INNOCENT BOY

秋元智也

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59話 自分勝手な母親

母親には、週末帰ると伝えておいたはずだった。

そう、それまでに覚悟を決めて会いに行く予定
だったのだ。

スーパーで買い物を終えると、帰宅した蓮城の
部屋の前には大きなトランクを持った年配の女
性が立っていたのだった。

「……どうして…」
「あら、来たら行けないの?自分の息子に会い
 に来たんだから。それに、大事な話があるん
 でしょ?」

突然の事でパニックになりそうだった。
いや、もうパニックだった。

家の中はほとんどが二人用になっている。
同棲しているのだから仕方がない。

このまま中に入れてしまうと、話す前に何をさ
れるか分かったもんじゃなかった。

浅緋の大事にしている物を、浅緋と作り上げた
空間を汚したくはなかった。

「母さん、外で話そうか」
「あら、何を言っているの?部屋でいいじゃな
 い。それに、今日は泊まって行くわ。早く中
 に入れてちょうだい」
「ダメだ!どこか他にホテルでもとってくれ」
「真琴。何を言っているの?汚れているくらい
 平気よ。そうね、掃除なら手伝ってあげるわ」

まるで頓珍漢な事を言い出す母親に、焦りが募
る。

このまま浅緋と鉢合わせるわけにはいかない。

蓮城はすぐに母のトランクを手に取ると、歩き
出した。

「今日は泊めれないよ。さぁ、ホテル取るから」
「何を言っているの。真琴、待ちなさい」

後ろから追いかけてくる母を見ながら車へと戻
った。

携帯でホテルの予約を入れると、そこまで運ん
だのだった。

「真琴、あなたちょっとおかしいわ。どうした
 のよ?家には入れないわ、いきなりホテルに
 泊まれなんて!私の家なのだから入ってもい
 いいでしょう?」
「違う、俺の家だ!貴方のじゃない。」

いきなり声を荒げた息子に、少し驚いたのか言葉
が詰まる。

「何を言っているの?家族の家はみんなの家よ?
 それに、これからは一緒に住むんでしょう?私
 思ったの。家族はやっぱり一緒に住まなきゃだ 
 めなのね。心が離れてしまう気がするのよ」
「それは母さんだけだろ?なんで勝手に都合がい
 いように解釈するんだよ?お見合いもそうだし。
 俺は今付き合ってる子がいるんだ。その子以外
 と結婚する気はないし、母さんに紹介する気も
 ないよ」

一気に言うと、母は目を見開くと、手を上げたの
だった。

パァンッと乾いた音がして、蓮城の頬を打った。

「子供が、勝手に決めて言い訳ないでしょう?私
 は貴方の将来を思って言ってるのよ?結婚相手
 は、私が選ぶのよ?勝手に決めてはダメよ。絶
 対に失敗するわ」
「母さんが選んだ相手の方が失敗だろ?」
「な……何を言うの!私は……慎司が最近様子が
 おかしいのは真琴のせいね?変な女に捕まった
 せいね、きっと。分かったわ、お母さんがその
 女を追い出してあげるわ」
「バカな真似はすんなよっ、迷惑なのは、あんた
 の方だよ。俺の人生勝手に決めるなよ」

蓮城は話の通じない母に嫌気が刺していた。

これだから、週末まで待ちたかったのだ。
疲れた状態で、母と会話などしたくなかった。

自分の事しか考えない。
そんな人なのだから。





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