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第二章 長い闘いの果てに
一
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「それでは今日の天気予報です。本日は全国的に晴れの予報です。洗濯日和になる事でしょう」
小柳光は早朝の天気予報の番組が流れていたテレビにリモコンを向けると、無言でテレビを消した。
光はリモコンを部屋のテーブル上の所定の位置に置いた。
黒の分厚いカーテンが閉じられ電気が点いた殺風景なワンルームの部屋のフローリングの床には、先程まで光が筋トレの為に使っていた黒いダンベルが二つ置かれている。
部屋にはソファーは置いておらず、締め切ったカーテンの窓の前にベンチプレスセットが一台、壁沿いにシングルベッドが一つ置いてある。長年女性と寝ていないベッド……というか、光はこの部屋に母親と妹以外の女性を入れた事は一度もなかった。ベッドの反対側の壁には床に直接置いたテレビ、その横には雑多に本や雑誌が詰められた本棚があり、食事を取る為に最低限必要な小さなテーブルが部屋の隅に一つ置いてあり、その上にノートパソコンが一台乗せてある。その他に空になったビタミン剤の瓶が複数壁に沿って置いてあった。
光は先程まで上半身裸だったのでタンクトップを着てその上からジャージの上着を着ると、片足ずつ上げてその場で軽くランニングをし、足首をほぐすと両腕も軽くストレッチをした。全身がほぐれて心地よく、光は無表情のまま首を横に傾けた。バキッと首の関節がほぐれる音が聞こえた。
腕時計を嵌め、スマートフォンを持ち外出の準備が出来たら、光は玄関へ向かった。玄関でランニングシューズを履き下駄箱の棚の上に置いていた家の鍵を持ち、マンションの廊下に出た。
今は三月末で気温も高く、マラソン日和だった。
光は東京メトロ有楽町線のJR市ヶ谷駅から徒歩十五分程のマンションから出て住宅街を走り、今日は皇居へと向かった。
目の前に代官町通りが見え、そこから皇居の周囲を反時計回りに走った。
都会の中の貴重な緑に囲まれて本来ならすがすがしい気分になれるものだろうと光は思ったが、光はいつも通りの日課をこなすだけでロボットのように何も感情が無いまま淡々と走った。
平日朝の六時台に皇居周囲を走っている人間は少なかったが、光は走るごとに走行者を数名追い越し走り、一周三十分程で元居た場所に戻り、腕時計で時刻を確認しいつも通りの三十分のランニングを終えると満足し、ランニングを続けたまま自宅へと向かった。
皇居ランは周囲に補給所や飲食店、シャワールームがあるが、光はそれらを利用した事はなかった。
光が自宅まで歩道を走っていると、目の前からジャージ姿の男が走ってきて光にぶつかった。男は光を見ると一瞬動揺した表情をしたが、体制を立て直すとすぐに再度走り逃げて行った。光は男が女性物の鞄を片手に持っている事に気が付いた。その瞬間、後ろから女性の叫び声が聞こえた。
「ああ?」光は走り去った男から視線を外し女性を見た。先程の男が走ってきた方向だ。女性は光の背後を指差して叫んだ。
「ど、泥棒! ひったくり! 誰かあの男を捕まえて!」
光はその声を聞き、咄嗟に走り去った男の方に再度視線を戻した。男は角を曲がり別の路地へ行こうとしていた。
光は咄嗟に走り出すと、両腕をジョギング用に脇に寄せて走る速度を加速させた。光は男が曲がっていった路地に入ると、路地の奥へと走って行く男を発見した。男は数人歩いていた通行人に「退け退け」と叫びながら走って行く。光は通行人を避けるように走ると、男に追いついた。
男は一瞬振り返り光に捕まる前に光と視線が合った。
光が「返せよ、ひったくり」と言い男の腕を掴もうとすると、男は光と間合いを置き、履いていた右側のズボンの中から急いで折り畳みナイフを取り出すと、それを光に向けてきた。
「あーあ、窃盗罪の他に銃刀法違反だぞ」光は男がナイフを右手に持ち自分に向けて振りかざしてきたのを左右、後ろに身体を動かし避けながら冷静に言い、男と距離を取った。
「待て待て、待てよ」光はそう言いながら右手を前に出し男をなだめようとしたが、男は興奮しているのかナイフを離さなかった。光は仕方なく、男を避けながら自分の着ていたジャージの上着を脱ぐと片手に持った。
