君と共に在りたい

秋元智也

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到着

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正嗣はすぐに指示を出すと全員を集めた。誤魔化すといけないので正嗣と寛貴が全員を確認することになった。
「俺はいいんだろ?」
まだ眠いのか拓実はうとうとしながら寛貴の側で背中に寄りかかっていた。
「いいよ。寝てな」
「おいおい、一応確かめた方が・・・」
「大丈夫。さっき見たから」
正嗣には『さっき見た』の意味を理解した。
それから確認すること全員の中の半数を始末することになった。
もちろん先ほどの男性も感染が認められ始末対象であった。
「なんでこんなことになるんだ❗」
「そいつらはなんで感染してないんだ?」
「そうだ。町のなかにも積極的に行ってたじゃないか。お前らが感染原じゃないのか?」
口々に寛貴と拓実を避難し始めた。身体検査も寛貴はうかたものの拓実は側で背にもたれて寝ていたのを皆が確認している。
「そうだ。しっかりと確かめるべきだ」
「そうだ。そうだ。」
「俺らだけ確認して元凶を見ないのはおかしいだろう?」
正嗣は理解は出来るが寛貴が決して許さないだろう事もわかっていたため頭を悩ませる。
すると横から寛貴が前に出ると拓実の寝ている天幕の入り口を持ち上げた。
「確かめたいならどうぞ?但し、それをやるからには命はないものと考えなね?」
殺気を放つ寛貴に後ずさる男達、その中の一人が意を決して前へ出て来た。天幕を潜ろうとした瞬間に首がコロリッと下に転がった。
「何してやがる!」
恐怖をひきつらせながら男達は騒ぎたてる。
「あれ?言わなかった?命はーないよって」
寛貴は拓実には誰も近づかせるつもりはなかった。
正嗣はこれ以上の被害を防ぐ為にも寛貴と拓実と自分は予防薬を飲んでいることを明かした。
「そんなものどこで手に入れたんだよ。」
「仲間だろ?俺らにも分けるべきだろ?」
口々にする言葉は非難と嫉妬にも聞こえた。
「仕方ない。数が少ない上にまだ稀少価値が高くて入手が困難なんだ。わかってくれ❗次に手にはいったら皆にも回すから、な?」
正嗣の言葉に皆も納得したのか、無理矢理納得した振りをしているだけなのか落ち着いてくれた。
「悪いな。それじゃ少ししたら出発だ。各自戻ってもう少し休んでこい。見張りは俺が替わる」
そういうと正嗣は見張りを替わると薪の側で腰をおろした。
寛貴が近づいて来たのに気付いたが振り返りはしなかった。
「眠れない?ってたまじゃないだろう?」
「そうねぇ~あのままだったら全員殺してたかも?」
「おいおい。やめてくれ。仲間を殺すやつがどこにいる?」
「まぁ~どうでもいいんだよね~」
心のどこかで人間らしくなったと思った認識を改めざるをえなかった。
全く変わってない。いや、一人に固執したことによって余計酷くなっている気さえしてきた。
そのまま、順調に森を抜け目的の街まで到着した。
正嗣は皆を待たせると荷馬車の依頼主のところに向かった。積み荷の受け渡しと残りの代金の受け取りのためだ。この街はまだ平和で、何の混乱も起きていなかった。
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