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第6話
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あれから遥はラセツじいさんの部屋に入り浸りになっていた。
魔法が使えるということで、毎日が楽しくて仕方がないのだ。
今日は杖を構えると空中に小さな光る玉を飛ばしていた。
赤と蒼と緑。この三色のなかには炎と水と風の力が渦巻いていた。
「よし、いい感じじゃ。そこの的に当ててみろ!」
ラセツじいさんに言われた通りに三色を融合させると一気に的に目掛けて打ちはなった。
バシュッ。
と音がして、的に命中した。
命中はしたが、薄い板なのに壊す程でも、穴を開ける威力もなかった。
「よしっ。」
それでも遥は嬉しかった。
やっと成功したのだ。
「まぁまぁじゃな?」
「今の当たったよな?これで少しは役に立つじゃん?」
「もっと威力があればなぁ~」
そうなのだ、ラセツの悩みは今は遥の魔法の訓練の事で一杯だった。
確かに人一倍多くのマナを有しているが、いざ攻撃しようとすると手から離れれば離れるほど威力が激減してしまうのだ。
手のなかにある時は小さな球体でも、それを直接押し付ければかなりの威力があった。
しかし、1mも離れればさっきのように擦り傷程度しか負わせることができないほど威力が落ちるのだ。
今のラセツはどうやって遥を強く鍛えるかが研究課題に擦り変わっていた。
この前、治癒を練習させたときはビックリするほど飲み込みが早かった。
確かに、直接患者に触れて、他を媒体にマナを流すのだから遥のもっとも得意な分野なのかもしれない。
でも、それだけじゃなかった。
錬成魔法をも得意としていた。
とにかく創造力が豊かなせいか覚えがよく、筋も良かった。
今まではカースが取ってきた宝石、いわゆる魔石をラセツが日用品に変えて売りさばいていたのだが、変換を今では遥に任せっきりにしている。
そこへいきなりドアが開け放たれると、ポーシャが駆けてきた。
「バルリア王国で勇者が降臨したんだって。」
「今度はどのような方だったのかの?」
「えーっとね。女性でめっちゃ強いの。みさきっていうらしいの?」
「なっ・・・みさ・き。」
「そうだよ。今ベロニカが戻ってきてカースに話してたんだー」
いきなり遥はポーシャに飛びかかると凄い形相で詰め寄った。
その行動に驚いて、ポーシャはラセツの後ろへと回り込んだ。
「一体どうしたというんだ?」
「いや、そんなはずはない。そんなはずは・・・」
ラセツは遥の豹変に疑問を感じたのか遥の肩を掴むと揺すって現実を直視させる。
「何か気になることがあるなら話してみたらどうじゃ?力になるぞ?」
一瞬、瞳が揺らいだが、意を決したのかぽつりぽつりと話し出した。
「もし、俺の知ってる人なら、冴島美咲。俺の妹かも知れないんだ。でも、なんでこんなことに・・・ 」
「まぁ、事実か確かめないといかんし、わたしが確かめてこよう。」
はっとしたように顔をあげるとラセツを見た。
「俺も、俺も連れていってくれ!」
そこで後ろからベロニカとカースが入ってきた。
「それは無理だな。遥、お前は自分の立場を分かってねーんだよ」
「そうよ。あんたは今じゃお訪ね者。エスタニア王国の秘宝を盗んだ盗賊とまで言われてるのよ。」
いきなりの言葉に一瞬めまいがした。
「はぁ、秘宝なんて盗んでない。」
「それはわかってるわ。でも、エスタニア王国ではなんとしてもあんたをとらえたいらしいのよ。」
「そんなっ・・・」
「だからおとなしくしてろよ。ラセツ。悪いが俺が来週バルリア王国に行商に行ってくるからそのついでに調べてくるぜ?」
遥は暫く落ち込んでいたが、それでもカースの服を掴むと。
「どうしても自分で確かめたいんだ。もし、妹なら助けたい。」
すると横からベロニカが遥の腕を捻りあげた。
「あわぁっ、いっ、痛い痛い、離せよっ!」
ベロニカは容赦しなかった。
壁に叩きつけると、遥は床に転がった。