男はナイフを持っているが、ナイフを持つ手は震えていた。慣れていないのだろうと光は瞬時に判断した。
男は右手にナイフを持っている。その場合は右手側に自分を配置し、男の腕を狙えるようにしなければならない。
「今大人しく捕まった方が身のためだぜ」光は冷静に言うと、しっかりジャージの裾を右手で掴み、右腕にジャージを巻き付けた。光はその腕を盾にしながら男に立ち向かった。
男の動きが荒くなり大きく腕を左に振った瞬間、光は間合いに入り男の肘をジャージを巻き付けた右手で叩くと、そのまま男の手首を左手で掴み、勢いよく捩じった。
「うわぁあ」男は痛みで咄嗟にナイフを地面に落とした。光はそのまま手首ごと男の右腕を後ろに捻り上げると、男は左手に持っていた女性の鞄も地面に落とした。
「いっ、いたい。やめてくれ。悪かった! すみません!」男は擦れた声で叫んだ。
光が男を見ると、男は痛みを堪えた表情をしていた。光は少しやり過ぎたかとも思ったが、凶器を持った相手に挑むなら怯む事をしてはいけない。
「ったくよぉ。平日の朝っぱらからこんな事してんじゃねぇよ」光は小言で淡々と言うと念のため男の腕をさらに後ろに捻った。
男がうめき声をあげるのを無視しナイフと鞄を拾い上げると、ふと騒がしく感じた背後を見た。光は今の決闘で周囲のざわめきに気が付かなかった。
「ありがとうございます!」光は、後ろから駆け寄ってきた先程の女性に礼を言われた。
「いいえ。一応交番一緒について来て貰えます?」光は男の腕を後ろに捻り持ったまま女性に聞いた。
女性は頷いたので、光はひったくり犯を連れて女性と共に近くの交番へ向かった。途中何故男がひったくりをしたのかを聞いたが、男は狼狽えながら無言を貫いたので光は男が逃げないように腕を折れるかという程後ろに捻ったまま掴み、交番まで来た。
先程までこの男のせいで暴れていたのに、光は息も乱れていなければ、汗もかいていなかった。むしろジョギングでかいた汗が冷えて渇いたくらいだ。
「はぁ。お前のせいで毎朝の儀式に遅れんだよ」光は交番に居た警察官に男を引き渡しながら、男に対して呟いた。
交番の警察官に詳細を聞かれそうになったが、光は警察官の側によると、警察官にしか聞こえない程度の声で「ハムだ。急いでいる」と伝えた。そうすると警察官は「すみません、ご苦労様です!」と頭を下げてきた。
「儀式ぃ?」ひったくり犯は光に向かって聞いてきたので、光はため息を吐くと淡々と呟いた。
「この儀式、シャーマンが失敗したら謝ー間(しゃーまん)違いなく後悔するぜ。ってな」
光が呟くと目の前に居た男も被害者の女性も警察官も目が点になり光を見てきたので、光は両手を上げてため息を吐くと「この笑いが分からないなんて」とお手上げだというサインをし、無言で交番から立ち去った。
光は急いで自宅に戻ったが、自宅に戻る際に、少し近所の住宅街を遠回りし、背後を時に確認しながら自宅に向かった。仕方なかった。
点検と消毒……光の所属する部署では必ず行う、身元の安全確保の為だった。点検とは自分に尾行がついてないかの確認、消毒とは後ろに誰も居ない状態を差す。光はプライベートでもその基本を怠らなかった。公安たるもの自宅を特定される事は当たり前の事だが……この作業を光は毎日抜かりなく行っていた。
その為ランニングも毎朝違うルートを選んでいた。
光は帰宅をしたら汗ばむ身体をすぐにシャワーで流した。
自分の心も洗えたら良いのに、と光は思った。
光の住んでいるマンションの浴室は三点ユニットバスタイプなので浴槽の隣には便器があり、その間をシャワーカーテンで遮っている。
光は、シャワーを浴びながらシャワーヘッドの横の壁に取り付けてある鏡を両手で囲むように壁に手を付けた。シャワーのお湯が光の癖っ毛のある黒髪を流れ、髪が濡れてストレートになり身体に貼りつく。光はふと鏡に映った自分を見た。
身長百八十、警察に入ってから鍛え上げた上半身裸の男が映っていた。腕に血管が浮き出ており、顔には髭が少し生えている。不愛想な、表情筋の死んでいる顔をしている。目元は光の根暗な性格や低い声、身長とは裏腹に涙袋がある二重で、小さな頃はよく女の子と間違えられた。だがそれも年を取るごとに堀が深くなり、今では昔の女顔の面影はない。昔は顔が母親似だった。身長は父親譲りだ。
