君と共に在りたい

秋元智也

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発見

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尻尾と耳を指摘された。頭の上にはピョコンとかわいい獣耳がたっていた。
それから餌の取り方である。普通の食べ物も食べれるのだが月に一度は人間の生気を食べていないと体の維持が出来ないとか。
人間を食べると言うのではなくただ単に交われば自ずと生気が体に取り込まれるのだ。
特に性に貪欲な男をカモにするのが一番の手っ取り早いと。
「誰でもいいのか?」
「相性も有るわよ。なんかいい匂いがしてくるからわかるわよ」
「そっかぁ」
「そろそろあんたも狩りをしないといけない頃合いだし、変化もだいぶ上手くなったしね。でも、油断するんじゃないわよ。化け物だと思われたら殺されるかもしれないんだからね」
「わーってるよ」
「あんたが捕まれば他の猫又にも被害が行くんだから気をつけてよ」
「お節介ばあぁ」
ボソッと囁くとそれを危機逃さなかったミケにげんこつを貰う羽目になった。
その夜街を徘徊しながら獲物を探した。凄く渇くような感覚に戸惑いながらも探した。
すると一人の人間とすれ違った瞬間に物凄く美味しそうな匂いに感じられた。
「旨そう、、、」じゅるりっ。
これだ!! と思い陰に隠れると集中。集中。ポンッ。
それは真っ白なワンピースを身にまとった可憐な少女。
黒い艶のある流れるような長い髪に丸っ子い大きな瞳。
細くスレンダーな体つき。
年で言えば16才位に見える見た目。
ちょっと、若くはあるが目を引く整った顔立ちは美少女といっても過言ではない。
「耳も隠した、尻尾も付いてない。よしっ」
確認を終えると早速後を追う。
キョロキョロと周りを探していると美味しそうな人間を発見した。
急ぎ足で追い付こうとすると前に人が出てきたのに気付けずぶつかってしまった。
「わぁっ!!」
「おっと、大丈夫?」
ぶつかった拍子に尻餅を付いて転がった。
するとぶつかった方は平然と突っ立っていて。なんか悔しい。
それから転んだ俺に手を差し出して来たものだから無視して立ち上がった。
そう、俺には今日はちゃんとした使命があるのだ。
ご飯はどこだろう?と探すが見当たらない。
慌てて、さっきまで目で追ってたところに行ったのだが見つからなかった。
がっくりして項垂れてると、さっきぶつかった男が近づいてきた。
「ねぇ、何か探してる?手伝おうか?」
「いい。もう遅いから、、、」
ぎゅるるるーっとお腹が盛大に鳴ってしまった。
すると男はクスッと笑いだした。
お前のせいで飯にありつけなかったじゃねーか。くそっ。
心のなかで悪態を付きつつ男を睨み付ける。
「ごめん、あんまり真剣そうだったから」
腹を押さえて笑うのでもう恥ずかしくて立ち去ろうと歩き出す。
「待って。ご飯奢るよ。こんなに笑ったの久しぶりだったし」
「いらない」
俺は無視して歩き出すが、いつまでたっても後ろから付いてきて帰る気がない。
「いい加減にしてくれ」
「いいじゃん。ね?少しだけ付き合ってよ」
「嫌だ」
巻いてしまおうと急いで角を曲がると走りだし、塀を軽々とジャンプして振り切った。
もう、後ろには男はいない。走ったことで余計お腹が空いてきた。
キョロキョロと物色を始めること30分位。また美味しそうな匂いに。さっきの人間ほどじゃないけど・・・背にはらは変えられない。アタックあるのみ。
そして獲物の前に躍り出た。すると男はこちらに気付くと自分から近づいてきた。
「君、一人?家は?」
「帰るところが無いんです。一晩でいいので泊めてもらえませんか?」
上目使いに見上げてみる。これが結構効果的だとミケが言っていた。
男は生唾を飲み込むと俺の肩を抱き寄せようとしたが、かなわなかった。
「いででででっっー何しやがるんだ?」
「悪いね。この子先約済みなもんで」
「え?」
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