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23話
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その日のうちに、事態は急変したのだった。
家で父親の死体が発見されたのだ。
警察の見聞があるのか、一番最後に会ったのは秘書だと
いう事実が判明して、家の方では騒然としていた。
しかし、確たる証拠もなく、死亡時間はちょうど秘書が
家から出て行った時間と重なる。
その間、誰も出入りしていない。
おかしな事ばかりだった。
それ以外にもおかしな点はあった。
死体がどうやってできたか…!
だった。
四肢が無惨に反対方向へと無理矢理曲げられている事など
からしてよっぽどの怪力でしか成せない事だった。
それを容易く、しかも無抵抗な人間にやってのけたのだ。
並の人間では不可能とされた。
抵抗した形跡すらないのだった。
唯一出来そうだと思われた息子は病室で眠っていた。
もう一人は刑務所の中。
父親の会社の経営は全て雅人が引き継ぐ事になってしまっ
たのだった。
いきなりの事態に会社役員も困惑していた。
まだ学生だし、経営に携われるような人物なのか?
兄が犯罪を犯したせいで、弟は大丈夫なのか?
最初はそればかり懸念されていた。
「雅人さん、今日は学校後に経営について学んでもらい
ます。それがお父さんの悲願だったはずです」
「分かった…」
黙って、従う雅人に少し同情を禁じ得ないが、それでも
友人など作って遊ばせている時間などない。
早く会社を建て直してもらわねば困るのだ。
他殺の線で捜査が進んではいるが、犯人らしき人物は浮
かんでこない。
ライバル会社まで、捜査の手が伸びたらしいが結局はア
リバイ的にも不可能とされていた。
図らずとも、雅人は飲み込みは早い。
頭も悪くはない。
会社の運営も、徐々に覚えていくだろう。
下がった株価も、徐々に落ち着きを取り戻していく。
しかし、最近雅人のそばをうろつく人間がいた。
あの時病室であった青年だった。
「家まできてもらって悪いのですが、雅人さんは忙しいん
です、お引き取りください」
「友人だって言ってるだろ?おい!霧島~~~!」
大声で叫ぶが、雅人は振り向かず家に入って行った。
行き帰りは秘書が迎えに来ている。
遅いとすぐに電話して、早く帰るように促されたのだった。
学校で会えるのには時間が限られていた。
朝学校へといくと、すぐに上田は話しかける。
「おはよう、昨日は冷たいじゃん?あのさ~、大事な話が…」
「ごめん…帰りまでにこれを覚えておきたいんだ」
学校でもこの調子だった。
クラスの人とも前と同様に話す事もない。
「そんな事いいからさ~。霧島はそれでいいの?あの秘書の
言いなりでさ~。霧島は俺と会った時の事覚えてる?」
「昨日いきなり話かけてきたのが初めてでしょ?」
「ぶっぶぅ~!俺たちは子供の頃から知ってるんだぜ?気に
ならね?」
「別に……?」
「この前だって、事故が起きて大事になった時だって、一緒
にいたんだ、覚えてねーか?思い出そうぜ?」
「知らない……」
「それは忘れているだけだって!」
しつこく食らいついた。
自力で思い出さなくては意味がない。
それに、忘れ去られたままというのは性に合わない。
絶対に思い出させる!
上田はそう誓うと、毎日しつこいくらいに霧島に絡んでいっ
たのだった。
家で父親の死体が発見されたのだ。
警察の見聞があるのか、一番最後に会ったのは秘書だと
いう事実が判明して、家の方では騒然としていた。
しかし、確たる証拠もなく、死亡時間はちょうど秘書が
家から出て行った時間と重なる。
その間、誰も出入りしていない。
おかしな事ばかりだった。
それ以外にもおかしな点はあった。
死体がどうやってできたか…!
だった。
四肢が無惨に反対方向へと無理矢理曲げられている事など
からしてよっぽどの怪力でしか成せない事だった。
それを容易く、しかも無抵抗な人間にやってのけたのだ。
並の人間では不可能とされた。
抵抗した形跡すらないのだった。
唯一出来そうだと思われた息子は病室で眠っていた。
もう一人は刑務所の中。
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まだ学生だし、経営に携われるような人物なのか?
兄が犯罪を犯したせいで、弟は大丈夫なのか?
最初はそればかり懸念されていた。
「雅人さん、今日は学校後に経営について学んでもらい
ます。それがお父さんの悲願だったはずです」
「分かった…」
黙って、従う雅人に少し同情を禁じ得ないが、それでも
友人など作って遊ばせている時間などない。
早く会社を建て直してもらわねば困るのだ。
他殺の線で捜査が進んではいるが、犯人らしき人物は浮
かんでこない。
ライバル会社まで、捜査の手が伸びたらしいが結局はア
リバイ的にも不可能とされていた。
図らずとも、雅人は飲み込みは早い。
頭も悪くはない。
会社の運営も、徐々に覚えていくだろう。
下がった株価も、徐々に落ち着きを取り戻していく。
しかし、最近雅人のそばをうろつく人間がいた。
あの時病室であった青年だった。
「家まできてもらって悪いのですが、雅人さんは忙しいん
です、お引き取りください」
「友人だって言ってるだろ?おい!霧島~~~!」
大声で叫ぶが、雅人は振り向かず家に入って行った。
行き帰りは秘書が迎えに来ている。
遅いとすぐに電話して、早く帰るように促されたのだった。
学校で会えるのには時間が限られていた。
朝学校へといくと、すぐに上田は話しかける。
「おはよう、昨日は冷たいじゃん?あのさ~、大事な話が…」
「ごめん…帰りまでにこれを覚えておきたいんだ」
学校でもこの調子だった。
クラスの人とも前と同様に話す事もない。
「そんな事いいからさ~。霧島はそれでいいの?あの秘書の
言いなりでさ~。霧島は俺と会った時の事覚えてる?」
「昨日いきなり話かけてきたのが初めてでしょ?」
「ぶっぶぅ~!俺たちは子供の頃から知ってるんだぜ?気に
ならね?」
「別に……?」
「この前だって、事故が起きて大事になった時だって、一緒
にいたんだ、覚えてねーか?思い出そうぜ?」
「知らない……」
「それは忘れているだけだって!」
しつこく食らいついた。
自力で思い出さなくては意味がない。
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