INNOCENT BOY

秋元智也

文字の大きさ
15 / 82

15話 それぞれの関係

久しぶりに、帰る家は真っ暗で誰もいなかった。

「おい、浅緋?」

春陽は浅緋の部屋の前に来ると、勝手に開けて入る。
夜には勉強しているか、寝ているはずの浅緋はそこ
にはおらず、冷たいベッドは主人の帰りを待ってい
るようだった。

「またあの男かよ……」

春陽は携帯を出すと、レンと名乗った男に電話をか
けた。

すぐにガチャと出る音がした。

「レンさん……今会えませんか?僕です…」
「ハルくん。悪いけど、今は忙しいんだ」
「……それってハルを弄ぶのにって事?」
「……何を言って…いや、君は本物のハルくんだね?」
「知ってたんだ?なら、偽物には用はないでしょ?
 俺が相手してやるって言ってんだからさ」

苛立ちげに春陽が言うと、電話越しにレンの落ち着い
た声が聞こえてきた。

「悪いけど、本物とか関係ないんだ。俺は…伊勢谷
 浅緋がいいんだけど?」
「なんで、浅緋の事」
「君も、浅緋くんの事を知ってるんだね。だと思っ
 たよ、あまりに似ているからね、もういいかな?」
「ちっ……浅緋を連れ出して、楽しんでるのか?」
「……浅緋くんは帰ってないのかい?」
「教えるかよ、ばーか!」

すぐに切ると、苛立ちながら携帯を投げつけたのだ
った。



      ♦︎



その頃、浅緋は柿崎圭人と一緒にいた。

「今日はありがとうございます」
「いいって、それより大丈夫か?」
「はい、ここまで送ってもらって…家はすぐそこ
 なので」
「そうか、いつでも電話しろよ」
「はい」

もう深夜を回っていた。
最近春陽は家に帰って来ていないらしい。

そのせいで、浅緋が夜遅くに帰っていることも知
らないようだった。

家に着くと鍵を回して、抵抗がない事に気づく。

「あれ?開いてる……?」

ちゃんと閉めて出たはずだった。
ドアを開けると、部屋の電気が付いておりドアは
開けたままだった。

「ハルくん?」

小声で呟くと、ゆっくり部屋に入る。
床に蹲るように座っている春陽を見つけると、ぎょ
っとした。

「ハルくん!」
「おせーじゃん。今日はどんな男を漁ってたんだ?
 そうだ、俺の代わりにもう一回行ってこいよ。も
 うアッチの方も慣れたんだろ?」
「ハルくん、いい加減にしてよ。僕はもう行かない
 し、そう言う事は……」
「おい、いい加減いい子ぶるのはやめろよ。男に掘
 られて気持ちよかったんだろ?だったら……それ
 でいいだろ?」

浅緋につかみかかると、押し倒していた。

「よくないよ。誰でもいいわけじゃないんだ」

浅緋が落ち着いている事が意外だった。
浅緋はこんな落ち着いた雰囲気などなかった。

いつもいいなりになるような主体性のない兄だ
ったはずだ。
それなのに……。

「なんだよ、なんなんだよ!ちくしょう…レン
 ってやつに散々掘られてたくせに……」

怒鳴るだけ怒鳴ると、春陽は自分の部屋に戻
っていった。
それから、部屋に籠ったっきり出てこなくなった。


春陽が部屋に籠ってしまってからは、浅緋の居な
い時には、出て来てご飯だけは食べているらしい。

それが分かると、浅緋は極力家を開けるようにし
ていた。
春陽が少しでも出て来れるように……と。

大学、そしてバイトの後は決まってあのバーへと
行くようになっていた。

「大丈夫?ちょっと顔色悪いわよ?上で寝てくる?」
「大丈夫です……」
「悩みなら聞くわよ?それとも、圭人ならもうす
 ぐ来るからどこか気晴らしにでも連れて行って
 もらったら?」
「そんな……迷惑ばかりかけられないです」
「もうっ、この子っったら~、いいわ、次の休み
 に私と遊びに行きましょ!」

秀夫は嬉しそうに、どこに行こうかしら~と張り
切り出したのだった。
感想 0

あなたにおすすめの小説

逃げた先に、運命

夢鴉
BL
周囲の過度な期待に耐えられなくなったアルファーー暁月凛(あかつき りん)は、知らない電車に乗り込み、逃避行を計った。 見知らぬ風景。 見知らぬ土地。 見知らぬ海で出会ったのは、宵月蜜希(よいつき みつき)――番持ちの、オメガだった。 「あははは、暁月くんは面白いなぁ」 「ありがとうね、暁月くん」 「生意気だなぁ」 オメガとは思えないほど真っすぐ立つ蜜希。 大人としての余裕を持つ彼に、凛は自分がアルファであることを忘れるほど、穏やかな気持ちで日々を過ごしていく。 しかし、蜜希の初めての発情期を見た凛は、全身を駆け巡る欲に自分がアルファであることを思い出す。 蜜希と自分が”運命の番”だと知った凛は、恋を自覚した瞬間失恋していたことを知る。 「あの人の番は、どんな人なんだろう」 愛された蜜希は、きっと甘くて可愛らしい。 凛は蜜希への秘めた想いを抱えながら、蜜希を支えることを決意する。 しかし、蜜希の番が訳ありだと知った凛は、怒り、震え――同時に、自分がアルファである事を現実は無情にも突き付けて来る。 「凛さん。遊びは終わりです。帰りますよ」 強引に蜜希と引き剥がされる凛。 その凛の姿と、彼の想いを聞いていた蜜希の心は揺れ――。 オメガバースの世界で生きる、運命の二人の逃避行。 ※お気に入り10突破、ありがとうございます!すごく励みになります…!! ※遅くなりました!(書いていると思ってた)お気に入り28ありがとうございます…!30目前…! ※わあああ!!お気に入り30ありがとうございます!♡も900突破…!すごい!いつも読んでくださって、ありがとうございます!嬉しいです!

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

【完結】世界より近い声

Lillyx48
BL
大学で出会った2人が、お互い向き合うお話。 ※少し乱暴な表現があるので、苦手な方はご注意ください

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科 空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する 高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体 それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった 至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する 意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク” 消える教師 山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー

彼氏未満

茉莉花 香乃
BL
『俺ら、終わりにしない?』そんなセリフで呆気なく離れる僕と彼。この数ヶ月の夢のような時間は…本当に夢だったのかもしれない。 そんな簡単な言葉で僕を振ったはずなのに、彼の態度は…… ハッピーエンド 他サイトにも公開しています

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

魔性の男

makase
BL
俺はとにかくモテる。学生の頃から、社会人になった今でも、異性問わずにモテてしまう。 最近、さえない同性の先輩に好意を持たれている。いつものことだろう。いい人だから、傷つけたくはないな。 そう、思っていた。