妹の愛も同じ二重で、愛は成長し容姿も整っているため周囲に男が集まってくる人間だった。光は愛に男が近寄るたびに、その男が愛に相応しい人間かをチェックしていた。そのせいなのか、愛は二十八歳で結婚適齢期なのに未だに結婚をしていない。自分のせいなのだろうか? 光は自分を責めると同時に、鏡に映った目元に視線を移し、自身の目元の涙袋に軽く触れた。弟の圭とは幼い頃、双子だと思われる程顔が似ていた。圭とは性格は似ていなかった……最も、光自身も幼い頃の自身の性格の名残は無いが。
光は圭の事を思い出し目をぎゅっと瞑ると、壁に手を付けた両手を握りしめた。
髭を剃りシャワーから出て、下半身にとりあえずスエットを履きまだ濡れている髪から水が滴り落ちないように首にタオルを巻くと、光はそのまま部屋の窓際へと向かった。上着を着るのはいつも面倒で、自宅では基本上半身裸で過ごしていた。
光は、テレビの横に置いてある移動式本棚のキャスターを横にずらした。その後ろの壁に大きなコルクボードが現れた。両親や愛が家にたまに来るので、気負わせないように光が皆に隠しているものだった。
光はコルクボードに貼った圭の幼い頃の写真、当時の圭の行方不明の新聞記事の切り抜き、圭の拉致された際に近くに落ちていたテディベアの何も物的証拠の得られなかったという警察からの謝罪の書類、拉致被害者の会の会合パンフレットの一部の気になった記事の切り抜き、中国語で書かれたメモの切れ端や、その後ろに大きく広げられた中国のマップを見た。
「圭、兄ちゃんがお前を絶対見つけ出してやるからな。待ってろよ」光は圭の写真に向かって呟いた。
その時、光は一瞬胸が痛くなった。光は罪悪感に苦しめられると、胸を押さえて床を向いた。
「圭、いつかお前を……俺が探し出してやる。俺が……俺のせいで……ちくしょう」光は自己嫌悪と悔しさから言葉を吐きだすと、再度圭の幼い頃の写真に目を向けた。
この圭の顔を見る行為は何度も、何度も、光が警察に入庁する前から行ってきた毎朝の日課のようなものになっていた。自戒のようなものでもあった。
圭が居なくなってから光は荒れた生活を送り高校も中退していたが、引きこもっていた妹の愛が急に前向きに勉強を始め、両親の拉致被害者の会への出席に付き合ううちに警察と会う事が増え、光は警察に入社しようと決めた。
光は高校卒業試験を受けその後大学に進学し、大学卒業後予定通り警察に入った。警察に入り公安へ所属が決まり忙しい日々を送る事になった後も、毎朝毎晩圭の顔を見ない日はなかった。
光が本棚の位置を元に戻そうとした時、居間のテーブルの上に置いていたスマートフォンのバイブレーションが振動した。
光は仕事の為に朝の八時半以降はバイブレーション機能をオフにしている。八時半まであと十分程あった。
光はロック画面からだと誰からか分からない画面を顔認証システムでロックを解いて、母親から入っている留守電の音声を確認した。
母親は過保護で、週に一度は心配をして電話をしてくる。光は母親の過保護さに自身が責められている気分になり胸が一瞬痛くなったが、母親の気持ちも分かっていた。今日帰宅をしたら母親に折り返し電話をしようと光は決めた。愛からもチャットが届いていたので、内容を確認した。
その時、光は目を見開いた。
チャットには写真が添付されていた。
愛のメッセージは無視して、光はつい写真に釘付けになった。いや、よく見ると3Dで作成したリアルなイラストのようだった。光とよく似た目元に左目の下の小さなほくろ、光とはここだけが似ていなかったストレートの黒髪に、性格の良さそうな爽やかな笑顔の男。光にはすぐに誰か分かった。
“光お兄ちゃん元気? ちゃんと食べてる? これ、知り合いに作って貰ったんだ。最新のAIを利用した圭お兄ちゃんの成長した姿だよ。来月で三十歳になるはずだよね”
愛からはこうメッセージが届いていた。
光は圭のイラストを見て立ち上がり、イラストをすぐに自身のスマートフォンに保存した。間違えてデータを消さないように、クラウドの自身しか入れないサーバーのフォルダにも保存をした。そのクラウドのサーバーのフォルダには圭の幼い頃の写真も沢山保存していた。
光はその場でガッツポーズをした。
これで、圭を見つけるヒントになるかもしれない。ずっと見つけられなかった、十年以上かけて見つける事の出来なかった圭を見つける手助けになるかもしれない。光は嬉しかった。
だが長年無表情で生きてきたせいか、表情が変わらない自分に光は気が付いた。自分は感情表現が分からなくなってしまったのだろうかと光は一瞬不安に思った。圭の手がかりを知れて心は沸き立っているのに、表情には一切現れない。
