Summer Days

秋元智也

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3話 運命

昼休み、屋上へと行くといつものように先輩が手を
振っていた。

「なになに?何かあったの?」
「………」
「話ならいくらでも聞くよ?」
「放課後、先輩は何してます?」
「放課後?家に帰ってるかな~どうして?」
「話……聞いてもらってもいいですか?」
「うん、いいよ。でも、放課後なら空き教室なんて
 どう?先生も見回りに来ない教室知ってるんだ~」

悪戯っぽい笑みを浮かべるとぽんぽんと頭を撫でて
きた。

先輩はよく新の頭撫でる癖があった。
悪い気はしないが、ちょっと距離が近い気がする。

「そういえば、先輩の名前って……」
「ほら、新!急いで食べないと次は移動教室じゃな 
 いの?」
「あ、そうだった」

ここで秘密の友達が出来たようで、気が楽になった
気がした。

でも、先輩はどこか寂しそうな気がする。
こんなに明るい人なのに……、誰とでも話せて、友人
も多そうなのに、どうしてこの屋上に一人でいたのか
とか、今は聞けずにいたのだった。

「ほら、鐘鳴ちゃうよ?」
「先輩も教室に急がなくていいんですか?」
「ん?僕はいいの~、近いから……」



授業も終わり、放課後。
屋上へと行くと、すでに先輩が待っていたのだった。

「行こうか!」
「うん……」

今は使われて居ない理科室だった。
鍵もかかって居ないし、薬品もない。
ただの物置きとして使われる以外は人が来ないのだ
という。

「すごい埃じゃん……」
「ははっ……でも、落ち着いて話せるだろ?」

椅子も机もあるし、誰も来ない場所だった。

「俺さ……佳織の事が……」
「あの絵のモデルの子?」
「うん…そう。幼馴染みなんだ…」
「そっかぁ~、あんなにいっぱい描いて貰えて羨ま
 しいな~」
「羨ましい?」
「うん。だって~じっくり見て貰えた証拠じゃん?
 僕もそんな風に大好きだ~って視線で見られたい
 な~」

まさか先輩の口からそんな言葉が出るとは思わなか
った。
誰にでも、好かれそうなのに……。

「先輩は好きな子居ないんですか?」
「ん~~~いるよ~」
「だったら、告白すればいいじゃないですか!」
「そうだね……でも、別の子と付き合っちゃったんだ
 よね~、僕は告白すらできなかったってわけ!」

笑いながら話す先輩が泣いているように見えた。

新は咄嗟に先輩を抱きしめると、力を込める。

「泣かないでください。俺も、失恋したばかりなんで」
「でも、告白してないんでしょ?」
「する前に終わりました。他の人に先越されたんです」
「……そっか……」

少ししんみりとすると、先輩がいきなり口を開いた。

「僕の初恋はね~男だったんだ、親友でいつも一緒で
 ……それなのに……いきなり彼女作るんだよ?酷いよ
 ね~、何も言えないじゃん」

悔しかった。
もっと早く行動に移していれば……あるいは。
移して居たとしても、未来は変わらないかもしれない。
それでも、後悔が残る事はないかもしれない。

「先輩の絵……俺が描きましょうか?」
「え!いいのっ!嬉しいっ!」

ぱぁ~っと花が咲くような笑顔を見ると、一瞬ドキッ
としてしまった。




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