君と共に在りたい

秋元智也

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「寛貴、前!!」
「こんなところまで付いてくるなんて。死ぬに死ねなくなったなぁ」
「ばーか。死ねないに決まってるだろ?」
きっと、拓実の死期が近いことがわかってるんだと思う。
だからこんな危険な仕事を受けてくるんだと思う。
今度は寛貴のが先に死ねるように、、、
そんな事、誰が許すかよ。死ぬときは一緒だって言ったじゃん。
誰が一人で死んでやるかよ。巻き込んでやる。
拓実は寛貴を一人残して逝ってしまった。
でも、それは残された方から見たらただの偽善でしかない。
俺はそんな事思わない。
わがままだって構わない。一緒に逝こう。
それがどんなところだって二人でなら辛くねーだろ?
その場に立っているのは寛貴ただ一人になった。
「やっぱりつえーなぁ」
「何いってるの?調子が悪いんでしょう?」
「うん。あれ以来生気が吸えなくなっちゃた。」
「!?」
「ごめん。体を動かすのももう、無理かも。ただ、今は寛貴の側にいたい」
「いいよ。眠っても。ずっと側に居るから」
拓実の体を抱き締めると寛貴はそのまま目を閉じた。
このまま死んでしまおうか?
そうすれば離れなくて済むから。
きっと、拓実もそれを望んでるよね?
拓実の体はいつのまにか猫の姿に戻り呼吸もしなくなっていた。
それを抱いていた寛貴は安らかに目を閉じたままじっとしている。
腹や肩に食らった弾丸は多分致命的だったなーと思いながら。
このまま一緒に死ねるのならそれも悪くはない。
置いていかれた20年が余りにも長すぎた。
今、行くから、、、。
最期にふと、笑みがこぼれた。
二人はいつかまた出会えるだろうか?
いや、運命はまた、二人を出会わせるだろう。
悲しいばかりじゃなく、生き抜く力として引き寄せあうだろう。          




                            ー    E  N  D   ー
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