光は周囲を笑わそうとしよくジョークを言うように心がけているが、面白くないのか自分の表情のせいなのか、誰も笑ってくれない事を思い出した。
愛は大学卒業時から通信社で働いているが、このようなイラストを作成する人脈まで手に入れたのかと感心した。愛の仕事へのストイックさは光の尊敬するところだった。愛は時々、職場で手に入れた情報を密に光に流してくれていた。
“ありがとう”
光は愛に短くメッセージを送ると、すぐにスマートフォンの時刻に視線を移した。
今朝はひったくり犯のせいで朝の時間がギリギリになってしまった。昨夜は遅くまで圭の事をネットサーフィンで調べていたので、目も疲れ眠気が今になって襲ってきた。
光は冷蔵庫の中からブラックコーヒーの缶を取り出すと、一気に飲んだ。朝食を取っていない胃にブラックコーヒーはこたえたが、慣れていた。光はコーヒーの缶をキッチンのシンクの中に勢いよく置き、クローゼットの中からワイシャツ、スーツ等を取り出して出勤の準備をした。
光は再度スマートフォンに先程保存した、圭の成長した写真を見ると、「行ってきます」と小さな声で圭に向かって囁き、スマートフォンをスーツの胸ポケットに仕舞いリュックを背負い、自宅から出た。
光の勤める公安、正式名称警備課公安刑事警察のオフィスは、先程光の走った皇居のすぐ横にある警視庁本部庁舎の中にあった。
光はいつも通りロッカーに自分の荷物を入れ警察手帳をスーツの胸ポケットに入れると、自分のデスクへと向かった。席に座ろうとするや否や、上司の加藤良平から呼ばれた。
「小柳君、ちょっといいかい」加藤は人の良さそうな、穏やかな物腰で光に話し掛けてきた。
加藤は細身な身体に眼鏡をかけ髪を七三分けにしワックスで前髪を固めている、いかにもキャリアな容姿をしていた。加藤は三十七歳のまだ若い係長だ。
「なんでしょう」光は座るのをやめ立ち上がり、加藤を見た。
「第四会議室に来てくれないか。話があるんだ」加藤はそう言うと先に立ち会議室へ向かった。
第四会議室は完全個室だが狭い会議室で、四人は入れたら良い方だ。光は何か密な話があるのだと察した。
会議室に入るや否や、加藤は扉を閉めると光に向き合った。
「君は、今年の春から公安部に新設される予定の、サイバー攻撃特殊捜査隊を知っているか。私が指揮をとる予定の」加藤は眼鏡を掛け直し聞いてきた。
「勿論知っています。セキュリティに強い人間を集めたんですよね」光はそれだけを言った。この部署がどうしたのだろうか。
「君は来月からこの部署に異動になる事が、先程決まった。席も変わる。準備をしておいてくれ」加藤は光を見ながら言った。
「は? 俺が、俺がサイバー攻撃特殊捜査隊? ですか」何故俺が、と光は目が点になり、加藤に聞き返した。
「そうだ。今はITに強い若手が少なくてね。サイバー犯罪は増えているのに、サイバー犯罪に強い人材が少ないんだ。君はまだ若いし、英語も出来る。是非君にと、僕から推薦しておいたんだ」加藤は笑顔で言った。
「いや、俺はパソコンなんて疎いですよ。それに……」光は言い淀んだ。
今、光は刑事課の外国担当をする、北朝鮮担当の三課に所属していた。圭が北朝鮮に居るとは思えなかったが、念のため確認をする為にはまずはこの部署からだと思い、入社時からずっと狙っていた部署だった。その部署から移動する事が光は嫌だった。
「君の言いたい事は分かる」加藤は、光の肩を軽く叩き言った。
「君の弟さんが拉致被害者だっていう事も知ってる。だが今の時代はITだ。ITを駆使して弟さんを探すという手もある。今は耐え時だ。様々なスキルを身に着けて、弟さんを見つけろ。あと」加藤はここで声を落とした。
「君は蓝色珍珠(ラオジンチュウ)という企業を知っているかい?」
「ラオジンチュウ……? ……知りませんが」光は正直に加藤に伝えた。
「そうか。その企業について調べてみる事を勧める」加藤はそれだけ小声で言うと「電話の時間だ」と言い、先に会議室から出て行った。
光は会議室の中で立ったまま、頭の中で様々な憶測を繰り広げた。
ラオジンチュウ……学生時代から中国語を学んで来た光には、響きからすぐに中国名だと分かった。英訳でブルーパール。何故その企業を俺に調べろと言ってきた。何故公安全体ではなく俺個人に、こんな狭い会議室で伝えた?
