吸血姫デスゲーム×バトルロワイヤル～突然吸血鬼にされた女生徒３２名が一人になるまで殺し合う……蠱毒な戦い～

デス・ゲーム６日目 バーサーカー乱闘・優笑の新能力

　
　真莉愛が自分の手下を捕食し、食べられた少女は灰になっていく……。

「てめぇらも見物人のつもりかぁ！？　仲間ごっこしてたってどうせ喰い殺すつもりなんだろおぅがｌ！？　クソがぁ！！」

　バーサーカーの叫びに負けないような真莉愛の咆哮。
　真莉愛がレベル４になった。
　すぐに角材を捨てて、剣を出現させる。

「化け物め！　喰ってやる！」

　真莉愛はバーサーカーに立ち向かっていくが、バーサーカーは優笑達の方に向かって走ってきたのだ。

「やば！」

　スズメは逃げようとしたが、優楽は逆にバーサーカーに向かって走る！

「逃げてるだけじゃ負ける！」

「優楽！」

　ぐわっと瞬間、速さを増したバーサーカーが優楽に牙を向けて突っ込んでくる。
　しかし優楽はスライディングの要領でバーサーカーの足元を狙う。

「ぎやぁあああっ！」

　バーサーカーがバランスを崩し、怒りで叫ぶ。
　しかし次に優楽に襲いかかったのはレベル４になった真莉愛だ！
　バーサーカーと共に倒れ込んだままの優楽は防御しかできない。
　そこに真莉愛の血の剣が振り下ろされる。
　
「くっ！」

「ハハハハ！　レベル５いっただきまーす！」

「優楽ぁ！」

　優楽が殺される！！　
　優楽が殺される！！

　頭がおかしくなりそうな恐怖が一瞬何度も脳内を走り回った。

「やめてぇ！！」

　優笑が駆け寄って叫ぶと同時に、優笑の手から何かが放たれた。

「ぐぅ！？」

　真莉愛の身体が不自然に曲がる。
　振り上げた右手が瞬時に胴体にくっついた。
　まるで円形の輪が頭からハマって両手が動かせないように……。
　
「優楽！」

　スズメがバーサーカーにナイフで斬りかかり、ショウが優楽を抱えるようにして庇い、真莉愛へ蹴りを入れた。
　バーサーカーは吠えて逃げ、真莉愛はもう透明な拘束は解かれたのかショウへ空振りの攻撃をした後、唾を吐いて走って逃げ去った。
　
「今のは……」

「優楽、みんな大丈夫！？」

　真莉愛の身体に起きた異変を４人とも目撃した。
　無茶をした優楽を優笑は抱きしめる。

「いまのは……優笑ちゃんがやったの？」

「え？」

「真莉愛を拘束したな……可能性は高いね」

「へぇ～盾だけじゃなく変化させられるんだね」

　ピューとスズメが口笛を吹く。
　
「わ、私が？　そんな事……確かに優楽が危ないと思ったけど……」

「守りの力だよ！　やっぱり優笑ちゃんは天使だ！」

　優楽が優笑に抱きつく。
　心臓がまだバクバクしているが何もできないと思っていた自分が少し力になれた事が嬉しかった。
　
　でも、どうしてこんな時でも私は攻撃ができないの……？

『ユエ……守る力を』

　え……？
　ふっと思い出した。記憶の断片。

「ソフィア……」

「優笑ちゃん？」

「天乃妹は大丈夫か？」
　
　優楽の脚はスライディングで擦りむけていた。
　かなり広範囲で血が滲んでいる。
　
「優楽、酷い傷！」
　
「こんなの平気だよ。ショウ先輩も優笑ちゃんをかばってくれてありがとうございます」

「別に」

「人間嫌いだって嘘情報だったんですか？」

　少し優楽が笑って言う。

「嘘じゃないさ」

　ショウは冷やかしにも慣れたように、涼しい顔で答えた。

「ふぅん？」

「バーサーカーよりはマシって事だ」

　冗談なのか、フッと微笑んだショウはやはり貴公子のようだった。

「さぁ！　あいつを追いかけないと……」

　優楽はやはりバーサーカーを追い詰める気だ。
　いつも元気いっぱいな優楽だったが、こんなにも好戦的な姿は初めて見る。

「さっきの力でバーサーカーも拘束できれば……」

　拘束できる力はみんなを守る力になる。
　優楽が闘ってくれる分、私はみんなを守る……そう思う。
　そして、あの子の叫び……。

「灰岡さん、注射器を一つ私に預けておいてください」

「天乃……無理はするなよ。こう言ったらなんだけど……彼女が人間に戻っても彼女の地獄は続くんだ」

「……そう、ですよね」

　それでも鏡を見て嘆いたように感じた。
　あの姿になりたかったわけでは、きっとない。
　図書館で優笑を襲って片割れが殺されて……恐ろしくて出てこられなかったに違いない。

　死んでいたのは自分かもしれない。
　だから同情できるような立場ではない……。

　それなのに、このデス・ゲームに翻弄される少女達を想うと、胸が張り裂けそうになる。
　……自分もまさに巻き込まれた被害者なのに……。
　いや、当時者だからこそ、いつそちら側にいくことになるのかわからないからか……。

　優笑はショウから受け取った注射器をブレザーのポケットに忍ばせた。