その恋、応援します!

秋元智也

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第十二話 春花の誕生日

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電話は隆盛からのものだった。
少し焦らすように鳴らしたあと通話ボタンを押す。

 草壁 「あら、隆盛?お久しぶり。私に会いたくなったのかしら?」
 隆盛 「どういうつもりだ?俺の友達に手を出すな!」
 草壁 「友達?あーあの時にいた可愛い子かしら?」
 隆盛 「…親友だって言っただろ?」
 草壁 「本当にただの友人なの?私から見たら、そうは見えなかった
     わよ?」
 
受話器の向こうで舌打ちが聞こえてくる。

 草壁 「土曜日デートしない?色々と話したいのよ」
 隆盛 「そうだな…俺もお前に話がある」
 草壁 「そう?それは嬉しいわ。場所はこの前あった駅前で、時間は
     10時でいいかしら?」
 隆盛 「あぁ。構わない。」

草壁真奈美は嬉しそうに電話を切った。
不気味な笑いを含んだ笑みを浮かべ、週末を待った。

 隆盛 「姉貴~。土曜日出かけるから。」
 美桜 「裕之くんのところ?」
 隆盛 「いや、違うけど?」
 美桜 「ふ~ん。あんたモテるのはいいけど、裕之くんを傷つけ
     たら分かってるでしょうね?ただじゃおかないわよ!」
    (せっかくのリアルBLなんて別れさせないわよ!やるとこ
     ろまでしっかりやりなさいよね!そして幸せになんなさ
     いよね!)

 隆盛 「お…おう、」
 美桜 「まだ、何かあるの?」
 隆盛 「いや、なんかさ…俺達の事…反対しないでくれてありが
     とな。姉貴にも気持ち悪いって言われるんじゃないかっ
     て思ってたからさ…」
 美桜 「バカね~。そんな事言うわけないじゃない。裕之くんは
     純粋でいい子だし、性別なんて愛の前では些細な事よ!」
    (目の前で起こるBLに萌えない訳ないじゃない!しかも弟が
     相手なんて~。直に見たいわ、いいえ、声だけでもご相伴
     に預かりたいわ!早くうちでヤっちゃいなさいよね。)

 隆盛 「ちょっと、姉貴の事見直したよ」
 美桜 「何言ってんのよ。全く!」

純粋な弟の気持ちとは裏腹に姉の欲望は別の方に向いているなど知る
余地もない。
週末になると、朝早くから隆盛は出かけていった。

 美桜 「こんにちわ~。春花いる?」
 春花 「いらっしゃーい、上がって~」
 美桜 「はい、誕生日おめでとう!」
 春花 「ありがとう!」

5月6日は結城春花の誕生日なのだ。
朝から弟の裕之がケーキを焼いてくれて飾りつけが終わると冷蔵庫で
冷やしてある。
母も今日は仕事を早く切り上げてくるといっていた。
美桜はいち早く駆けつけると、プレゼントを持ってきてくれたのだ。

 春花 「開けていい?」
 美桜 「いいわよ。見て驚け!」
 春花 「…!!これは…きゃーーーーマジで!恋愛学園の特別版!
     しかも予約生産じゃん。これ買えなかったんだよね~」
 美桜 「ふっふっふ。二個買ってたのよ。買えなかったって涙して
     たの知ってるから、プレゼントはこれっきゃないと思った
     訳よ!しかも付録がなんと!」
 春花 「玉×清のツーショットプロモじゃん!!最高じゃん!」
 美桜 「でしょ!?ちょっと涎出てる!やる気出た?」
 春花 「出たでた。」
 美桜 「はい!スケブ!存分に描くがいい!」
 春花 「それって、美桜が欲しいだけでしょ?」
 美桜 「あ!バレたか?」
 
盛り上がっていると二階から裕之が降りてきた。

 美桜 「裕之くん、こんにちわ~」
 裕之 「あ、りょうのおねーさん、いらっしゃい。」
 春花 「どこか行くの?」
 裕之 「うん、ちょっとね。」
 春花 「出かけるなら一緒に行こうか?」
 裕之 「なにそれ?大丈夫だって、子供じゃないんだし」
 春花 「そう?早く帰って来なさいね」
 裕之 「うん…ちょっと散歩行くだけだから」
 美桜 「たまには気晴らしもいいかもね。もう桜も散って葉桜だ
     けど、それもまたおつってもんよ!」

裕之が出かけてから春花は少し不安に駆られていた。
 
 春花 「やっぱりついて行った方がよかったかな?」
 美桜 「過保護よ!いくらリアル推しカプといってもやり過ぎは
     禁物よ!程よい距離をおかなくちゃ。でも、本当に目の
     保養になるわね~。隆盛もくればよかったのに~」
 春花 「今日、隆盛くんはどうしたの?」
 美桜 「なんか予定があるって言って朝から出てったわ。まぁ、
     あいつの事だから大丈夫でしょ?可愛くもないし…」
 春花 「イケメンじゃん。」
 美桜 「まぁ~ね。イケメンってだけが取り得のチキンよ!」
 春花 「それを言うなら、裕之もね。誘惑することもできないし」
 
『はぁ~』二人は同時にため息を漏らす。
二人の想像した展開にはなかなか発展しそうになかった。
現実とは想像の産物のようにはいかないものである。

その頃、隆盛は駅前で草壁真奈美と会っていた。

 草壁 「待った~?」
 隆盛 「時間指定した割に5分の遅刻だ!」
 草壁 「いいじゃない!女の子は支度に時間がかかるものよ!」
 
胸元を強調するような服で身を包み、スカートは風が吹けば見え
そうなほど短い。
それを見ても興奮どころか、全く魅力を感じなかった。

 草壁 「さぁ、食事でもいきましょう?話はそれからよ!」
 隆盛 「…」

草壁真奈美は隆盛の横に並ぶと腕を絡めた。
隆盛は振り払う事もせず、ただ黙ってついていく。
食事を済ませた頃には草壁真奈美の携帯が鳴った。

 草壁 「静かな場所で話しましょ?そうね…うちに来ない?」
 隆盛 「別に家に行く事はないだろ?」
 草壁 「そう?前みたいに朝までベッドで過ごしてもいいのよ?」
 隆盛 「…」

過去に彼女の家に行ってしまった為に、何故か朝起きた時彼女と
寝ていたと言う不名誉な事態が起きたのだった。
それ以来、外でしか会わないようにしていた。

 草壁 「今日は見せたいものがあるのよ。何もしないから…、
     もちろんくるでしょ?きっと喜ぶわよ?来ないなら
     彼も誘ちゃおうか?あの時一緒にいた彼可愛いかっ
     たわよね?」
 隆盛 「…分かった。」
 草壁 「そう来なくっちゃ。仕込んだかいがないわ。」
 隆盛 「…」
 
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