光は自身のスマートフォンを開くと、メモ帳に“蓝色珍珠”と入力し、保存をした。保存をしなくても光は一度見た事や聞いた事は忘れない訓練を積んできたが、今回は保存をしないといけないという気がした。
小柳光は早朝の天気予報の番組が流れていたテレビにリモコンを向けると、無言でテレビを消した。
光はリモコンを部屋のテーブル上の所定の位置に置いた。
黒の分厚いカーテンが閉じられ電気が点いた殺風景なワンルームの部屋のフローリングの床には、先程まで光が筋トレの為に使っていた黒いダンベルが二つ置かれている。
部屋にはソファーは置いておらず、締め切ったカーテンの窓の前にベンチプレスセットが一台、壁沿いにシングルベッドが一つ置いてある。長年女性と寝ていないベッド……というか、光はこの部屋に母親と妹以外の女性を入れた事は一度もなかった。ベッドの反対側の壁には床に直接置いたテレビ、その横には雑多に本や雑誌が詰められた本棚があり、食事を取る為に最低限必要な小さなテーブルが部屋の隅に一つ置いてあり、その上にノートパソコンが一台乗せてある。その他に空になったビタミン剤の瓶が複数壁に沿って置いてあった。
光は先程まで上半身裸だったのでタンクトップを着てその上からジャージの上着を着ると、片足ずつ上げてその場で軽くランニングをし、足首をほぐすと両腕も軽くストレッチをした。全身がほぐれて心地よく、光は無表情のまま首を横に傾けた。バキッと首の関節がほぐれる音が聞こえた。
腕時計を嵌め、スマートフォンを持ち外出の準備が出来たら、光は玄関へ向かった。玄関でランニングシューズを履き下駄箱の棚の上に置いていた家の鍵を持ち、マンションの廊下に出た。
今は三月末で気温も高く、マラソン日和だった。
光は東京メトロ有楽町線のJR市ヶ谷駅から徒歩十五分程のマンションから出て住宅街を走り、今日は皇居へと向かった。
目の前に代官町通りが見え、そこから皇居の周囲を反時計回りに走った。
都会の中の貴重な緑に囲まれて本来ならすがすがしい気分になれるものだろうと光は思ったが、光はいつも通りの日課をこなすだけでロボットのように何も感情が無いまま淡々と走った。
平日朝の六時台に皇居周囲を走っている人間は少なかったが、光は走るごとに走行者を数名追い越し走り、一周三十分程で元居た場所に戻り、腕時計で時刻を確認しいつも通りの三十分のランニングを終えると満足し、ランニングを続けたまま自宅へと向かった。
皇居ランは周囲に補給所や飲食店、シャワールームがあるが、光はそれらを利用した事はなかった。
光が自宅まで歩道を走っていると、目の前からジャージ姿の男が走ってきて光にぶつかった。男は光を見ると一瞬動揺した表情をしたが、体制を立て直すとすぐに再度走り逃げて行った。光は男が女性物の鞄を片手に持っている事に気が付いた。その瞬間、後ろから女性の叫び声が聞こえた。
「ああ?」光は走り去った男から視線を外し女性を見た。先程の男が走ってきた方向だ。女性は光の背後を指差して叫んだ。
「ど、泥棒! ひったくり! 誰かあの男を捕まえて!」
光はその声を聞き、咄嗟に走り去った男の方に再度視線を戻した。男は角を曲がり別の路地へ行こうとしていた。
光は咄嗟に走り出すと、両腕をジョギング用に脇に寄せて走る速度を加速させた。光は男が曲がっていった路地に入ると、路地の奥へと走って行く男を発見した。男は数人歩いていた通行人に「退け退け」と叫びながら走って行く。光は通行人を避けるように走ると、男に追いついた。
男は一瞬振り返り光に捕まる前に光と視線が合った。
光が「返せよ、ひったくり」と言い男の腕を掴もうとすると、男は光と間合いを置き、履いていた右側のズボンの中から急いで折り畳みナイフを取り出すと、それを光に向けてきた。
「あーあ、窃盗罪の他に銃刀法違反だぞ」光は男がナイフを右手に持ち自分に向けて振りかざしてきたのを左右、後ろに身体を動かし避けながら冷静に言い、男と距離を取った。
「待て待て、待てよ」光はそう言いながら右手を前に出し男をなだめようとしたが、男は興奮しているのかナイフを離さなかった。光は仕方なく、男を避けながら自分の着ていたジャージの上着を脱ぐと片手に持った。
男はナイフを持っているが、ナイフを持つ手は震えていた。慣れていないのだろうと光は瞬時に判断した。
男は右手にナイフを持っている。その場合は右手側に自分を配置し、男の腕を狙えるようにしなければならない。
