張り怖がりな子は居て、希望するなら肝試しに出なくてもいい、と言う物でした。
私には全く霊感は無かったのですが、霊感の強いと自称する友達Tは、「…いる。…やばい…」と極度に怖がり、肝試しには参加しないようでした。当時の私は、霊なんてとても信じておらず、Tはただ怖いのを、霊がいると言うことにして逃げたのだと考えました。とは言え、正直私もかなりビビっていました。
10月の山奥、夜の外は、かなり冷えていました。山奥なので、もちろん周りにコンビニなんてありませんし、街灯も殆どなく、とても暗かったのを覚えています。
ふと上を見ると、星が今まで見た事ないくらい綺麗に見えました。そんな感動も束の間、三人組に分かれろと指示がありました。私は仲の良かった友人Aと、友人Bとのグループになりました。その後、1グループに一枚、肝試しのコースが書かれた地図が配られ、我々のグループではAが持っておく事になりました。
十数分後、私たちのグループが出発する順番になり、私は恐る恐る歩を進めました。AとBは、そこまで怖がっている様子はなく、寧ろこの肝試しを楽しんでいるように見えました。田舎の山は思ったより静かじゃなくて、鳥や生き物の声が煩いんだなぁ、なんて話してました。
初めは三人で楽しく話して怖さを紛らわせていたのですが、私はちょっとした気掛かりがありました。
地図を持っているはずのAが、地図を見ていない、どころか地図を持っていないのです。尤も迷っているような素振りはなく、寧ろ地図も見ずに、全く迷うことなく歩を進めるのです。それが私をより不可解な気持ちにさせました。私がそれに気づいた辺りから、会話は急にパタリと消えてしまいました。
重い空気の中、私はあることに気づき、思わず口に出しました。
「急に鳥の鳴き声も聞こえなくなったね、」
AもBも、聞こえなかったかのように振り返らずに、私の前を歩きます。奇妙なほどに静かになった山奥で、私の靴音だけが響きます。
しかし、ーーーAと Bの靴音は聞こえないのです。それに気付いた時、泣きそうになりました。嫌な考えが頭を巡ります。汗が噴き出ました。
ふと顔を上げると、AとBの姿が見当たらなくなってました。一瞬だけ立ち竦み、すぐに振り返って全速力で来た道を戻りました。ほとんど泣いていたと思います。息が切れようが転けようが、とにかくここから逃げたいと、皆の居た所へ走りました。
そんなに長く走ったわけでは無かったと思います。どうにか先生たちのいた青少年の家の前の広場に戻ることができました。
まだ他の生徒は数組しか帰ってないようです。私はあったことをそのまま先生にパニックになりながら、そして、泣きながら伝えたのですが、先生はどうせAとBがちょっと悪戯したんだろうとまともに取り合ってくれませんでした。
が、それから直ぐに、Aが私のように全力で泣きながら戻ってきたのです。Aは私を見てギョッとしていました。おそらく私もAと同じ顔をしていたことでしょう。それから数分後、Bも同じように取り乱して戻ってきました。
AもBも、私と同じ事を言っているのです。泣きながら。これには先生もギョッとしていました。
話はこれで終わりです。未だにあの時、私たちが体験したものは何だったのか、今となっては知る術も無いのですが、もし私があの時、Aと Bの異変に気付かず、そのまま進んでいたらと思うと、怖くてたまりません。
県内にある、山奥の青少年の家にて、一泊二日で、川釣りや、飯盒炊爨やら、様々な事をします。
そのうちの一つに、夜20時頃だったでしょうか、肝試しがありました。
三人1組で、決められたコースを回る。それだけの事だったのですが、矢張り怖がりな子は居て、希望するなら肝試しに出なくてもいい、と言う物でした。
私には全く霊感は無かったのですが、霊感の強いと自称する友達Tは、「…いる。…やばい…」と極度に怖がり、肝試しには参加しないようでした。当時の私は、霊なんてとても信じておらず、Tはただ怖いのを、霊がいると言うことにして逃げたのだと考えました。とは言え、正直私もかなりビビっていました。
10月の山奥、夜の外は、かなり冷えていました。山奥なので、もちろん周りにコンビニなんてありませんし、街灯も殆どなく、とても暗かったのを覚えています。
ふと上を見ると、星が今まで見た事ないくらい綺麗に見えました。そんな感動も束の間、三人組に分かれろと指示がありました。私は仲の良かった友人Aと、友人Bとのグループになりました。その後、1グループに一枚、肝試しのコースが書かれた地図が配られ、我々のグループではAが持っておく事になりました。
十数分後、私たちのグループが出発する順番になり、私は恐る恐る歩を進めました。AとBは、そこまで怖がっている様子はなく、寧ろこの肝試しを楽しんでいるように見えました。田舎の山は思ったより静かじゃなくて、鳥や生き物の声が煩いんだなぁ、なんて話してました。
初めは三人で楽しく話して怖さを紛らわせていたのですが、私はちょっとした気掛かりがありました。
地図を持っているはずのAが、地図を見ていない、どころか地図を持っていないのです。尤も迷っているような素振りはなく、寧ろ地図も見ずに、全く迷うことなく歩を進めるのです。それが私をより不可解な気持ちにさせました。私がそれに気づいた辺りから、会話は急にパタリと消えてしまいました。
重い空気の中、私はあることに気づき、思わず口に出しました。
「急に鳥の鳴き声も聞こえなくなったね、」
AもBも、聞こえなかったかのように振り返らずに、私の前を歩きます。奇妙なほどに静かになった山奥で、私の靴音だけが響きます。
しかし、ーーーAと Bの靴音は聞こえないのです。それに気付いた時、泣きそうになりました。嫌な考えが頭を巡ります。汗が噴き出ました。
ふと顔を上げると、AとBの姿が見当たらなくなってました。一瞬だけ立ち竦み、すぐに振り返って全速力で来た道を戻りました。ほとんど泣いていたと思います。息が切れようが転けようが、とにかくここから逃げたいと、皆の居た所へ走りました。
そんなに長く走ったわけでは無かったと思います。どうにか先生たちのいた青少年の家の前の広場に戻ることができました。
まだ他の生徒は数組しか帰ってないようです。私はあったことをそのまま先生にパニックになりながら、そして、泣きながら伝えたのですが、先生はどうせAとBがちょっと悪戯したんだろうとまともに取り合ってくれませんでした。
が、それから直ぐに、Aが私のように全力で泣きながら戻ってきたのです。Aは私を見てギョッとしていました。おそらく私もAと同じ顔をしていたことでしょう。それから数分後、Bも同じように取り乱して戻ってきました。
AもBも、私と同じ事を言っているのです。泣きながら。これには先生もギョッとしていました。
話はこれで終わりです。未だにあの時、私たちが体験したものは何だったのか、今となっては知る術も無いのですが、もし私があの時、Aと Bの異変に気付かず、そのまま進んでいたらと思うと、怖くてたまりません。
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