君と共に在りたい

秋元智也

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村焼

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朝起きると拓実の姿が見あたらなかった。
俺の慌てようといったらなかっただろう。
服を着るのもそのままに外に飛び出したのだから、、、
勝手口のドアを開けたところで拓実と鉢合わせた。
「寛貴、おは・・・っっ」
「ああ、おはよう」
なぜか拓実の肩はプルプルと震えている。
首をかしげた瞬間に鳩尾にボディーブローをかまされた。
「朝から変なもんおっ立ててんじゃねーーーー」
痛いんだけど、、、まぁ、本気のパンチじゃないのがわかるだけに脈ありだよね。
勝手に理解した振りをして着替えを取りに戻った。

食事の時もまだ「ムスッ」っとしているので早く機嫌をなおして貰わなきゃ。
「あれ?この間、米って無くなりそうだったよね?」
「あぁ、誰かさんが村の連中を血祭りに上げたせいで隣町まで買いにいくはめになったけどな」
「えーそれって俺のせい?」
ギロっと睨まれるが、それはそれ。にっこりと笑って誤魔化す。
「拓実にあーんな事や、こーんな事した連中を生かしておく必要なんてないっしょ?」
「なっ、、、何を考えてやがるんだ!」
「拓実の事❤あれから何回もいいことしたなぁ~とか?」
「お前がしつこいからだろ?」
「えーなに?嫌だったの?ちょっとショックだなぁ~」
意地悪く聞いてみる。もちろん、可愛い子ぶるのも忘れずに。
「ひ、卑怯だーーーーーー」
山にこだました声は遠くの方へと響いていった。

山を降りて今は二人きり。もちろんデート。
っという訳ではない。村人の死体を燃やすためだ。
そのままでも良かったのだが、拓実がそれを許さなかった。
そういう訳で中央の広場に集めると火を付けた。
「黒死病は黒い蝶が人の体の中に入り込んで発症する」
「病気じゃないの?」
「違う。あれは、取りつかれてるんだ。体の中に入り込んだのもは内臓を食べ始める。すると皮膚が黒くなり始め徐々に爛れてくる。」
「あれ?って事は、俺って食べられてた?」
拓実はふるふると首を横に振った。
「まだ筋肉組織を少し蝕んだ程度だから人の治癒力で治る。内臓までいっていたらもう取り返しがつかない。」
そっと拓実の肩を抱くと額に唇づけた。
「ありがとう。俺の命は拓実の物だよ」
「なーに言ってやがる。俺は、、、寛貴が来なかったら殺されてたんだぞ」
「うん。でも、俺は拓実なしじゃ生きられないかも?」
「/////」
「ここからでて他で暮らさない?二人で?」
「そうだな、それもいいかもな。それに、、、」
「それに?」
「蝶の本体も見つけねーとだな。寛貴を食べようとした報いも受けてもらわねーとだし。」
「わーぉ。俺ってば愛されちゃってる?」
「ばーか。勝手に言ってろ!」
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