「手加減してやれよ?」
カースの忠告も聞かず馬乗りになると遥を床に押さえつけた。
「離せって!何考えてんだよ!」
怒る遥を無視して身動きを封じると腹に一発叩き込んだ。
ゴフッ。
「・・・っ・・・。」
遥は息が出来ずその場でもがき続けた。
やっとの事で息がを整えると、その頃にはベロニカは遥の上から退くと仁王立ちしていた。
「いきなり何すんだよ!」
「まだ、わからないの?足手まとい何だよ。」
「・・・・・・」
「自分の身も守れない子供を連れていってかばいながら潜入しろって?バカ言ってんじゃないよ。それがどんなに危険な事か分かってるのかい?」
「それは・・・っ」
カースは遥の頭を撫でると、しゃがみこんだ。
「まぁ。俺を信じて見ろよ。ちゃんと情報は持ってきてやる。それまでにお前は強くならなきゃな?」
「わりぃー。気ぃ使わして・・・」
「いいってことよ。もう、家族だしな?」
そういって出ていってしまった。
カースには家族はいない。
当の昔に生き別れて以来会ってもいない。
生きているのかさえわからないのだ。
カースは元々奴隷として売られていた。
しかし、人族に買われてここへ来た。
ラセツが人に化けてカースを買ったのだ。
ラセツはそこそこ有名な魔法使いだった為、人族としても有名だった。
しかし、偏屈な為あまり人が寄り付かず、ずっと一人で研究に没頭している。
カースを買うと一年間働けば好きなところに行けばいい。と言ってくれた。
奴隷を開放するというのだ。
生活してみてわかた事だがラセツはずぼらであった。
研究に没頭しているときは食事すらまともにとらなかった。
ラセツの身の回りの事をしているうちに1年が過ぎた。
しかし、カースは出ていかなかった。
ずっとラセツの世話をしようと思ったのだ。
そこで人に化けさせてもらっては買い出しや狩りを行った。
その途中クルス皇国で風の団と言う盗賊団が捕まったと噂になった。
情報収集もカースの役目だった。
色々な情報を集めてはラセツに話して聞かせた。
確かにラセツは知識は凄いが、今時の情勢には疎かった。
そこでベロニカを見つけたのである。
魔法が使えるということで、毎日が楽しくて仕方がないのだ。
今日は杖を構えると空中に小さな光る玉を飛ばしていた。
赤と蒼と緑。この三色のなかには炎と水と風の力が渦巻いていた。
「よし、いい感じじゃ。そこの的に当ててみろ!」
ラセツじいさんに言われた通りに三色を融合させると一気に的に目掛けて打ちはなった。
バシュッ。
と音がして、的に命中した。
命中はしたが、薄い板なのに壊す程でも、穴を開ける威力もなかった。
「よしっ。」
それでも遥は嬉しかった。
やっと成功したのだ。
「まぁまぁじゃな?」
「今の当たったよな?これで少しは役に立つじゃん?」
「もっと威力があればなぁ~」
そうなのだ、ラセツの悩みは今は遥の魔法の訓練の事で一杯だった。
確かに人一倍多くのマナを有しているが、いざ攻撃しようとすると手から離れれば離れるほど威力が激減してしまうのだ。
手のなかにある時は小さな球体でも、それを直接押し付ければかなりの威力があった。
しかし、1mも離れればさっきのように擦り傷程度しか負わせることができないほど威力が落ちるのだ。
今のラセツはどうやって遥を強く鍛えるかが研究課題に擦り変わっていた。
この前、治癒を練習させたときはビックリするほど飲み込みが早かった。
確かに、直接患者に触れて、他を媒体にマナを流すのだから遥のもっとも得意な分野なのかもしれない。
でも、それだけじゃなかった。
錬成魔法をも得意としていた。
とにかく創造力が豊かなせいか覚えがよく、筋も良かった。
今まではカースが取ってきた宝石、いわゆる魔石をラセツが日用品に変えて売りさばいていたのだが、変換を今では遥に任せっきりにしている。
そこへいきなりドアが開け放たれると、ポーシャが駆けてきた。
「バルリア王国で勇者が降臨したんだって。」
「今度はどのような方だったのかの?」