「今大人しく捕まった方が身のためだぜ」光は冷静に言うと、しっかりジャージの裾を右手で掴み、右腕にジャージを巻き付けた。光はその腕を盾にしながら男に立ち向かった。
男の動きが荒くなり大きく腕を左に振った瞬間、光は間合いに入り男の肘をジャージを巻き付けた右手で叩くと、そのまま男の手首を左手で掴み、勢いよく捩じった。
「うわぁあ」男は痛みで咄嗟にナイフを地面に落とした。光はそのまま手首ごと男の右腕を後ろに捻り上げると、男は左手に持っていた女性の鞄も地面に落とした。
「いっ、いたい。やめてくれ。悪かった! すみません!」男は擦れた声で叫んだ。
光が男を見ると、男は痛みを堪えた表情をしていた。光は少しやり過ぎたかとも思ったが、凶器を持った相手に挑むなら怯む事をしてはいけない。
「ったくよぉ。平日の朝っぱらからこんな事してんじゃねぇよ」光は小言で淡々と言うと念のため男の腕をさらに後ろに捻った。
男がうめき声をあげるのを無視しナイフと鞄を拾い上げると、ふと騒がしく感じた背後を見た。光は今の決闘で周囲のざわめきに気が付かなかった。
「ありがとうございます!」光は、後ろから駆け寄ってきた先程の女性に礼を言われた。
「いいえ。一応交番一緒について来て貰えます?」光は男の腕を後ろに捻り持ったまま女性に聞いた。
女性は頷いたので、光はひったくり犯を連れて女性と共に近くの交番へ向かった。途中何故男がひったくりをしたのかを聞いたが、男は狼狽えながら無言を貫いたので光は男が逃げないように腕を折れるかという程後ろに捻ったまま掴み、交番まで来た。
先程までこの男のせいで暴れていたのに、光は息も乱れていなければ、汗もかいていなかった。むしろジョギングでかいた汗が冷えて渇いたくらいだ。
「はぁ。お前のせいで毎朝の儀式に遅れんだよ」光は交番に居た警察官に男を引き渡しながら、男に対して呟いた。
交番の警察官に詳細を聞かれそうになったが、光は警察官の側によると、警察官にしか聞こえない程度の声で「ハムだ。急いでいる」と伝えた。そうすると警察官は「すみません、ご苦労様です!」と頭を下げてきた。
「儀式ぃ?」ひったくり犯は光に向かって聞いてきたので、光はため息を吐くと淡々と呟いた。
「この儀式、シャーマンが失敗したら謝ー間(しゃーまん)違いなく後悔するぜ。ってな」
光が呟くと目の前に居た男も被害者の女性も警察官も目が点になり光を見てきたので、光は両手を上げてため息を吐くと「この笑いが分からないなんて」とお手上げだというサインをし、無言で交番から立ち去った。
光は急いで自宅に戻ったが、自宅に戻る際に、少し近所の住宅街を遠回りし、背後を時に確認しながら自宅に向かった。仕方なかった。
点検と消毒……光の所属する部署では必ず行う、身元の安全確保の為だった。点検とは自分に尾行がついてないかの確認、消毒とは後ろに誰も居ない状態を差す。光はプライベートでもその基本を怠らなかった。公安たるもの自宅を特定される事は当たり前の事だが……この作業を光は毎日抜かりなく行っていた。
その為ランニングも毎朝違うルートを選んでいた。
光は帰宅をしたら汗ばむ身体をすぐにシャワーで流した。
自分の心も洗えたら良いのに、と光は思った。
光の住んでいるマンションの浴室は三点ユニットバスタイプなので浴槽の隣には便器があり、その間をシャワーカーテンで遮っている。
光は、シャワーを浴びながらシャワーヘッドの横の壁に取り付けてある鏡を両手で囲むように壁に手を付けた。シャワーのお湯が光の癖っ毛のある黒髪を流れ、髪が濡れてストレートになり身体に貼りつく。光はふと鏡に映った自分を見た。
身長百八十、警察に入ってから鍛え上げた上半身裸の男が映っていた。腕に血管が浮き出ており、顔には髭が少し生えている。不愛想な、表情筋の死んでいる顔をしている。目元は光の根暗な性格や低い声、身長とは裏腹に涙袋がある二重で、小さな頃はよく女の子と間違えられた。だがそれも年を取るごとに堀が深くなり、今では昔の女顔の面影はない。昔は顔が母親似だった。身長は父親譲りだ。
妹の愛も同じ二重で、愛は成長し容姿も整っているため周囲に男が集まってくる人間だった。光は愛に男が近寄るたびに、その男が愛に相応しい人間かをチェックしていた。そのせいなのか、愛は二十八歳で結婚適齢期なのに未だに結婚をしていない。自分のせいなのだろうか? 光は自分を責めると同時に、鏡に映った目元に視線を移し、自身の目元の涙袋に軽く触れた。弟の圭とは幼い頃、双子だと思われる程顔が似ていた。圭とは性格は似ていなかった……最も、光自身も幼い頃の自身の性格の名残は無いが。
