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田舎の夢
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はじめまして。まずは簡単に自己紹介をさせて下さい。
ーーー今現在の僕は医学部の4年生で、精神科医の教授のゼミにいます。
といっても僕は、精神医学に特段、興味があるというわけではありません。そのゼミの教授が研究しているテーマについて、とても興味があったのです。
そのテーマこそが「夢」です。勿論、『将来の夢』の「夢」ではなくて、眠っている間に見る「夢」の方です。うちのゼミの教授は、この「夢」、特に「悪夢」と、精神医学分野との関係を研究しているわけです。
何故僕が「夢」について、強い関心があったのか、その話をここでは書こうと思います。
少なくとも僕自身にとってはかなり怖い夢でした。いや、「夢でした」と、過去形にすべきではないかもしれません。
この話は既に友人や、上に挙げたゼミの教授にも話しているので、身バレを防ぐためにも、念には念を、と一部脚色しています。
鮮明に覚えています。
僕の祖父の家は、僕の家から車で5時間ほど、ある県の本当に端っこにある、とてつもない田舎でした。海と川と山と家しかない、港町です。尤も、駄菓子屋や神社はありました。しかし、今でも一番近いコンビニやスーパーへは、歩いたら1時間や2時間では済まないような気がします。祖父の家も含めて、家は木造の一軒家ばかりです。所謂昔の家、と言えば分かりやすいでしょうか。その地域の人で、自分と同じか、自分よりも歳が下の子供を見たことはありません。おじいさんおばあさんばかりです。とにかく、とんでもない田舎です。
幼い頃から、その祖父の家に泊まると、必ず見る夢がありました。誰もいない祖父の家のある田舎で、誰かわからないのですが、確かに誰かに追いかけられるという夢です。追いかけてくる者が、知り合いなのか、はたまたそうでないのか、そもそも人であるかも全くわからないのですが、とにかく夢の中で僕は息を切らして必死に逃げるのです。
そして、そうしているうちにハッと目が覚めるのです。冬休み中の寒い朝であっても、目が覚めると決まって寝汗でびっしょりでした。
しかし、忘れもしません。高校2年になった時です。
春休みに祖父の家に行っていました。春でしたが珍しく、一日中、霧雨が止まない日でした。気がつくと、傘も刺さずに霧雨の中、誰もいない祖父の家の前で一人で突っ立ってました。田舎とは言え、本当に人の気配が無さすぎたので、そして言い得ぬ不気味な空気で、すぐにいつもの夢だと分かりました。しかし、その日はいつも通りではありませんでした。
振り向くと、その「何か」がはっきりと目に映ってしまったのです。
思わず「ヒッ」と声が漏れました。
顔は歪み、右目は異常に大きく、左目は潰れた、口の裂けた長髪の化け物が、確かに襲ってきたのです。
何とか逃げようとした。いつにも増して必死に走りました。古い木造の一軒家が並んだ道を、重い足を何とか上げて走りました。何度も振り返りながら、追ってくる「何か」からただ逃げました。家のある道から車通りのない大通りに出ると右手に神社があります。神社の中なら大丈夫かもしれない。そう考えて、神社の階段を登り始めました。が、やはり足が重いのです。疲れと怖さとが混ざって、もう息はぜぇぜぇに切れていました。
普段ならこの辺で目が覚めるのですが、今日はそれもないのです。
そして、もう数段登ったところで、恐る恐る振り返りました。視界には、ただ神社の階段と、大通りが映ります。「何か」の姿はありません。
良かった。何とか逃げ切れたようです。矢張り神社なら大丈夫だったのです。良かった。本当に。
切れた息を整えようと、ゆっくりまた前を向きます。取り敢えず階段を全て登って神社に入ろう。そう思って完全に前を向いて目を開きました。
目の前には、顔が歪み、右目を見開き、避けた口で笑ってる様に見えるとんでもない化け物がいます。息が止まりました。比喩ではなく、本当に息をする事を忘れていました。
もはや脚はガクガクと竦んで、逃げることさえできませんでした。笑う「何か」に捕まって馬乗りにされた。首をぐっと捕まれ、力を入れられました。なんとかクビを掴んだ手を掴み離そうとしますが、首を絞める力を強められます。怖いとかしんどいとか辛いとか、そんなもんじゃありませんでした。
「何か」は奇妙に、その裂けた口の口角を上げて気持ち悪く笑って言いました。
「やっと会えたね…」
怖いなんていう言葉では表せない程の恐怖に支配されました。
目の前の「何か」に、どうにかされてしまう。そんなことが頭をよぎります。
遠のいてゆく意識の中で、でも確かに「何か」は、「次は…5年後だね」とはっきりと言った気がしました。
朝起きると、首に嫌な温もりがしっかりと残っていました。
高校2年のその日以降、僕は祖父の家にまだ行っていません。夢の事も勿論ですが、受験や離れた大学へ進学したことが主な理由となります。
