君と共に在りたい

秋元智也

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不審

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次の日にはターゲットを見つける事ができた。それは弱って今にも死にそうな親熊だった。小熊達は母熊に寄り添ってじゃれあっていた。しかし、母熊はもう長くはないだろう。
ここで決着を着けようじゃないか。相棒を握りしめ標的に狙いを定めた。


陽が落ちる頃には村へ行って依頼の達成とその証拠である親子熊の耳を千切ったモノを差し出した。
それから一旦他の依頼が来ていないかの確認も有るため大きな街まで行くことになった。拓実にはしばしの別れを告げて、村を出た。
また暫くは暗殺依頼も何件かこなしそろそろここも潮時かなと思い始めた頃、風の噂で黒死病がどこかの村で流行り始めたと聞いた。黒死病とは黒い斑点が体中に出来て、段々力が入らなくなり、やがては寝たきりになり死んでゆくのだ。特効薬はなく。黒い斑点ができだすとすぐさま隔離され生きたまま燃やされる事があった。
嫌な胸騒ぎがして拓実の顔が頭から離れない。
大分懐も温まった事だし次こそは連れだそうと決意し、彼の住む村へ行った。
そこで見たものは変わり果てた村人達だった。
「黒死病がここでも流行り始めてたのか」
急がなきゃ、一刻も早くここから離れなくては、、、俺は森の中を駆け出していた。
息が上がって苦しかったが、それ以上に早く会いたかった。元気な彼の姿を思い出しながら森の中に建つあばら屋に飛び込んだ。
「拓実!どこだ?」
家の中は静まり返っていた。全く人の気配がしないのだ。
薬草でも取りに行ってるのか?とも思ったが、イヤ違う。と思い直した。
一緒に暮らしていた時でもそうだが暗くなるとよっぽど森の中には行かなかった。
と、するとどこに行ったのだろう?
村人の様子も何だかおかしかった。拓実は無事かと聞いたときの反応が今までと違うのだ。
何度も引き留められた。そんな事は今まで無かった。
最初に山から帰ってきたときは「あの子に近づいちゃいかん」と言われたが、無視していると諦めたのか何も言わなくなった。
まずは、事情を知ってそうな村長の家へ行かなくては・・・
ずっと走り通しだったので、少し休憩を取ることにした。
少しの間横になった。
すると靄のかかっている向こう側で誰かのすすり泣く声が聞こえた。
聞き覚えのある声だった。かすれた声で自分を呼ぶ声に目が覚めた。
「なんだったんだ!?」
訳もわからず不安だけが募る。
まずは山を降りて、っと考えているとふと、何かに引かれるように足を止めた。
山の中腹に作られたお社だった。ここは祭事の際に使っていると言っていた。
唯一のお祀りの時期になるとお社の回りに灯りを灯し三日三晩その灯りを絶やさぬようにして豊作や災いから村を守って下さいという思いを込めて踊り続けるのだとか。
拓実には参加できないけど、ここからはその光景がよく見えるとよく言ってたっけ。
しかし、なぜ今社の回りがうっすらと照れしだされているのか?
祭り騒ぎではないだろうに、と思いながらも確かめずには居られなかった。
段々と嫌な胸騒ぎが強くなっていくからである。
こういう時の第六感は大概当たることが多かった。
近づくと中には何人かの気配があった。
気配を消してゆっくりと中を伺った。中は暗く中では5人程が中央に固まっていた。
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