失礼致します、志賀です。

『二重感嘆符』の続編が読めた喜びは何にも代えがたいものがありました。書き手様に感謝しております。

そして今回の貴作に於かれては、人と人との思惑が複雑に絡み合った挙げ句、ふと「そうだったのか」と、もつれた糸がほどけるラストの瞬間で自分の心の糸までも緩み、ギリギリまでテンションを上げていたことに気付かせられて大きな溜息をつかされました。

この主人公のパーソナリティは様々な作品で取り上げられ、ある意味、便利に使われているように自分は感じていましたが、貴作『乱数のシード』ほど、この特異なパーソナリティを完璧に近い処まで描いた作品を他に読んだことが無く、書き手様の人間を描写する筆力には圧倒されました。

三部作とのことで、また愉しみを増やして頂けるようで嬉しいです。

良くも悪くも変えられないパーソナリティが異常な域まで達し、更にエスカレートしつつあるのを自覚しながら己の力では止められない状態を違った形であれ体現してしまう者として、主人公たちの終着点or出発点まで見届けさせて頂けたら……そう思います。

人間の感情のもつれや個々の蓋然性を描き、それを解きほぐした、紛れもないミステリーは素晴らしかったです。有難うございます。

失礼致します、志賀です。

サイコパスなる呼称が溢れていても本来の意味が上手く掴めていない著作物も多い中で、これほど精確に書かれたものを自分は他に知りません。その思考形態から生まれた犯罪もそうですが、本人にとってのイレギュラーな事象に対する反応（例えばナイフで刺された時や病院で笠木を追った時など）の、敢えてサイコパスならざる者の如き言動が酷く哀れに感じられ、この表現の秀逸さに唸らされました。

非常に面白く拝読しました。愉しい時間をありがとうございます。
三部作とのこと、高倉が何を失くし何を得るのかが今から気になります。