そして、今回この話を書いたのは今年でそれからちょうど5年目になるから、というわけです。
正直どうなるのか、本当に分からないのですが、今から怖くて堪りません。
ーーー今現在の僕は医学部の4年生で、精神科医の教授のゼミにいます。
といっても僕は、精神医学に特段、興味があるというわけではありません。そのゼミの教授が研究しているテーマについて、とても興味があったのです。
そのテーマこそが「夢」です。勿論、『将来の夢』の「夢」ではなくて、眠っている間に見る「夢」の方です。うちのゼミの教授は、この「夢」、特に「悪夢」と、精神医学分野との関係を研究しているわけです。
何故僕が「夢」について、強い関心があったのか、その話をここでは書こうと思います。
少なくとも僕自身にとってはかなり怖い夢でした。いや、「夢でした」と、過去形にすべきではないかもしれません。
この話は既に友人や、上に挙げたゼミの教授にも話しているので、身バレを防ぐためにも、念には念を、と一部脚色しています。
鮮明に覚えています。
僕の祖父の家は、僕の家から車で5時間ほど、ある県の本当に端っこにある、とてつもない田舎でした。海と川と山と家しかない、港町です。尤も、駄菓子屋や神社はありました。しかし、今でも一番近いコンビニやスーパーへは、歩いたら1時間や2時間では済まないような気がします。祖父の家も含めて、家は木造の一軒家ばかりです。所謂昔の家、と言えば分かりやすいでしょうか。その地域の人で、自分と同じか、自分よりも歳が下の子供を見たことはありません。おじいさんおばあさんばかりです。とにかく、とんでもない田舎です。
幼い頃から、その祖父の家に泊まると、必ず見る夢がありました。誰もいない祖父の家のある田舎で、誰かわからないのですが、確かに誰かに追いかけられるという夢です。追いかけてくる者が、知り合いなのか、はたまたそうでないのか、そもそも人であるかも全くわからないのですが、とにかく夢の中で僕は息を切らして必死に逃げるのです。
そして、そうしているうちにハッと目が覚めるのです。冬休み中の寒い朝であっても、目が覚めると決まって寝汗でびっしょりでした。
しかし、忘れもしません。高校2年になった時です。
春休みに祖父の家に行っていました。春でしたが珍しく、一日中、霧雨が止まない日でした。気がつくと、傘も刺さずに霧雨の中、誰もいない祖父の家の前で一人で突っ立ってました。田舎とは言え、本当に人の気配が無さすぎたので、そして言い得ぬ不気味な空気で、すぐにいつもの夢だと分かりました。しかし、その日はいつも通りではありませんでした。
振り向くと、その「何か」がはっきりと目に映ってしまったのです。
思わず「ヒッ」と声が漏れました。
顔は歪み、右目は異常に大きく、左目は潰れた、口の裂けた長髪の化け物が、確かに襲ってきたのです。
何とか逃げようとした。いつにも増して必死に走りました。古い木造の一軒家が並んだ道を、重い足を何とか上げて走りました。何度も振り返りながら、追ってくる「何か」からただ逃げました。家のある道から車通りのない大通りに出ると右手に神社があります。神社の中なら大丈夫かもしれない。そう考えて、神社の階段を登り始めました。が、やはり足が重いのです。疲れと怖さとが混ざって、もう息はぜぇぜぇに切れていました。
普段ならこの辺で目が覚めるのですが、今日はそれもないのです。
そして、もう数段登ったところで、恐る恐る振り返りました。視界には、ただ神社の階段と、大通りが映ります。「何か」の姿はありません。
良かった。何とか逃げ切れたようです。矢張り神社なら大丈夫だったのです。良かった。本当に。
切れた息を整えようと、ゆっくりまた前を向きます。取り敢えず階段を全て登って神社に入ろう。そう思って完全に前を向いて目を開きました。
目の前には、顔が歪み、右目を見開き、避けた口で笑ってる様に見えるとんでもない化け物がいます。息が止まりました。比喩ではなく、本当に息をする事を忘れていました。
もはや脚はガクガクと竦んで、逃げることさえできませんでした。笑う「何か」に捕まって馬乗りにされた。首をぐっと捕まれ、力を入れられました。なんとかクビを掴んだ手を掴み離そうとしますが、首を絞める力を強められます。怖いとかしんどいとか辛いとか、そんなもんじゃありませんでした。
「何か」は奇妙に、その裂けた口の口角を上げて気持ち悪く笑って言いました。
「やっと会えたね…」
怖いなんていう言葉では表せない程の恐怖に支配されました。
目の前の「何か」に、どうにかされてしまう。そんなことが頭をよぎります。
遠のいてゆく意識の中で、でも確かに「何か」は、「次は…5年後だね」とはっきりと言った気がしました。
朝起きると、首に嫌な温もりがしっかりと残っていました。
高校2年のその日以降、僕は祖父の家にまだ行っていません。夢の事も勿論ですが、受験や離れた大学へ進学したことが主な理由となります。
そして、今回この話を書いたのは今年でそれからちょうど5年目になるから、というわけです。
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