君は死なせない

秋元智也

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6話

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最近クラスにも馴染んできた上田綾に安心した反面、少し寂
しく思えた。

クラスに馴染めばきっと雅人ととのは距離を取るようになる
だろう。
いつだってそうだ。

どんなに足掻いても、雅人の周りで起きる怪奇現象を見た人
は側から離れていった。
きっと今回も……。

「霧島くん、次体育だって、早く着替えないと遅れるよ?」

「あぁ……そうだった……」

言われて席を立った。
教えてくれたい上田がじっとこちらを見ているに気づくと自
然と背を向けてしまった。

こんな自分が一番嫌だった。
もっと仲良くなりたい。
もっと一緒に話したいし、帰りだって一緒に……。

我儘かもしれないけど、雅人にだってそう言う感情があるの
だと改めて気付かされた気がした。

「霧島ってさ~人付き合い苦手なのか?」

「えっ……それは………」

「嫌じゃなかったらさ~昼一緒に食べようぜ?」

「うん」

それでも、上田は話しかけてくれる。
もしかしたら……期待してしまう。
上田となら、きっといい関係が築けるのではないだろうか?
…と。

夏になると体育の授業にプールが入ってくる。
泳げないわけではないが、海パン一枚になるのがどうしても苦
手だった。

「あれ?霧島も見学?」

「あぁ、そうだけど……あれ?上田も?」

「う…うん。ちょっと水が苦手で……」

そう言う曖昧な言葉を並べていがた、雅人には分かる。
それは嘘で、他に入りたくない理由があるのだろうと察した。
それ以上、深入りしても結局いい事などない。
それを分かっているだけに、雅人は気になっても追求はしなか
った。

「霧島ってさ~、俺に興味無かったりする?」

「えっ……別にそう言うわけじゃ、ないけど…」

「そっか~、なんか霧島って俺の事避けてない?違うか、なん
 か、人自体を避けてるって気がするんだよね~」

ドキリッと鼓動が高鳴る。
隠していたつもりだった事を見抜かれた気がしたからだった。

「僕は……何があっても………危ないめにあっても大丈夫だから」

「ん?」

首を傾げる上田に、笑いながら話した。
今はプールの授業中だ。

みんな自分の事で精一杯で、木陰で座っている人の事など気に
もかけていない。
それが返って楽だった。

「僕の周りにいると、代わりに怪我をするかもしれないんだ…」

「だから人と距離を置くの?」

「…………うん」

「なら、俺には距離を取らないでよ?俺は大丈夫だから。簡単に
 は怪我しないし、丈夫だからさっ!それに……俺ら親友だろ?」

初めて寄ってきてくれた友人が上田でよかったと思う。

「ありがとう……」

にっこり笑った顔がやっぱりかっこいいと思ってしまう。
まるで昔いた友人のようだと心のどこかで考えてしまっていた。

「そろそろ授業終わりだね!俺らも行こう~」

着替えの時間にチラリと見える背中には大きな傷があるのが見
えてしまった。
怪我なんてしない?

いやいや、こんな大怪我したことがある人が言う台詞ではない。

雅人の視線を感じたのか、上田が振り向いた。
多分、古傷に気づいたのかと苦笑いを浮かべていた。

雅人は荷物を持つと逃げ出してしまった。
やっぱり、自分の側にいてはいけない。

だって………いつどうなるかわからないじゃないか!
母さんだって、あんなに優しい母さんだって、僕を殺そうとしたの
だから……。
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