INNOCENT BOY

秋元智也

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35話 同棲を始めて

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月曜日からテスト週間が始まると、サークル活動
は控えられた。

偏差値も高いせいか、生半可な勉強だけではつい
ていくのがやっとだからだ。

それでも、浅緋には蓮城がついている。
家でも、レポートの課題や、勉強も見てもらって
いた。

そのおかげか、成績はちょっと上がってきていた。

今も、食堂で会う三浦先輩しか話せる人がいない。

人見知りなせいか浅緋はいつも一人ボッチだ。

「あら、伊勢谷くーん!元気ないわね?さては
 テスト悪かったわね?だから勉強見てあげる
 って言ったじゃな~い」
「えーっと、大丈夫です。結構今回は自信ある 
 ので…」
「そうなの?意外ね~。」
「すっごく……頑張ったんです」
「そう、ならいいけど」

こうやって話しかけてくれるのも、三浦先輩だけ
だった。

最近の大学での話題はもっぱら、蓮城の後任で来
た講師の事だった。

イケメンで、チャラいと言われていた。

学生の何人もと関係を持ったとか、持っていない
とか噂されるくらいなのだ。

講義を取っているので、後ろの方から眺めていた
が、確かに見た目は蓮城とさほど変わらずイケメ
ンではあったが、話し方がチャラそうだった。

それに、女子受けうるせいか鼻の下を伸ばしてい
るように見える。

それと、帰りは女生徒に囲まれて帰っているみた
いだった。

昼休みでは、こぞって取り囲まれている様子が見
えた。

「もう、嫌になるわね~」
「先輩…」
「だって、いつもあの調子でしょ?独り身って噂
 がたって以来、もうこぞってアタックかける女
 どもが群がってるのよ?」
「あははっ……」
「伊勢谷くんのが、可愛いのにな~」
「………//////」

いきなりの三浦先輩の言葉に、一瞬箸に持ったお
かずを取り落とした。

皿の上でころりと転がると、顔を上げた。

「冗談よ!でも、やっぱり可愛いと思うのはほん
 とよ?」

男子大学生に可愛いという言葉は、どうかと思う
が、蓮城に言われ慣れたせいかちょっぴり恥ずか
しいと思うくらいだった。

今日の講義が終わると、蓮城と同じ家に帰る。

飽きるまで一緒にいられる唯一の空間だ。

いつ、蓮城に飽きられるのかと不安ではあったが
「付き合ってくれ」と言ってくれた蓮城を思い出
すと、自然と顔が緩む。

「ずっと一緒にいられたらいいのにな……」

洗濯物を取り込むと、畳んで部屋に持っていく。
最近、蓮城は何かを隠している気がする。

ここ最近頻繁にかかってくる電話にも、浅緋の前
で出る事はない。
いつも席を外し、話は聞こえない。

蓮城はM大では人気の講師らしい。
毎日のように薬指に指輪をはめていても、それで
も諦めきれない女性は、無理にでも話かけてくる
らしい。

前に浅緋と買い物している時にも、来た事があっ
た。
あの時も、プライベートだからと断ったのだ。

「はぁ~………」

なんでも相談してくれないのがもどかしかった。

立ち上がると、ふと棚の奥に何かを見つけた。
首を傾げると、棚の前に置いてあるモノをどける
と、地味な箱を見つけた。

小さすぎず、引き出しほどの大きさの箱だった。
蓋を開けると、そこに入っていたモノに一瞬目を
疑った。

「これは………」

中身を取り出すとじっと眺めた。
使われた形跡もなく、ただあるだけだった。

「こんな趣味が?………まさかね……」

元の場所に戻すと、見なかった事にする。
前に色々置いて忘れているのだろうか?
それとも、使うつもりで買ってそのままとか?

蓮城が帰ってきても、聞きづらい案件だった。

浅緋は「よし」と決意すると、見なかったという
結論に達したのだった。




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