光は圭の事を思い出し目をぎゅっと瞑ると、壁に手を付けた両手を握りしめた。
髭を剃りシャワーから出て、下半身にとりあえずスエットを履きまだ濡れている髪から水が滴り落ちないように首にタオルを巻くと、光はそのまま部屋の窓際へと向かった。上着を着るのはいつも面倒で、自宅では基本上半身裸で過ごしていた。
光は、テレビの横に置いてある移動式本棚のキャスターを横にずらした。その後ろの壁に大きなコルクボードが現れた。両親や愛が家にたまに来るので、気負わせないように光が皆に隠しているものだった。
光はコルクボードに貼った圭の幼い頃の写真、当時の圭の行方不明の新聞記事の切り抜き、圭の拉致された際に近くに落ちていたテディベアの何も物的証拠の得られなかったという警察からの謝罪の書類、拉致被害者の会の会合パンフレットの一部の気になった記事の切り抜き、中国語で書かれたメモの切れ端や、その後ろに大きく広げられた中国のマップを見た。
「圭、兄ちゃんがお前を絶対見つけ出してやるからな。待ってろよ」光は圭の写真に向かって呟いた。
その時、光は一瞬胸が痛くなった。光は罪悪感に苦しめられると、胸を押さえて床を向いた。
「圭、いつかお前を……俺が探し出してやる。俺が……俺のせいで……ちくしょう」光は自己嫌悪と悔しさから言葉を吐きだすと、再度圭の幼い頃の写真に目を向けた。
この圭の顔を見る行為は何度も、何度も、光が警察に入庁する前から行ってきた毎朝の日課のようなものになっていた。自戒のようなものでもあった。
圭が居なくなってから光は荒れた生活を送り高校も中退していたが、引きこもっていた妹の愛が急に前向きに勉強を始め、両親の拉致被害者の会への出席に付き合ううちに警察と会う事が増え、光は警察に入社しようと決めた。
光は高校卒業試験を受けその後大学に進学し、大学卒業後予定通り警察に入った。警察に入り公安へ所属が決まり忙しい日々を送る事になった後も、毎朝毎晩圭の顔を見ない日はなかった。
光が本棚の位置を元に戻そうとした時、居間のテーブルの上に置いていたスマートフォンのバイブレーションが振動した。
光は仕事の為に朝の八時半以降はバイブレーション機能をオフにしている。八時半まであと十分程あった。
光はロック画面からだと誰からか分からない画面を顔認証システムでロックを解いて、母親から入っている留守電の音声を確認した。
母親は過保護で、週に一度は心配をして電話をしてくる。光は母親の過保護さに自身が責められている気分になり胸が一瞬痛くなったが、母親の気持ちも分かっていた。今日帰宅をしたら母親に折り返し電話をしようと光は決めた。愛からもチャットが届いていたので、内容を確認した。
その時、光は目を見開いた。
チャットには写真が添付されていた。
愛のメッセージは無視して、光はつい写真に釘付けになった。いや、よく見ると3Dで作成したリアルなイラストのようだった。光とよく似た目元に左目の下の小さなほくろ、光とはここだけが似ていなかったストレートの黒髪に、性格の良さそうな爽やかな笑顔の男。光にはすぐに誰か分かった。
“光お兄ちゃん元気? ちゃんと食べてる? これ、知り合いに作って貰ったんだ。最新のAIを利用した圭お兄ちゃんの成長した姿だよ。来月で三十歳になるはずだよね”
愛からはこうメッセージが届いていた。
光は圭のイラストを見て立ち上がり、イラストをすぐに自身のスマートフォンに保存した。間違えてデータを消さないように、クラウドの自身しか入れないサーバーのフォルダにも保存をした。そのクラウドのサーバーのフォルダには圭の幼い頃の写真も沢山保存していた。
光はその場でガッツポーズをした。
これで、圭を見つけるヒントになるかもしれない。ずっと見つけられなかった、十年以上かけて見つける事の出来なかった圭を見つける手助けになるかもしれない。光は嬉しかった。
だが長年無表情で生きてきたせいか、表情が変わらない自分に光は気が付いた。自分は感情表現が分からなくなってしまったのだろうかと光は一瞬不安に思った。圭の手がかりを知れて心は沸き立っているのに、表情には一切現れない。
光は周囲を笑わそうとしよくジョークを言うように心がけているが、面白くないのか自分の表情のせいなのか、誰も笑ってくれない事を思い出した。
