禁断の扉を開けたのは!?

秋元智也

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記憶の欠片

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翌朝、相沢が顔を洗い戻ってくると遼が目を覚ましていた。
「遼。僕が分かるか?」
直ぐ様近寄ると手を握りしめた。
ビクッと震えたがすぐに相沢の方を見てきた。
「あっ・・・兄貴・・・?どうして、ここに?」
周りを見回してから自身を見て動かせないギブスの巻かれた右手を眺めるとため息をついた。
「生きてたんだ・・・」
小声で呟いた一言は相沢にも分かる感情だった。
「これからは僕と暮らそう。もう、辛いことなんてしなくていい。何もやりたくないことなんてすることないんだ!」
一気に捲し立てると遼を抱き締めた。
「・・・兄貴、ごめん。俺はー・・・」
話し出そうとしたところで綾音と名武が病室に入ってきた。
「悪いんだけど、そう言うわけにはいかないのよ?遼は渡さない。兄弟で会うのは構わないけど連れていかれるのは困るのよ。もし、私の邪魔をするようなら貴史くんでも容赦はしないわ。」
「なっ、始めっからそういうつもりだったんじゃないか!僕にしても弟にしても、君にはただの駒でしかないんだろう?愛してるだって?どの口が言ってるんだ!君達はそうやって全て自分達の思い通りにしようとしているじゃないか?遼は返してもらう!!」
相沢はポケットからナイフを出すと振り上げた。
勿論名武に取り押さえられ床に押さえつけられた。
見ていた遼は目を伏せ今にも泣き出しそうな目をしていた。
「遼、待っていてくれ。絶対に助けるから!」
「仕方ないわね。名武、暫く閉じ込めておいて?」
「はい。」
「手荒なことはしないでね?」
「わかっております。」
綾音に命じられるまま腕を押さえ込まれたまま連れていかれようとしていた。
「待って、待ってくれよ。少しだけ話がしたい・・・」
遼が声を上げた。
綾音もそれに従うように相沢を離すと病室の外に出てくれた。
「10分。それだけよ?」
「分かった・・・」
答える遼の頬を撫でるとそのまま名武を連れてドアを閉めた。
病室に二人っきりになると相沢は遼の横に腰かけた。
「お兄ちゃんと行こう。抜け出すんだ!もう、酷いことなんかさせないからっ」
説得するために遼を覗き込むと微笑んで唯一動く左手を伸ばしてきた。
相沢は咄嗟に握り返すと頭のなかに映像がフラッシュバックしてきた。
母親に殴られるところやその男に何度も踏みつけられたりベランダに放置されて凍えそうになったり。
学校での虐めで屋上から飛び降りたりである。
「なっ・・・」
絶句すると、これでもかってくらいに映像は流れ込んでくる。
学校での強引な先生達によるレイプや綾音に抱かれるシーンもまざる。
そして見覚えのある男。七海とのシーンでは心が暖かくなってきた。
そしていきなり画面は切り替わり揺れる船のなかで幾人かの男達に替わるがわる凌辱されていた。
それから意識は靄がかかったようになり七海の悲しそうな顔が何度もフラッシュバックし、心が締め付けられるように痛んだ。
今度は吉野医師が映り必死に説得していた。
真剣な顔つきで遼の生活を否定した。
相沢は息を飲む暇もなく映像を見せられ戸惑っていた。
すると今度はこの前あった時の映像が映り遼事を見ても不思議と首を傾げる相沢がいた。
その時はきづいてあげられなかったのだ。
必死でその場を離れ鼓動が早まった。
そして例の事件が起こる。
無理矢理連れてこられると縛られ映像が大きくぶれる。
ひび割れたガラス越しに見ているようだった。
幾度も悲鳴を上げるが誰も辞めようとしない。
彼の心はピシッピシッ、と壊れるような音をあげていた。
見ている相沢にまで痛みや混濁した思考が伝わってくるみたいだった。
すると真っ暗な闇の中へと落ちていく。
そこで手が離れ現実に戻された気がした。
「今のは・・・いったい。」
「兄貴にはどう見えた?」
遼の聞いていることが分からなかった。
どうして・・・さっき見たのは何だったのかとか、聞きたいことは山ほどあるがまずはここを逃げ出さなくてはどうしようもないのだ。
「まずはっ・・・」
「逃げない・・・逃げれないよ。兄貴には着いていけない。それが答えだから。」
「どうして?何でそんな事・・・頼りないかも知れないけどそれでもっ!」
遼はただ首を振るとまっすぐに相沢を見つめた。
認めることが出来ずに相沢は崩れるように床に座り込んだ。
「こんなところにいたらいつか壊れる。いや、今だってもう・・・」
「それでも、逃げないって決めたからさ。前に進まないと。」
何かを決意した目でこれ以上の言葉を封じた。
時間がきたのか綾音達が入ってくると相沢は強制的に連れ出された。
最後に遼が呼び止めたが、そのまま病室を後にしたので聞こえてはいなかった。
「兄貴・・・・・・ありがと。」
残った綾音はすまなさそうに見下ろしてきたが遼はそれを笑って誤魔化した。
「また、会えるし大丈夫だって!・・・会えて嬉しかったんだ。」
遼が呟いた言葉は今の本音だった。
綾音の心にちゃんと伝わっていてぎゅっと抱き締めるとキスを交わした。
角度を変えて何度も、何度も。
久しぶりのキスに飢えていたかのように貪った。
刺激的に求めあい、お互いを感じていた。
病室の外では吉野が残念そうに相沢を見送り外に漏れる声を聞いていた。
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