「えーっとね。女性でめっちゃ強いの。みさきっていうらしいの?」
「なっ・・・みさ・き。」
「そうだよ。今ベロニカが戻ってきてカースに話してたんだー」
いきなり遥はポーシャに飛びかかると凄い形相で詰め寄った。
その行動に驚いて、ポーシャはラセツの後ろへと回り込んだ。
「一体どうしたというんだ?」
「いや、そんなはずはない。そんなはずは・・・」
ラセツは遥の豹変に疑問を感じたのか遥の肩を掴むと揺すって現実を直視させる。
「何か気になることがあるなら話してみたらどうじゃ?力になるぞ?」
一瞬、瞳が揺らいだが、意を決したのかぽつりぽつりと話し出した。
「もし、俺の知ってる人なら、冴島美咲。俺の妹かも知れないんだ。でも、なんでこんなことに・・・ 」
「まぁ、事実か確かめないといかんし、わたしが確かめてこよう。」
はっとしたように顔をあげるとラセツを見た。
「俺も、俺も連れていってくれ!」
そこで後ろからベロニカとカースが入ってきた。
「それは無理だな。遥、お前は自分の立場を分かってねーんだよ」
「そうよ。あんたは今じゃお訪ね者。エスタニア王国の秘宝を盗んだ盗賊とまで言われてるのよ。」
いきなりの言葉に一瞬めまいがした。
「はぁ、秘宝なんて盗んでない。」
「それはわかってるわ。でも、エスタニア王国ではなんとしてもあんたをとらえたいらしいのよ。」
「そんなっ・・・」
「だからおとなしくしてろよ。ラセツ。悪いが俺が来週バルリア王国に行商に行ってくるからそのついでに調べてくるぜ?」
遥は暫く落ち込んでいたが、それでもカースの服を掴むと。
「どうしても自分で確かめたいんだ。もし、妹なら助けたい。」
すると横からベロニカが遥の腕を捻りあげた。
「あわぁっ、いっ、痛い痛い、離せよっ!」
ベロニカは容赦しなかった。
壁に叩きつけると、遥は床に転がった。
「手加減してやれよ?」
カースの忠告も聞かず馬乗りになると遥を床に押さえつけた。
「離せって!何考えてんだよ!」
怒る遥を無視して身動きを封じると腹に一発叩き込んだ。
ゴフッ。
「・・・っ・・・。」
遥は息が出来ずその場でもがき続けた。
やっとの事で息がを整えると、その頃にはベロニカは遥の上から退くと仁王立ちしていた。
「いきなり何すんだよ!」
「まだ、わからないの?足手まとい何だよ。」
「・・・・・・」
「自分の身も守れない子供を連れていってかばいながら潜入しろって?バカ言ってんじゃないよ。それがどんなに危険な事か分かってるのかい?」
「それは・・・っ」
カースは遥の頭を撫でると、しゃがみこんだ。
「まぁ。俺を信じて見ろよ。ちゃんと情報は持ってきてやる。それまでにお前は強くならなきゃな?」
「わりぃー。気ぃ使わして・・・」
「いいってことよ。もう、家族だしな?」
そういって出ていってしまった。
カースには家族はいない。
当の昔に生き別れて以来会ってもいない。
生きているのかさえわからないのだ。
カースは元々奴隷として売られていた。
しかし、人族に買われてここへ来た。
ラセツが人に化けてカースを買ったのだ。
ラセツはそこそこ有名な魔法使いだった為、人族としても有名だった。
しかし、偏屈な為あまり人が寄り付かず、ずっと一人で研究に没頭している。
カースを買うと一年間働けば好きなところに行けばいい。と言ってくれた。
奴隷を開放するというのだ。
生活してみてわかた事だがラセツはずぼらであった。
研究に没頭しているときは食事すらまともにとらなかった。
ラセツの身の回りの事をしているうちに1年が過ぎた。
しかし、カースは出ていかなかった。
ずっとラセツの世話をしようと思ったのだ。
そこで人に化けさせてもらっては買い出しや狩りを行った。
その途中クルス皇国で風の団と言う盗賊団が捕まったと噂になった。
情報収集もカースの役目だった。
色々な情報を集めてはラセツに話して聞かせた。
確かにラセツは知識は凄いが、今時の情勢には疎かった。
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