INNOCENT BOY

秋元智也

文字の大きさ
66 / 82

66話 自分勝手な女性

今日は、蓮城が遅くなると聞いていたので、バ
イトを延長してきた。

スーパーが閉まるギリギリには終わらせて、買
い物を済ませた。

バイト先がスーパーでよかった。
こういう時に、割引きして貰えるからだ。

惣菜も残れば安く買えた。

急ぎ足でマンションへと帰ってくると、エント
ランスに年配に女性が立っていた。

中に入らないのか、ただ立ち尽くしているよう
に見えた。

「どうかしたんですか?」
「あら、私ったら……ここに息子が住んでいる
 んだけど、どうやって入っていいかわからな
 くてね。前は息子と一緒にきたからよかった
 んだけどね」
「そうなんですね。では、ここで部屋番号を入
 れれば内線に繋がるので、開けてもらえます
 よ?」
「そう?ありがとうね、あなたもここに住んで
 いるのかしら?それにしても若いわね?」

女性は不思議そうに浅緋を見てきた。
確かに、浅緋が住むには不自然だろう。

ここは、市内でも有名な高級マンションなのだ。

学生が住めるような場所ではない。

「僕、ここで一緒に暮らしている人がいて」
「なるほど、家族と一緒なのね、それなら納得だ
 わ」
「あ……はい……」

家族……蓮城は家族になろうと言ってくれたけど、
両親の許可もないので、それは保留となっていた。

いつかは蓮城と家族になりたい。
そう願ってはいても、同性での問題は多く、普通
に浅緋が女だったら、ここまで拗れる事はなかっ
ただろう。

「連絡つきましたか?」
「いえ、いないのかしら?」
「うーん、困ったなぁ、ここにずっと待ってるわ
 けにもいかないですし……」

だからと言って勝手に他人を家に上げる事は出来
ない。
一緒に家主を待つ事を選ぶと、浅緋は女性に買い
物袋からジュースを取り出した。

「これ、よかったら。」
「あら、親切にありがとう。ご家族はいいの?」
「大丈夫です、まだ帰って来ていないので」
「君は、こんな見ず知らずの人にも優しくできる
 のね?私の息子なんて、どこの馬の骨ともつか
 ない女に騙されて、私達親子の縁を切るって言
 い出したのよ?変な女に騙されて可哀想なんだ
 から…」

何か雲行きが怪しくなって気がする。

女性は自分の息子の事をペラペラと話出したのだ
った。
よっぽど相手の女性が気に入らないのだろう。

いつも女性を優先する息子に腹が立っているよう
だった。

「それに、他にもいい女性はいると分かってもら
 う為に見合いを用意したのに、あの子ったら見
 合いは上手くいったと言っておきながら、実際
 は相手方と話を合わせていただけだったのよ?
 全く狡猾な……やっぱりあの悪女が入れ知恵を
 したんだわ」
「あの……息子さんが選んだ女性には会ったので
 すか?」

浅緋はまるで自分の事を言われているようで胸が
痛かった。

「会うわけないでしょ?あんな狡猾な女、会うだ
 け無駄よ。息子は二人いるんだけど、弟の方に
 も手を出しているみたいなのよ。まるで庇うよ
 うないい方をするんだからっ………」
「それって、誤解じゃなくて?ちゃんと話を聞か
 ないと分かり合えない事だってあるとおもうん
 です」

浅緋は、いつでもそうだった。
春陽とも、大事な事は言えなかった。

だから拗れてしまった。
ちゃんと話していれば、もっと分かってあげられ
たんだと思うと、これからはなんでも話そうと決
めたのだった。

「家族でも、友人でも、ちゃんと話さないと分か
 り合えないと思うんです。息子さんと、しっか
 り話て見ては?」
「貴方はまだ学生よね?しっかりしてるわね~、
 息子にも、こういう友人がいてくれれば少しは
 私の気持ちも汲んでくれたのかしらね…」
「そんな……でも、まだ間に合うならしっかり話
 合ったほうが……」

女性は少し考えてから、スッと立ち上がった。

「そうね、出直すわ」
「はい、お気をつけて」
「えぇ、貴方と話せてよかったわ」

そう言って女性はエントランスをでて行った。

浅緋はエントランスから中に入るとエレベーター
に乗った。

不思議な人だった。
常に自分の考えを息子に押し付けるような人だっ
たからだ。

あれでは、話もろくに聞きはしないだろう。
なにしろ、自分の話しかしないのだから……。




感想 0

あなたにおすすめの小説

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

兄と、僕と、もうひとり

猫に恋するワサビ菜
BL
とある日、兄が友達を連れてきた。 当たり前のように触れ、笑い、囲い込む兄。 それを当然として受け入れる弟。 そして、その“普通”を静かに見つめる第三者。 そんな中事件がおこり、関係性がゆらぐ。

ばぶばぶ保育園 連載版

雫@23日更新予定
BL
性癖全開注意で書いていたばぶばぶ保育園を連載で書くことにしました。内容としては子供から大人までが集まるばぶばぶ保育園。この園ではみんなが赤ちゃんになれる不思議な場所。赤ちゃん時代に戻ろう。

落ちこぼれオオカミ、種族違いのため群れを抜けます

椿
BL
とあるオオカミ獣人の村で、いつも虐げられている落ちこぼれの受けが村を出ようと決意したら、村をあげての一大緊急会議が開催される話。

響花学園

うなさん
BL
私の性癖しか満たさない。