愛は大学卒業時から通信社で働いているが、このようなイラストを作成する人脈まで手に入れたのかと感心した。愛の仕事へのストイックさは光の尊敬するところだった。愛は時々、職場で手に入れた情報を密に光に流してくれていた。
“ありがとう”
光は愛に短くメッセージを送ると、すぐにスマートフォンの時刻に視線を移した。
今朝はひったくり犯のせいで朝の時間がギリギリになってしまった。昨夜は遅くまで圭の事をネットサーフィンで調べていたので、目も疲れ眠気が今になって襲ってきた。
光は冷蔵庫の中からブラックコーヒーの缶を取り出すと、一気に飲んだ。朝食を取っていない胃にブラックコーヒーはこたえたが、慣れていた。光はコーヒーの缶をキッチンのシンクの中に勢いよく置き、クローゼットの中からワイシャツ、スーツ等を取り出して出勤の準備をした。
光は再度スマートフォンに先程保存した、圭の成長した写真を見ると、「行ってきます」と小さな声で圭に向かって囁き、スマートフォンをスーツの胸ポケットに仕舞いリュックを背負い、自宅から出た。
光の勤める公安、正式名称警備課公安刑事警察のオフィスは、先程光の走った皇居のすぐ横にある警視庁本部庁舎の中にあった。
光はいつも通りロッカーに自分の荷物を入れ警察手帳をスーツの胸ポケットに入れると、自分のデスクへと向かった。席に座ろうとするや否や、上司の加藤良平から呼ばれた。
「小柳君、ちょっといいかい」加藤は人の良さそうな、穏やかな物腰で光に話し掛けてきた。
加藤は細身な身体に眼鏡をかけ髪を七三分けにしワックスで前髪を固めている、いかにもキャリアな容姿をしていた。加藤は三十七歳のまだ若い係長だ。
「なんでしょう」光は座るのをやめ立ち上がり、加藤を見た。
「第四会議室に来てくれないか。話があるんだ」加藤はそう言うと先に立ち会議室へ向かった。
第四会議室は完全個室だが狭い会議室で、四人は入れたら良い方だ。光は何か密な話があるのだと察した。
会議室に入るや否や、加藤は扉を閉めると光に向き合った。
「君は、今年の春から公安部に新設される予定の、サイバー攻撃特殊捜査隊を知っているか。私が指揮をとる予定の」加藤は眼鏡を掛け直し聞いてきた。
「勿論知っています。セキュリティに強い人間を集めたんですよね」光はそれだけを言った。この部署がどうしたのだろうか。
「君は来月からこの部署に異動になる事が、先程決まった。席も変わる。準備をしておいてくれ」加藤は光を見ながら言った。
「は? 俺が、俺がサイバー攻撃特殊捜査隊? ですか」何故俺が、と光は目が点になり、加藤に聞き返した。
「そうだ。今はITに強い若手が少なくてね。サイバー犯罪は増えているのに、サイバー犯罪に強い人材が少ないんだ。君はまだ若いし、英語も出来る。是非君にと、僕から推薦しておいたんだ」加藤は笑顔で言った。
「いや、俺はパソコンなんて疎いですよ。それに……」光は言い淀んだ。
今、光は刑事課の外国担当をする、北朝鮮担当の三課に所属していた。圭が北朝鮮に居るとは思えなかったが、念のため確認をする為にはまずはこの部署からだと思い、入社時からずっと狙っていた部署だった。その部署から移動する事が光は嫌だった。
「君の言いたい事は分かる」加藤は、光の肩を軽く叩き言った。
「君の弟さんが拉致被害者だっていう事も知ってる。だが今の時代はITだ。ITを駆使して弟さんを探すという手もある。今は耐え時だ。様々なスキルを身に着けて、弟さんを見つけろ。あと」加藤はここで声を落とした。
「君は蓝色珍珠(ラオジンチュウ)という企業を知っているかい?」
「ラオジンチュウ……? ……知りませんが」光は正直に加藤に伝えた。
「そうか。その企業について調べてみる事を勧める」加藤はそれだけ小声で言うと「電話の時間だ」と言い、先に会議室から出て行った。
光は会議室の中で立ったまま、頭の中で様々な憶測を繰り広げた。
ラオジンチュウ……学生時代から中国語を学んで来た光には、響きからすぐに中国名だと分かった。英訳でブルーパール。何故その企業を俺に調べろと言ってきた。何故公安全体ではなく俺個人に、こんな狭い会議室で伝えた?
光は自身のスマートフォンを開くと、メモ帳に“蓝色珍珠”と入力し、保存をした。保存をしなくても光は一度見た事や聞いた事は忘れない訓練を積んできたが、今回は保存をしないといけないという気がした。
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